もふもふパワー
振り返ったビィの膝にはトカゲが居た。
やっともふもふを追い出したと思えば、ほんの数秒後に別なのが陣取っている。
隊長はため息も出ない。
なぜなら、ビィの横に蛇が待機している。
「ビィ、馬に乗るか? 馬車ばかりで退屈だろう」
「え? 良いの?」
乗馬スキルも馭者スキルも見習いにはなったビィは、それでも一人では禁じられている。
馬に乗る時は、夜営地で周りを固められ ぐるぐるするぐらいで自由には乗れていない。
馭者も横に誰か居てやっとである。
馬車を引いている馬がそわそわしだす。
「おわ、なんだ」
横を並走していた馬が、ブルブル嘶く。
「……」
「馬はみんなお仕事しているよ」
騎鳥もお仕事している。
「そのトカゲ何処から」
「上から降って来たけど?」
天井には、蜘蛛がへばりついていた。
蜘蛛が獲物をうっかり落としたのか?
と言うより、いつの間に!
目が合う。
ビィは、蛇に手を伸ばす。
「ビィ、あれはなんて言っている」
「ん、隊長簀巻きにしたら怒る? だって」
ワタワタ蜘蛛が焦る。
「ほー」
短剣を手にすると、蜘蛛はカサカサ逃げていった。
「ビィ、来なさい」
何か色々増えている。
それらを追い出し、膝にビィを座らせる。
「ジジィ」
様子を見に来たアルに、凄まれた。
なにかね?
ビィが虫壺に成ってても良かったと?
スライムが背後で、虫を捕食していた。
み、見なかった! 何も見ていません!
ちろり
もしゃもしゃと、竜も食べている。
気がついたレーガルが、目を点にしている。
うまうま言っているのは気のせいです!
虫 上手い!
はい。今まで大きな体だったので、虫など食べなかったらしい。
「スライム! 今日もコラーゲン……ギャー」
マロンから逃げる事をスライムは覚えた!
スライムは鳥籠に隔離された。
レーガルが黄昏ている。
「あいつらは雑食だし」
アルが慰めている。
「それにだな、あれをやめさせた方が良いと思うのだが」
ビィがあーんと、虫を竜に与えている。
「!」
竜は、コッコの肉につられレーガルの膝に丸くなる。
「やれやれ」
ふとみると、ディジーにあーんをしている。
「……」
ディジーは食虫植物に進化していた。
☆ ☆ ☆
ビィは木の枝を両手に持って一応構える。
対するはアル。
スライムは鳥籠の隙間から見学です。
誰か出してください!
お腹も減ったので、飛んでくる虫を捕食してますが量が足りません。
アルはビィの踏み込みをひょいひょいかわしています。
ほむほむ。ああ回避するのですね。
ピカリンコ
ディジーも見ている。
竜も……。皆がぐるりと円を画く。
「……なんか目立って」
「てりゃ」
打ち込み、打ち込み
ひょいひょいひょい
「むぅ」
ビィが、むきになってくる。
「てぃ」
足払いでビィはあっさり転がった。
「あ、ゃば」
ウルウルとビィが涙目にーー。
どかっぼすっパカッむにょん
回りの獣達が一斉にアタック。
「おわ」
回避 回避 回避
アルは見切りを閃いた!
「……にいちゃ」
「だー、ストップ!」
ぴたりと止まる獣達。ビィを抱き寄せる。
「受け身覚えたか?」
「なんかいろいろきた」
「そうか」
「……剣術来ない」
「ぅ」
アルはしばらくビィと愉快な仲間たちと乱取りをして動物使いやら司令官やらのスキルを覚えた。
「スライム、皆の安全のためビィに剣術を閃かせろ」
鳥籠に差し入れをちらつかせる。
にょん?
アルはスライムに愚痴を溢しつつ、ちびちびハーブティーを飲む。
スライムに与えると毒消しを生成している。
「なるほど毒消草か」
マロンに納品すると、やっと鳥籠から出してもらえたスライムは虫除け草も捧げ何とかマロンの機嫌を直すことに成功していた。
もっとも、スライムに虫取をさせとけばテントに虫の侵入が少ない事に気が付いた乙女によって理解がされることになった。
☆ ☆ ☆
「本当に欲しいものは手に入らぬ呪いか」
レーガルが寝ているビィを撫でながら呟く。
結局、槍やら斧やらのスキルは覚えても、ビィの欲しがる剣術は来ない。
「不憫だな」
「まあ、別に一番を作ってそれとなく覚えるのが普通なんだが」
アルは兄を見る。
竜がくっついて寝ている。
そのまま契約をしてお持ち帰り出来ないか少し思う。
「そうだな。とりあえず竜の卵見せて目を輝かしている時に覚えれるかもしれん」
「生まれるひび割れとか見た時とかか? 有りかもな」
「……スライムは」
その頃、スライムはまだ手元に置いているだろうか?
地図を読む。
「湿地が成育地とか言われているが水場ならありだから」
沼地、川沿い、そして湧き水のある地域は広大だ。
「とりあえず明日は水場だな」
まだスライムが見付からない事を願う。
スライムが側に居なくてビィがスキルを覚えれるか解らない。
「素振りはさせとこう」
普通、素振り毎日すれば半年ぐらいで覚えるものだ。
もっとも上達するかは本人の鍛練次第だが。
「ビィの型は親父と同じたから覚えて当たり前だし」
「よく見ていたからな」
訓練をビィがじっと見ていて、技の形を真似て打ち合う。
それはほほえましい子供の遊びだった。
その形が、毎回同じで 手本が師匠だと判るまではーー。
あんな子供が正確にやっている。
それに気が付いた大人は、自分の限界を現実に見てしまう。
もっとも、上二人の兄弟も無双して見せたのでビィへの影響は特に出なかった。
「ところでこれ調剤しても良いだろうか?」
木の実をさして言う。
「ん?」
「何故だか無性に調剤したい」
アルはいそいそとすり鉢やら用意してゴリゴリしだす。
「……スパイス作りか」
マロンが喜びそうだとレーガルは目を細めた。
実際マロンに渡り有効活用される事になる。




