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おまじないは竜の

それは、ローテーブルの上でモリモリ食べていた。

果物盛り合わせをモシャモシャ食べている。

「……」

出入口の布を片手で避けた状態で彼は固まった。

足元をヨチヨチ歩いて、別の個体がテーブルに飛び上がる。

当たり前のように、果物にかぶりついすている。

妻はその様子を静かに眺めていた。

ふうと、一息吐いて中に入り布がモゾモゾしていることに気が付く。

少し布を持ち上げると、コロンとそれが落ちてくる。

丸く落ちた姿で、くる?と可愛い声をあげて見上げ視線が合ったが次に興味を引く物を見つけたのか シュタと起き上がるとテーブルにかけよりよじ登ろうと頑張っている。

そっと手を伸ばせば、三匹の視線が集まる。

「上に上りたいのだろう?」

それはズボンに爪を引っ掻けて器用に上るとテーブルに飛び移った。

何事も無かったように果物にかじりつく。

森にかける罠の餌を果物にしようかと思案していると、妻がクスリと笑う。

「お手上げよ。まさか三匹も手配するとは」

「なんのことだ? 」

「この子なら養子にしても良いわ」

「…………養子? 誰のことだ?」

妻が変な表情をしながら視線を移す。

ソコには犬の尻尾が見えた。

「うん?」

犬は少し困ったように主を見上げる。

犬は枕にされていた。

子供がスピスピ気持ち良さそうに寝ている。

「何処の子だ?」

「だから貴方の隠し子でしょ?」

「そんなものは居ないと言っただろう」

「嘘ばかり」

目を擦りながら、子供が起き上がった。

ポフポフ犬の腹の形を整えて、再度枕にする。

「……ん?」

幼体がモシャモシャ果物にかぶりついているのに気がついた。

「おーまーえーたーちー」

ニョキニョキ

右手に一匹、左手に一匹。無造作に捕まえた。

きゅるきゅる甘えた声で鳴く。

「……めっでしょ」

モシャモシャ

残っているのがモシャモシャしています。

「………………あぅ」

子供が可愛い声をあげる。

何故かそれだけでどうでもよくなる。

もともと、果物はほとんど破棄される物だ。

「ごめんなさい」

三匹の竜が並んでごめんなさい。

妻が目を細めている。

そんな顔もするのか。

「別に何時も残してしまうから、構わないわ」

許可が降りて、子竜はモシャモシャ再開。

子供がため息をしている。

「本当にごめんなさい」

「ふふ、良いのよ。それより貴方の名前はなあに?」

「僕はビィ」

ぎゅむと抱き寄せられる。

「何処から入ってきた」

「あそこ」

入り口の布を指す。

「……」

子供は妻の膝の上で、撫でられている。

簡単にこのポロまでたどり着けないはずだ。

人の目をどうググり抜けて来たのか気になる。

「来なさい」

腕を引っ張ると、子供は茹でのなかに飛び込んできた。

ほんわかとした感覚。子供がこんなに暖かいとは思っても見なかった。

ナデナデ。

ナデナデ。

……ナデナデ。

止まらない。

ナデナデ。

ナデナデ。

なんだい? 竜が並んで見ている。

妻が凄い目で見ている。

いつもより険しい目をしている。

「あれ、だっこする?」

あれ? は、竜を差し出した。

「はい」

妻には二つ、一番小さいのを手渡される。

小さい。

とてもーー。


オンギャーー、オンギャー!


それはとても小さな生き物。

ふにゃふにゃで、ぐにゃぐにゃなーー。


カリ。

爪が引っ掛かる。

落とし掛けたそれは、器用によじ登り背中にくっつく。

プルプルしてポーズ。

「落っことしちゃ駄目よ? 赤子は爪でよじ登ったりしないし」

妻が至福の笑顔をしている。


オンギャー!

幻聴が聴こえる。

幻覚が見える。

小さな手が伸びてペチペチとーー。


「あ、お迎え」

のしのし地面が揺れる。

出入口の布が鼻息で持ち上がる。

子竜が、ヨチヨチ歩いていく。

「よしよし」

出入口の布を持ち上げた竜の鼻を子供がペチペチする。

成体の竜の鼻先を無造作すぎる。

「あ、おまえたち、ブレスは出来るようになったの?」

並んでた子竜がビクンと跳ねた。

ギギギと錆びた玩具のような感じに首だけ子供の方を見上げる。

きゅる

きゅっきゅ

るるきゅ

甘えた声で子供にすり寄る。

どうやら竜は心得ているらしい。

「んもぅ」

両肩に一匹ずつ、そして頭にも竜を乗っけた子供は懐から果物を取り出した。

「これあげます」

竜の抗議が入る。

「だってお母さんの果物食べちゃったでしょ?」

しゅんとなった竜の子も可愛い。

「じゃあね、お父さん」

うん?

子供は成体の竜の背に乗って飛んでいく。

「お父さん……やっぱり」

後ろで妻の呟きが! 誓う! あんな大きな子供の覚えはない!

あわわ

失言をうっかり暴露した事に気がついたのは、妻の後ろで震える犬を確認したあとだ。




「旦那様! 奥方様!」

飛び込んできた従者は固まったあと、一度上げた布を下ろした。

こほんと咳払いをしたあとで、声をかけてくる。

「旦那様、入ってもよろしいでしょうか」

「ああ」

奥方様はのんびり犬を撫でている。心なしか犬が震えているが。

旦那様は、何故かほっとしたようだ。

「あ、何もなければよろしいのですが」

喧嘩の声に気が付いて飛び込んできたのではなかったようだ。

「ん? 竜なら帰ったぞ」

「は? 竜?」

「ああ、でかいのが居ただろう」

「いえ、気がつきませんでしたが」

従者は言う。

気がついたとき、辺り一面濃霧で視界が悪かったこと。

そして主のポロがなくなっていたこと。

手分けして探し回り、見つけたポロに飛び込んだと。

濃霧など知らぬ。

飛び立つ竜は青空に消えた。

「とりあえず遠征は中止だ」

従者はどこかほっとしたようだ。

「竜の依頼も取り下げだ」

竜の幸運。卵の欠片はもういらない。






「……つまり何処かで依頼内容が変わったと」

「そうです。途中で馬鹿が闇にも依頼を足したらしいですし」

目の前でバリバリ雷が鳴っている。

「あれは被害を受けた竜の親でして、見た通り関係者以外は問題ありません」

痺れて這いずってピクピクしている人間の横で事情聴取している職員にはビリビリしていない。

「私は首実検か」

呟きは聞こえたようで、ニヤリと返される。

「うきゃー」

後ろで声が上がる。

「た、助けてくれ」

ビリビリ、バリバリ

容赦はないらしい。

「関係者ならああなります」

「……なるほど」

闇ギルドとの繋がりはあったようななかったような?

ヨチヨチ。何かが歩いている。

「あ、お父さん。何やってるの?」

子供が!

ナデナデ

うむ。ひきつっているな。ギャラリーが。

「ビィこそ」

ナデナデ

「僕はギルドで手続き」

「ほう」

「あ、おまえたち、雷使えるようになったの?」

呼ばれた三匹が、ギギギと首を回す。

何処かで見たように次の瞬間には甘えている。

どうやらあまり躾は進んでないらしい。

「レオンー帰るよー」

バリバリしていた竜がクルリと視線を移す。

のしのし歩いてくる成体の竜。

「明日は海で水魔法ね」

子竜は神妙に頷いている。

「ついでに泳ごうか」

ふんふん鼻唄を奏でる。

「じゃあね」

手を振り替えした横の職員は小さくため息を出した。

「海か」

「港町に警戒するよう通達しときます」

「一夜で海の底とか洒落にならんぞ」

はて?

後日情報によれば、海でクラーケンを倒しげそ祭りを開催したそうだ。

その少し後には、山を1つ消し飛ばし、登山難所街道が平坦な道になったとか。

あの子はナニをしているのか?

とりあえず、交易は楽になった。

山道が平坦になったからだ。








一年後、ふにゃふにゃの赤子を腕に抱き思う。

自分は何と引き換えにこれを手に入れたのかと。

タコもイカも貝も食べるのが普通になった。

海草も調理法が広まりつつある。

豊かになった。

それしかない。

「だ、旦那様、こんにちは」

庭師の新しい弟子が焦りながら挨拶をしてくる。

「ああ、元気かい?」

そう言えば、気のせいかメイドが増えている。

しかし目が怖い。

「は、はい」

何故か逃げられた。

「……君たち、何か勘違いをしているみたいだが?」

「ですが奥様が男の子と二人っきりにはしないようにと」

「……」

どうやらかなり失ったものがあるらしい。










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