暴れる竜
ソールの相棒は、たまたま拾ったチビ竜だった。
怪我をした竜を見付ける確率は皆無だろう。
基本的竜は保護区にいるはずだからだ。
大人になった竜が、外に出てきた事はあっても子供が居るのはおかしい。
とりあえず水を飲まし、怪我の治療をして町に帰るとギルドに相談した。
竜の子が何を食べるのかも知らなかった。
だから言われるままギルドに預け家に帰る。
朝起きたら、竜が横で寝ていた。
いつの間に来たのか気がつかなかった。
朝御飯を半分与え、ギルドに行くと 建物が半壊していた。
どうやら竜は子供でも破壊力凄まじいらしい。
竜はどうやっても次の日の朝には横にいた。
保護区まで同行して放した時も、戻ってきた。
ギルドは仕方なく、従獣契約をさせる。
竜は利口だった。
竜に助けられ冒険家生活は楽に起動に乗る。
そう竜が繁殖期に入るまで。
親になる。
なってほしい。
だから保護区に連れていった。
「ここなら仲間がいるだろう? お嫁さん見付けて生きるんだ」
それでも竜はしばらく側にいた。
そのうち、保護区に住んでいた竜が姿を見せる。
ソールを気にしながらも竜の本能が唄う。
それは新しい家族への唄。
番になった竜を残して町に帰った。
竜のいない冒険は、技術の未熟を自覚した。
それでも地道に竜のいないに慣れた。
寂しさも慣れた頃、竜が町を襲った。
討伐に集められた先で唖然と立ち尽くす。
何故こんなところで暴れている?
竜はボロボロだった。それでも暴れている。
自分が呼ばれた理由に思い当たる。
あれを押さえておく為だ。
まだ繋がりがある。だからほんの一瞬でも注意を引けば誰かが止めをさすだろう。
出来るか!
剣を地面に叩きつける。
視界の端で、子供が竜に近付いて行くのが見えた。
「!」
竜が地面にめり込んだ。
その鼻先を子供がペチペチする。
「ドラドラのお父さん? 誰?」
竜が助けを求める。
緊張マックスで竜は駆けてくる。
小さな人間の影に隠れて、きゅるきゅる鳴く。
「こんにちは、ドラドラのお父さん」
子供が挨拶をしてくる。
「ドラドラが、お父さんは助けてくれるって。卵盗まれたって」
「助けて? え、卵盗まれた?」
子供に怯えて竜が後ろで鳴く。
「大丈夫。ドラドラ。皆で探すよ」
子供が目を細めた。
影が横切る。空に何匹もの竜が飛来していた。
「ドラドラは、卵泥棒は許さない。もう見つけた」
急落下している竜。もくもくと土煙が上がる。
それは確かに現実だった。
竜が人の子供に畏れる。その上、俺の背中に隠れる?
何処かの屋敷が数匹の竜に蹂躙されている。
テケテケと子供が走っていく。
「てか、誰? じゃない! ええと子供がウロウロするんじゃない!」
竜の合間を走っていく。
解体作業中の竜の横を誰も止めに行けない。
直ぐに子供は戻ってきた。
手に大きな卵を抱えてーー転けた。
「あた、あ」
コロコロ転がる卵。
「ヨシヨシ?」
誰もが固まる。
卵が光っている。
「ヤバ、はい。おじいちゃん」
「は」
撫で撫でして卵を渡してくる。
テケテケ
子供がすばやい。
ピシッ
「!」
卵に亀裂が走る。
割れた!
「うお」
わたわたしていると、卵から脚が生える。
「!」
脚は引っ込み、欠けた所から頭が出てくる。
生まれた!
ますたー!
待て。産声がそれで良いのか?
「じゃない。パパどうするんだ?」
きゅるきゅる(甘え声)
新米のパパ竜は、ヘッポコだった。
俺の任務は、竜と生まれた雛を保護区に送り届ける事になり 道中の育児日記は高く買い取られた。
あの子供。
誰も子供のことを言わない。
雛は、ますたーと誰かを呼んでいる。
はあ、生まれたばかりから ますたーと騒ぐ。
育児は大変だ。
新米パパ。目を離すと雛が何処かへ行ってしまう。
そのお転婆の管理をするのも親の……ん?
「……お前も親から勝手に離れて、迷子になったのか?」
きゅるきゅる
てへ
「……そうか。血筋か。苦労するな」
ボロボロになって拾われて、探していたますたーをあきらめて 拾った相手を主と認めた。
それで良かったのか?
ますたー
ますたー
「……お前、そこはパパだろ。ほらパパに甘える」
すりすり
パパ
パパ
「そうそう。ん?」
おじいちゃん
ぶっ
おじいちゃん認定。
保護区で嫁と対面する。
嫁は他に二匹の雛を世話していた。
「大変だな」
巣のなかで順位闘争が始まる。
パパは狩りを頑張り巣に運び込んでいる。
ん?
三匹の争いが終わった頃、視線が自分に向いているのに気がついた。
おじいちゃん
おじいちゃん
おじいちゃん
ははは
どうやらおじいちゃん認定は他の雛にも浸透したらしい。
☆ ☆ ☆
雛が整列している。
他の巣の雛も整列している。
「?」
ますたー
ますたー
ますたー
うるさい。
パパ
ママ
おじいちゃん
ごはん
お腹減った
それぐらいの単語しか話さない雛が、ますたーコールを合唱している。
「きゅるきゅる」
だからヘッポコ、何故背に隠れる?
「領主様の視察だぞ」
うぇ
俺を隠せ!
領主様の視察は毎年あるわけではないが、警備の関係で本当に直前に知らされる。
「あ、ドラドラ」
げふ
「あ、おじいちゃん」
ぎやー!
その日、領主一家ぐらいの情報は勉強しておこうとソールは思った。
若かりし日の記憶である。
「ドラドラと言うのは?」
「竜種全体の総称だ。所で、おじいちゃんとは?」
人間からもおじいちゃんと呼ばれだした出来事である。
それよりも。
テケテケ
領主様の息子!
テケテケーー
雛が大人しいのは良いが!
きゅるきゅる
ああ、胃が重い。
「おじいちゃん、ウサギあげても良い?」
「餌付けはダメです」
「えー、おじいちゃんがダメだって」
オーボー
オーボー
オーボー
雛が言葉を覚えるのは良い。
うるさいが。
「基本親がもって来たのしか……」
「連れて帰るのは一匹だけだぞ」
「えー」
えーじゃない。連れて帰る?
「ええとじゃ、おじいちゃんで」
「こら」
「あはは、じゃ、どれにしようかな」
まて、そんな決め方で良いのか!
「むう」
思えば、遺伝なのだろう。
妙な子供は、あちこち視察し一匹選んで帰った。
雷属性のその雛は子供にビリビリ電気を出して威嚇していたはずだが、帰る時には子供の背中に器用にくっついていた。




