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旅の道連れ

「良く解除出来たわね」

結界をすり抜けて中へ入ったアルにマロンは声をかける。

「……これができないとビィの部屋は入れないからな」

「普段ヘッポコなのにそう言うのは抜かりないのね」

「……ビィは」

「寝たわよ」

毛皮にくるまったビィがスピスピ眠っている。

「催眠術か?」

「一服盛ったわよ。貴方も飲んでみる?」

差し出されたカップを無造作に受け取りアルは飲んだ。

「軽い眠剤か、こんなので寝てしまうのか」

「寝る前に飲むお茶は朝までには症状がなくなる微量なものばかりよ。でも耐性は駄目だった」

「……最近はスライムが飲んでなかったか?」

「そうね。おかげでスライムの耐性は完璧よ」

「それで弱点の火の対策なのか」

火炙りでうまく耐性が獲得出来るのか謎ではあるが。

「それでも帰しに行くつもりなのよ」

ビィの目的地はスライムの生息地。

「ビィは契約魔法が使えない。幾らスライムが望んでも」

「ディジーがなついてもーーか」

ビィはあっさりと祭壇にディジーを戻した。騙されてうとうとしたディジーはそのまま自分の姿と重なる。

生息地で他のスライムを発見したら、ビィのスライムは放されるだろう。

その後馴染めたかどうかぐらいは確認するかもしれないが、あっさりと手放すだろう。

学園に通ううちは側で兄と扱われても卒業後はどうなるか。

考え出すとそう遠くない先の悩みは尽きぬ。

「俺はいつまで側で居られる」

「直ぐに代わりが見つかるわ。遠くでも幸せなら割り切らなきゃ」

アルは十に成り、学園に住むようになり、弟から離れたあの頃はビィの事など考えている場合でなかった。

自分が代わりを見つけると言うことは、ビィにも代わりが側にいると言うことだ。

「でも家族でしょ? 繋がりが途切れたりしないわよ。私と違って」

手が伸びる。当たり前のように抱き寄せる腕。

柔らかなそれでいて細い体。

ビィとは違う胸の弾力。

「お前、誰でも抱き寄せていたりしないだろうな?」

「あら? そんなこと気になるの?」

「……いや」

そう言えば、何かと誘われそれをことごとく断り続けたのはアルだ。

その内、婚約して誘われなくなった。

ビィが学園に通うようになり、マロンはビィの世話を始める。

はじめての実習での先輩班にマロンが居たこと。その後の出会いとして有能な者たちと出会いの場として授業が組み込まれた。

アルの時も同じように引き合わされた。

「ふふ、アル?」

自分を抱き返してきた腕に気が付き、マロンは見上げーー。

「よもや、ビィが寝ている横で見つかるとヤバイ事を始めるつもりじゃないですよね?」

声に二人は飛び上がった。




レーガルの前で、正座をした情けない二人。

「兄さん、誤解です」

定番の始まり。

「気にするな、マロンは若い娘で見回して彼女位しか相手が居ないからな」

「彼女に失礼ですよ」

「……あら、平気よ。実際私は選び放題だし」

コロコロと笑う。

「実際一服盛ったし」

「うぇ?」

アルが変な声を上げる。

「あれってそんなのが入っていたのか?」

「そう、貴方耐性はないのね」

にこにこ笑うマロン。

「レーガル様は耐性があるからもう少し強くないと効かないわね。飲んでみます?」

にこにこ。

「昔、散々盛られたあれか」

「そうあれ」

「何の話」

微妙な三人。

「……何の」

「昔、マロンの薬で耐性を付けていた。お前と同じた」

「同じじゃないわよ。媚薬はまだだもの」

「……何故まだ?」

「婚約したから、浮気は禁止でしょ」

にこにこ。

何故か寒気がする。

気のせいだと、アルは思う。そう言い聞かせなければ色々ヤバイ気がする。

「よもやビィには」

「子供が飲むには早いわ。それに別のアプローチが良いと思うし」

「俺、婚約解消したけど」

キラーン! とマロンの目が光る。

「!」

「ああ、知らなかったのか? アルは正式に解消したぞ」

「了解」

ゴクンと生唾を飲み込み、逃げだそうもしたアルはあっさりと捕獲された。

「成る程、まだまだ経験不足らしいな」

レーガルは、ちょっとだけ可哀想になったが 連れられて行くアルを見送り苦笑いするしかなかった。

邪魔者の二人が居なくなれば、ビィは独り占めなのだ。





☆ ☆ ☆



縛られた息子がモゾモゾしている。

にこやかな笑顔のまま開けたドアを即効閉じた。

今頃縄抜けの練習をしているとは、遅い。

「何をしているのだ。アレハ」

笑えない。

一息吐いてから、再度ドアを開ける。

バスタオルを巻いた乙女と目が合う。

大慌てでドアを閉じる。

今、何か見ては行けないモノが見えてしまった。

「……疲れているのか」

乾いた笑をし意を決して再度ドアを開ける。

バスタオルの乙女は、息子を下敷きにしていた。

「おはようございます。御義父様」

「ああ、おはよう、マロン。何をしていたか聞いても?」

「縄抜けのお復習を。こんなにダメダメとは思って見なかったので」

モゾモゾ

「折角、縄抜けできたら何でも言うことを聞いて差し上げると言うのに」

「ハハハ、逆だろ。縄抜けできなかったらお風呂一緒とかの方が本気になるぞ」

マロンは「あら」と、つぶやきアルを見る。

「では着替えて来る前に縄抜けできなかったらキスね」

踊るように、奥の部屋に消えるマロン。

「……お前、キスすらしてないのか?」

焦りながら、縄抜けを頑張っている息子。

「アル、ちょっと焦がして弱くしてだな……」

ぼっ、と燃えた。

「ちょっとと言うたろ。そんなに燃やしたら見張りに気がつかれるだろうが」

パパもスバルタだった。


「レーガル様のテントはおうちに繋がって居るのね。夜はお仕事してたのかしら」

朝食をしっかり頂いた後、テントへと戻った二人は何時もと変わらぬ日常に溶け込んだ。

「マロンのも何処かに繋がっているだろう」

「学園よ。貴方のは?」

「俺のは支給品のだ」

「ビィは家に繋がっていること知って?」

「知らない」

「そう、私のが学園に繋がっているのも知らないもの」

どかーん

何かがぶっ飛んだ。

「……テントにビィを連れ込んだのは失敗ね。次からはビィのテントに乱入するわ」

マロンは笑顔を張り付けたまま鞭を手にする。

アルは固まった。

「私のテントを吹っ飛ばしたお馬鹿は誰!」

凍り付く。

父から貰った物をマロンは大切にしている事を良く知っているアルは、お馬鹿が無事逃げる事を祈った。



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