水辺の生き物
ビィは見渡す限りの水を見ていた。
湖である。池でも沼でもない。
綺麗な水面。
ビィはおもむろに上着を脱ぐ。
そしてズボンも脱ぐ。
「あ」
いち早く気が付いたアルが止めるより早くビィは水の中にいた。
「しばらく風呂に浸かってないからな」
「危険なのが水中にいるかもしれないですが」
「まあ確かにあれは危険かもな」
ちょいちょいと横を指差す。
その先にはマロン他女達がガン見している。
「ーーっ」
「てかこう言うときに拳骨を落とす隊長は何処に」
「兄さんが脱いだら一瞬で来るかと」
「……お前が脱げ」
お互いなすりあっていると、ざばーんと水飛沫が盛大に上がる。
「……ビィって泳げたか?」
「スライムは泳いで魚を捕っていたと思うが」
「……」
ビィが消えた水面は静かに波紋を広げる。
「前は泳げなかったと思うが」
「てか潜水出来るのか?」
スライムが横をすっとんでいく。
水面を器用に飛びはね、チャプンと水中に消える。
「……ちょっとヤバイか」
「ヤバイかもーー」
その時、再度水飛沫が上がり何かが上がってきた。
よく見ればたんこぶを着けたミズチが目を回している。
「スライム、さっきのって硬化?」
たんこぶの横にビィが寝こるんでいる。
「んあ、ヨシヨシ、あはは、くすぐったいよ?」
スライムが甘えている。
「あれ? お前、分身覚えたの?」
ビィの両の手に、スライムが。
にぎにぎ
「ん? なんか違う」
首をかしげた時、隊長の怒り声が響いた。
「なんかいました」
叱られて涙声のビィが、スライムと似た生き物を隊長に捧げる。
生態系調査も仕事の一つである。
「ん?」
パッと見ればスライムに見える。
「ビィ、それは」
「スライムみたいだけど、違います」
「そりゃ違うわ」
ビィが再度?を浮かべる。
「こいつはウェンディーネだ」
ビィは素早かった。
桶をひっつかむと湖に水を汲みにいき、そっと慎重にスライムもどきをいれる。
「ええと、体長8センチ。最初のスライムと同じぐらいだ」
スライムは暴飲暴食のためすこし大きくなっている。
「食べるものは……うん、水草? 藻?」
ふるふる
「貝? 魚?」
ふるふる
「うーん、分かった! さっきのミズチ!」
ビクン
どうやら、さっきのミズチは食べられかけていたらしい。
「そりゃ助けを求めるな」
「ドンだけ食うんだよ」
ビィが考え込んでいる。
「ねぇ、ミズチって美味しいの?」
逃げろ! ビィに美味しく食べられる!
「ミズチは狩禁止だから」
「エー」
本当に火炙り!を免れた。
「ねぇウェンディーネて泉にいるんじゃ? 湖にもいるものなの?」
ビィが可愛く聞いてきた。
「雨季だからな」
どうやら、数個の泉が合体した姿らしい。
「水質ランク5と」
ビィは観察が終わるとウェンディーネを湖に放した。
が、次の朝に枕元に真珠が転がっていた。
「……真珠って湖にでも採れるの?」
「さあ?」
ちょんと小さいスライムが首をかしげる。
「……ねぇウェンディーネは陸上でも大丈夫なの?」
「……スライムも意外と平気だったからビィの側にいる限り大丈夫のかもな」
「…………」
すくりと立ち上がり、小さいスライムをひっつかむ。
「うりゃ!」
放物線を描いて飛んでいくスライムもどき。
「お家へお帰り」
背後でどきどきしている集団が。
「ん、そう言えばディジーもう怪我治ったんならお帰り?」
ディジーがダラダラ汗をかいている。
「リリン、君は?」
竜が飛び上がり、レーガルの背に隠れる。
「……ところでスライムは?」
湖面でアピールしているスライムもどきは無視された。
「……ウェンディーネって可愛い女の子じゃないんですね」
スライムと混ざっていたら見分けがつかない。
「そりゃ千年も生きたウェンディーネだ」
「へえ、千年……まあミズチの御飯有るし大丈夫かな」
ミズチは御飯決定である。
「千年経ったら見に来るよ」
隊長がむせた。
「お前、千年も生きるのか?」
「ん? あれ?」
両手を広げて指折り数える。
「ビィ、それで数えれるのか?」
「日が暮れるのじゃ?」
数えながら居眠りをしだす。
「で肝心のスライムは」
「よし、スライムの分は食べて良いぞ。リリン」
スライムが吹っ飛んできた。
ご飯は最強である。
☆ ☆ ☆
スライムです。
ますたーが寝付くと、ウェンディーネがやって来ます。
あんな姿で、何と転移をするのですよ!
いや、普通は泉から泉にが移動できる範囲らしいのですが 彼女は水樽に移動してきます。
彼女には注意しなければなりません。
ミズチに私を食べさせたのですから!
まあミズチの胃に穴を開けてきたので、次は絶対食べないと思いますけどね。
ウェンディーネは私と入れ替わって、ますたーに愛されようと……。
因みに、ウェンディーネが出入りする樽は美味しい水になっていてますたーはお気に入りです。
はあ、なんかあれです。私とおもいっきりキャラかぶりです。
ですが私より小さいので、喧嘩がしにくいです。
小さい子には優しく!
はあ、ダイエットでもしましょうか?
なにせ、彼女はあんな成りでも私よりずっと年上ですし……。
もしゃもしゃ
ハッ! 無意識に食べてしまいました。
「スライム、あーん」
もしゃもしゃ
ますたーの手料理は、私のもの!
「バリバリ卵の殻食べさせてるな」
「貝の代わりらしいですよ? 何でも真珠が出来るかもとか」
タラリ
真珠? ウェンディーネの?
「朝に真珠が転がっているらしく、出すところ見たいとか」
期待の眼差しのますたーが!
「多分覚えてきたらしいんだよ。ビィはあんなに似ているから覚えれたんだとかスライムすごいって」
私の知らないところで、何か話が偉いことになっています。
タラリ
か、観察しなければ!
しかしその夜、いくら待ってもウェンディーネは来なかった。
転移できる距離以上はなれてしまったのでしょうか?
朝、真珠が無いことに気が付いたますたーが、にっこりと。
「スライム、真珠いつでそう?」
ダラダラ
そんなもの出ません!
「ビィ、お前もそんなに見られちゃ出ないだろ」
「え? じゃあこっそり?」
物陰からガン見されています。
で、出ませんよ!
これはウェンディーネに教えてもらわなければ!
「あ、こら」
背後でますたーが呼んでいますが、逃げなければなりません!
さて、ウェンディーネは何処でしょう?
☆ ☆ ☆




