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白蛇の憂鬱

あれは異常である。

始めて会った成体の竜のとる行動ではない。

きゅるきゅる甘えた声をあげている。

実際甘えている。

子供が竜の鼻面を当たり前のように撫でる。

うん。

竜の赤ちゃん返り?

ジーと見ていると、子供が気がついた。

「お前、きれいな鱗ね?」

手が伸びてくる。

キシャー? あれ?

コレトテキタイシテハイケナイ

竜の視線が集まっている。

これに噛みついたら竜が追いかけてくる。

「ほらおいで? 食べられちゃうよ?」

うん。噛みつかなくてもコレが居なくなれば食べられそうだ。

タラリ

しゅるっと手に巻き付く。

「お前、何処から逃げてきたの?」

スリスリ。

むふ。竜が甘えた声を出したのも納得である。

スリスリ。

ハ? ここは何処ですか?

「うふ、良い毛並みね」

モフモフ。

毛玉が腹を撫でられて居ます。

毛玉?

狼デスネ。え? 狼?

「ビィ、傷口舐めないように言っといてくれ」

「抜糸まで掻いたり舐めたり駄目よ?」

ナデナデ

…………。

うん。狼、怪我して保護されたのか。

抜糸?

「うん。三日後位に傷見てするからね」

また会える?と狼が聞いてくる。

「うーん、わかんない」

知っている。彼等はもうすぐ居なくなる集団だ。

名残惜しそうに狼が甘えている。

「人里に降りては駄目よ? 」

そうはいっても、竜の個体が増えたから保護区は一杯一杯だ。

人間の住みかも広がっている。

「良い子、罠に気を付けてね?」

それから、子供はあちこち回り同じように撫でる。

「ビィ、休憩に部屋に来ないか? お菓子があるのだが」

ん?

「お菓子?」

ビィがルンルン付いていく。

子供はお菓子に釣れた。





子供はお菓子に釣られてきた。

そしてお腹一杯食べると、すやすや寝てしまった。

満腹は眠くなるから!って、ちょっと待て!

まだ相談が出来ていない!

「ビィ、ちょっと起きて……」

キシャー!

手を伸ばすと、蛇が怒り狂っていた。

流石魔王様。安眠妨害対策までしっかりですか?

「ええと、蛇? ビィを起こしたいだけだけど」

キシャー!

「触るな? 変態? え? 変態?」

シャー!

「え? 変なことなどしないよ? あのね、少し相談があって」

くわ!

「えー、起きるのを待て? 駄目だよ。捜しに来ちゃうじゃないか」

キシャー!

「人がいたら相談しにくいじゃないか」

相談?

「そうそう、相談。竜と意思疏通がうまくいかない……あれ?」

じっと蛇を見てから、転がっている瓶を持ち上げる。

お菓子だけだと喉が乾くので、ジュースも飲んだ。

「やべ、これ酒だ。……道理で蛇と話せるはずだ」

酒?

「……ビィに飲ませたな。はぁ、首かな」

なんで?

「子供に酒は不味いから」

はーと、息を吐く。

「子供に酒は不味いだろ、ああ、この前もまだ与えちゃ駄目なの竜の雛に与えてーー」

……酔っ払いは、ぐだぐだと吐き出した。






ユサユサと地面が揺れていた。

廊下からバタバタ走る足音がトビコンデクル。

「地震! 逃げるぞ!」

ドアを予告なく開け放った同僚は固まる。

窓から竜の頭が覗いている。

「うぉ?」

子供がすやすや寝ている。

部屋の主は、蛇と酒盛りしていた。

「バ、ばか、お前、ビィを連れ込んだのか!」

ユサユサ…建物が揺れる。

「うわーん。センパイ、俺もう三年になるのにいまだに竜の言葉これっぽっちもわからなくて」

「んなもんわかるわけないだろ! とりあえず外デロ」

キシャー!

「おわ?」

ビィに触ろうとすると蛇が威嚇する。

「あ、ビィに触ると噛まれますよ」

「お前、そいつ捕まえとけ!」

騒いでいるとビィが目を覚ました。

「んん? あ、お迎え?」

寝ぼけたまま窓を開けて外の竜の首筋に捕まる。

「……」

「…………」

のしのし

ビィをぶら下げ竜が歩いていく。

「とりあえず、お前、罰掃除だな」

「ええ! なんで」

「なにビィを連れ込んでるんだ! コイツメ」

ぎゃーぎゃー、わーわー。

うん。人間は騒がしい。




人間は、職場にも馴染めてないという。

竜の言葉はさっぱり解らず、他の獣とも意思疏通はなく、後から来た人間がうまく馴染んでいくのを横目に誰にも相談できなかった。

らしい。

いや、みんな普通そうだけど?

ビィが変なんだよ?


それに、ちゃんと君を呼びに来てくれたじゃないか。

揺れる建物の中、一人で先に逃げずにね。


とりあえず僕の言葉にしっかり返事している君は変だよ?

「へ? 変? ん? 俺まだ酔っぱらってる?」


ちょっと噛んで良いですか?

「だ、駄目だよ」

うん。しっかり返事している。

「あ、あれ?」

ごそごそ非常食袋に頭を突っ込む。

「ええと、あれ?」

腹減った!

「あ、そっか。なんか貰ってくるよ!」

うん。返事している。


「所で君はビィの蛇じゃ?」

ん? 違うよ?

「あれ? 」

はてなマークを浮かべた人間。

とりあえず、ばかなのかもしれない。



人間はご飯を持ってくる。

モグモグ。んまい!

人間は愚痴を溢す。

まあ蛇の世界も大変ですからね。

適当に励ましとく。

今日は誉められたとかなんとか人間が喜んでいる。

ご飯がグレードアップしているので良いことにしよう。

モシャモシャ。


ある日帰りを待っていると人間が飛び込んできて、むんずと捕まえた。

ん? 今日はスキンシップが極端ですね。

先日までは指一本で恐る恐るつつくだったのに?

捕まえると走り出します。

ん?

息を切らしながら、とある施設に飛び込む。

……。威嚇するグリフォン。

うん。ビィがいたら大喜びしただろう。

怪我して保護されたのを理解していない?

グリフォンは、混乱と恐怖でーーダメじゃありゃ。

噛んできて良い?

「え? 噛んじゃーー」

大丈夫! ちょっと大人しくさせるだけ。

ガブ

「……お前の蛇、強いな」

「え?」

麻痺って動けないから! 今のうちに解体どうぞ?

「いやいや、解体などしないから!」

意識はあるが動けないグリフォンはうるうるしている。

「羽根見るからね? 少し触るよ」

人間。治療となると何でも触れるんだな?

帰りに、蛇を忘れていると僕を投げつけられてーー

焦った人間がワタワタしたのは面白い。

治療魔法使いが来た頃にはグリフォンは落ち着いていて、後遺症もなく治ったそう。

てか、グリフォン? 部屋に寝てますが?

「ただいまー、今日は唐揚げが……」

グリフォンとにらめっこ?

あ、固まっている。

ペチペチ


「治ったんなら住みかに帰ってください」

唐揚げが気に入ったから、ここに住むって。

「え? 唐揚げ? 駄目だよ! 人間のご飯は味が濃いからーー」

もっと欲しいって。

「いやいや、駄目だって」

僕もお腹すいた!

「え? 蛇の分も食べちゃったの?」

「おう、うるさいぞ、お前、独り言多すぎーー」

ノックもなくドアを開けたセンパイは グリフォンとにらめっこ?

何も見なかったように背を向けたセンパイにタックル。

「うわーん、センパイ助けてください!」

うん。人間、ちゃんと人間にも相談できるようになったんだな?

グリフォンは時々唐揚げを貰いにやって来るようになった。

交換条件は、記録をとること。

いやね? 人間。

仕事熱心なのは良いけど、記録のためにグリフォンの口に手を平気で突っ込むのって?

虫歯がないか調べている?

へー。

他の人間が苦笑いしているけどね。

所で人間、そろそろ僕に名前を!

「え? 蛇?」

カミツイテモイイデスカ?

俺にも名前を!

「え? グリフ……」

グリフォンの牙が光る。

うぐぐ。

虫歯になってしまえ!

ちょっぴり 憂鬱な日常の昼下り、人間の呼び名が変わるのはもう少し先のこと。












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