カオス時々
常に野宿ではなかった。進路上の町や村で宿泊もする。
物資の補給も受ける。
「あ、この街には 家有るよ」
「大抵の街にはあるかと」
「ああ俺の家も有るかも」
「そう言えば、家も……」
学生たちの会話が変だ。
隊長ソールはもうあきらめた。
「じゃあ五、六人ずつお泊まり会で」
宿屋を取らずに彼らの家に泊まれば経費節約にはなる。
しかし。前回のお泊まりはスリリングだった。
思い出したくもない。
宿代を物資の資金に回すことにした。
なのでくじでグループ分けをした。
学生に連れられて行った屋敷は、ため息がでる。
いきなり押しかけた客とも言えぬ客をもてなす使用人たち。
主人以上に、丁重に扱われた。
むず痒い扱い。
荒くれ共との安い宿屋でバカ騒ぎの日常から非日常の世界。
別のグループたちも同様に別世界の生活を観てきたのだろう。
礼儀作法を学ぶ良い機会だろう。
今後増えるで有ろう。上位種との交流。
そもそも人脈の宝庫なのだ。
あれらは。
ソールはビィが案内した屋敷の前で息を飲んだ。
「この紋章、王家のだよな?」
「うん、そうだよ」
「そうか、兄と別々の時点で気が付くべきだった」
何時も引っ付いているセット品が、別々のグループを引き連れ帰宅。
それぞれ別の家に連れて行ったのだ。
「もう王家入りは決まっているのか? 確か十六歳位が判断基準だろう」
「僕は五歳の時に認定されたよ。でも仮って奴? 僕は高等科卒業と同時に仮はとれるの」
つまり、どう考えても王家入りは確定。
「やはり帰ればよかった」
ソールの呟きは誰にも聴こえなかった。
三兄弟の中でもしかしなくとも一番位が高いかもしれない。
「いやいや、まだ仮」
数年後の人脈に、ソールは渋い顔をした。
「ドラドラ」
自分たちの従獣を獣舎に引っ張って行くと、見覚えのある竜がいた。
「ドラドラ?」
スリと竜が甘える。
「これスライム」
ちょんと竜の頭の上にスライムを載せるビィ。
「仲良くするんだよ」
別の柵に、馬やら騎鳥など入れる。
水と餌を与えるとビィは獣舎を後にした。
王家の別荘とほいえ、王家の誰かが住んでる訳ではない。
基本は客人をもてなす家だ。
夕食は豪華なものが用意されていた。
公爵様がいらしていたからだろう。
と言うか、何故膝に座っている。
当たり前のように、抱っこされている。
しかも食べさせている。
「そう言えばビィ、学園からお前の事業の売り上げか来ていたぞ」
「事業?」
「何でも木の実と卵に生花と蜂蜜の売り上げとか」
ビィは首を傾げて?マークを出している。
「実の成る木を植林したとか、まあ 学生証にいれたのでギルドで確認すると良い」
「わかった」
と返事をしながら、実のところわかってはいなかった。
ビィは単に父独り占めを堪能していたに過ぎない。
☆ ☆ ☆
ポヨヨンと竜の頭の上でますたーを見送った後、スライムは振り払われた。
ポテと地面に落ちた後、竜のダンスが舞い落ちる。
足をすり抜け、竜の尻尾からかけあがり再度頭の上へ。
オートヒール
竜は少しだけおとなしくなった。
竜は疲れている。
ヒール、ヒール
ついでに、鱗の整備でもしておきましょう!
ピカリンコ!
ピカリンコ!
キラリと光る鱗。磨きあげられた翼。
魅力度アップ
爪もお手入れをーー。
翌朝、獣舎に現れたビィの父はぴかぴかになった竜と対面した。
「さすが王家の獣舎師」
竜がおとなしく手入れをさせたのも驚きだが、一夜にしてこれだけの手入れをした事に驚く。
「所で、何を押さえている?」
尻尾の先でジタバタしている何か。
「おや、スライム」
尻尾の下から逃げ出したスライムは、スリスリ人間に助けを求めた。
む? お疲れですね!
ピカリンコ!
お肌スベスベ!
朝食の場で、若返った領主に対面した館の侍女達が客人が食べた食事を若返りの食事として語り継がれる。
都市伝説が生まれた瞬間だった。
☆ ☆ ☆
王家は世襲ではない。六つの公爵家から選抜される。
十六の時点で覚醒者であること。
そして公爵家には、公爵家を継ぐ跡取りが既にいること。
覚醒者でも跡取りがいなければ、選抜されない。
また選抜されても能力次第では取り下げられる。
王に求められるのは、六人の公爵家をまとめる手腕だ。
もっとも就職先として王家は申し分なく、公爵家から出るしかない末子辺りは王家からの声掛かりを羨望していたりする。
まだ十二のビィにはどうでも良い事だった。
☆ ☆ ☆
本日の夜営地。
「あれ? こいつビリビリしているけど?」
「なんかね。ドラドラと一晩一緒にいたら雷覚えたらしいの」
アッシュは、パチパチしているスライムをつつく。
「ドラドラ?」
「雷竜」
「へえ、所で何故に縛られて?」
紐に結ばされ、プランとしているスライム。
なかなか嫌な予感しかしない。
「一晩、炙ってたら焔覚えるかな?」
ニコニコするビィ。
「……朝食は炙りスライム?」
うっかり会話を聞いたソールが噎せる。
「こう焚き火に」
「やめなさい」
「えっ、でもやって見ないと判らないよ?」
ぷるぷるとスライムが揺れる。
「放ときなさいよ。網からすり抜けて逃げれるのにちょっと巻かれた紐から逃げられない事ないのだから」
「趣味か」
ペシャリと後頭部を叩かれ、渋い顔をするアッシュ。
「変な言葉教えないで!」
「えっ? 変な言葉? 何が?」
ビィが首を傾げて聞いてくる。
「知らなくて良いの! ほらスライムと遊んでないでもう寝なさい」
マロンに腕を捕まれ連行される。
「……で、これは炙られたままで良いのか?」
焚き火にかけられたスライム。
アチアチとスライムが紐に絡まったままぴょんぴょん跳ねている。
「これが朝飯」
うなされそうだとアッシュは思う。
「所でマロンが自分のテントにビィを連れ込んだのだが」
「……替わりにほのかに温まったスライムを進呈しよう」
「ぬくい」
明日は、自分がビィを寝かしに連れていこうと計画を立てるアッシュだった。




