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クラーケン

プチ

自分の脚の一つが切り離されたとき、白い悪魔は理解した。

最初の遭遇の警告。

本能が発した警告を無視した結果が、脚を失うだった。

ビチピチ

足がうねうねしている。

それに群がる子竜が三匹。

「……こら、つまみ食い駄目よ?」

子供の視線が竜に行く。

ここだ!

ザブン!

何もかも放り出して逃げる。

ザブン、ザブン!

はるか沖合いに出て、擬態。

ゆっくり周りを警戒したまま、静かな魚の動きを見上げる。


少し前、調子に乗って小舟を襲った。

ほんの一瞬、寒気が警告をしてくる。

ざばーと襲いかかれば、子竜が飛んでくる。

気がつけば、子供と目があった。

「イカ? お前美味しい?」

ゾクリ

理解した。

コレダ。コレと闘っては駄目だと。

脚がちぎれる。

ボクはオイシクナイデス!

オオキクテオオアジ!

逃げた。

追っては来ない。

ほうと、一息ついていると赤いのが船を襲っているのが見えた。

そして、大きな竜が降りてくるのも。

南無無

深い海の底で、その影たちが消えるのをそっと待つ。

赤いのも息を細めている。

二度と船は襲わないとーー誓う影。






水面に浮かぶ竜が二つ。

そして水中に沈んでいく竜が一つ。

「……あら?」

子供の手が伸びて拾い上げる。

「バランス悪かったかな?」

子供の手でそっと水面に下ろされる。

左右に少し揺れて、とぷんと水中に。

浮かんでる二匹が顔を見合わせる。

「うん?」

横から網のついた棒が水中を浚う。

棒をいれた男は、ほうと安堵の息を吐き網を持ち上げる。

「ビィ、深いので落ちないようにお願いします」

「あ、うん」

プルプル竜が水を振るって落としている。

助け出された竜が浮かんでいる二つを見る。

「ええと」

二匹は普通に浮かんでいる。

じっとそれを見て、残った黒鱗の竜はちろりと主を見上げる。

普段なら三匹で甘えて、無かったことにしてしまうのだ。

今回は他の二つは何故かさいしょからできてしまった。

ぽりぽりビィが頬を掻く。

「お前は少し早く生まれちゃったし」

ぎゅむと抱きしめられる。

「ほら、他の子より大きいから重いんだよ」

海の上には小さいのも大きな船も浮かんでいる。

と、ざばーと父竜が空か降りてきた。

大波を上げて着水。

波間に浮かんだ二つの子竜が器用に泳いでいる。

そしてーー。

「ほらね」

ブクブク。

沈んでいく親竜。

「…………うわ、レオン?」

ガシガシ岸壁をかろうじて登り水面に顔を出す。

必死に登りきり、プルプル体を震わせる。

そしてなんかあった?と主に甘える。

「遺伝か」

後ろの護衛の呟きは聞こえたようだ。

ビィが渋い顔をした。

竜はこれから海を渡る筈だ。

水の上で休むこともすると思われる。

「お前、本当に溺れていたね」

レオンを撫でながら、それで大丈夫なのか少し不安になる。

「ほら、こうやって浮かぶのよ?」

パシャパシャ

水面を走る子供。

護衛と言う名の見張りは声もなく見守るしかなかった。


弟があめんぼうになった!


水面を走る弟を見て、二人の兄は固まった。

もっとも、直ぐに無かったことにされたが。








ザブン、ザブン

波間から覗くと、自分の脚が焼かれていた。

白い悪魔は見つからないよう注意しながら近寄る。

焚き火で、焼かれている。

ドブン

何かが沈んでくる。

網がそれを浚う。

ナニをしているのか?

ドブン

やっぱり沈んでくる。

網が目測を外れて、沈んでくる。

…………。

ちょいちょい

脚でそれを持ち上げると、網が拾い上げる。

ドブン

ちょいちょい

ドブン

ちょいちょい

しばらくしてザブンと大きな竜が落ちてきた。

?!

ウリャー、ぽい

あ、子供と目があった。

「……あれは」

クラーケンと戯れる竜。

「ん? あ、泳ぐの教えて貰ってるの」

子供は焼けたイカ脚をかじっている。

「よく考えたら僕泳げないから人魚にでも教わろうかと思ったんだけど」

モグモグ

「なんかイカ君が溺れないように見ていてくれるって」

泳げないけど水面には立てるのかーー。

護衛と言う名の見張りは、何故に今日が当番だったのかと少し泣けた。


夕暮れまで続いたクラーケンによる竜のお手玉を見学する野次馬と、いち早く屋台を出してきた商人たちの賑わいは日がくれても続いたと言う。

もっとも次の日は朝から赤い悪魔にお手玉される竜がいた。














キック

キック

キックーー!

ますたーの胸のなかにダイブ!

どかーん

最後に飛び込んできたのはパパン。

ええとパパン?

タラリ

ますたーがつぶれてますが!

甘噛している場合では!?

ほら、周りの大人が焦ってーー。

「レーオーンー」

ン?

ペチ

ますたーのデコピン。

ひゅるるると、パパンが飛んでいき…………。

タラリ

ギギギとますたーを見れば、ニッコリ笑顔が!

「もう子供と一緒に飛び込んじゃ駄目でしょ」

パパン、目を回しているので聴こえてないよ?

タラリ。

「ビィ、行くぞ」

「あ、はーい」

子竜の初仕事は埋まったパパンを掘り起こす事だった。


「むぅ? イマドコ?」

地図をくるくるしながらビィが首を傾げる。

「ン、どら」

アルが地図を覗き込む。

「……ええと?」

「あの山、あんなだったっけ?」

「……ン?」

山の形が違うことに首を傾げる。

「まあ、地図が古いんだろう」

平和な午後だった。












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