細い小路の別れ道
さわさわと風に揺られる葉っぱ。
何故か虫の声が全く聞こえなくなった。
代わりに、鳥の声が多い。
脇の並木のを良くみれば、枝が鳥だらけたった。
そして、鳥の声もピタリとなくなる。
「それは俺のだ」
頭上のスライムがピクと動く。
「君は誰?」
ビィは珍しく表情が消えていた。
それに彼らは気がつかなかった。
「それは俺が召喚したんだ!」
彼らは気がつかなかった。気温が一気に下がった事に。
いや、気温低下は継続中な事に。
「ふうん? 契約してないと思うけど?」
「それははぐれて」
スライムが刺を生やしていた。
いや、回りに氷柱が出現する。
先端を相手に向けてーー。
「……もう無理みたいだよ?」
ピカピカ光っているスライムを頭の上から取る。
「そもそも逃げられたら報告する事になってるよね? 報告なかったみたいだけど?」
刺々のスライムを撫でる。
「契約出来るのは、自分の魔力によって固体数違うけど、君は三匹もういるみたいだし」
中等科の召喚は一年で一匹、二年で二匹、三年で三匹が基本とされている。初等科の時に捕まえた従獣とは別カウントだ。
中等科に入って召喚を教わるが、自分の器用魔力によっては契約を見直し捕まえ契約した子との解約を覚える。
と言うのも、召喚は自分の魔力で呼べる相手がランダムに選ばれる。
雑魚しか出ないのも運かも知れないが、大抵魔力不足が原因だ。
召喚した獣と契約前に相性を見る時間は許されているが、はぐれた場合は速やかな申告をする事になっている。
はぐれた迷子を保護すると共に、帰還させるためだ。
呼び出したは良いが契約まで終了出来ない場合も速やかな帰還が望ましい。
はぐれると言うことは、契約は難しい。
はぐれたふりをして、捨てる輩も多い。
しかし捨てられた負の感情が多くなるとその種との新たな契約に支障が出てくる。
全く関係のない他人の行動で、次の契約の難易度が羽上がる。
迷惑な事である。
スライムを撫でる。先程からバリバリ魔力が吸われている。
スライムが吸っているのもあるが、それ以上に回りに吸われている。
飛行系獣が周りの木々の枝にたわわに実っている。
攻撃対象は困った事に鈍感だった。
「はぁ、鳥さんも過激なんだ」
とりあえず、スライムを撫でながらお仕置きはどの程度だろうかーー思案しているとスーイと影が通りすぎる。
見上げれば、飛竜が急降下してきた。
「いやあぁぁぁーー!」
マロンが転がり落ちて来る。
飛竜に乗っていたらしい。
「あ、マロン。ちょうどよかった」
ピシピシ空気が凍って行く。制御が難しい。
「彼がスライムとはぐれた人だよ」
「……なんですって?」
乙女が振り向く。バックに焔を背負って。
一斉に、鳥たちが飛び立つ。
鳥は良いね。飛べるから。直ぐ逃げれるよ?
睨まれた蛙は、元から逃げ場はなかった。
「お腹を空かせたスライムが私の薬草を食べちゃったのよ?」
首根っこを捕獲され連行されて行くのを見送り、石像になっている飛竜を見上げる。
「お前、マロンからかったら唐揚げにされちゃうよ?」
プイっと知らんぷりの飛竜。
「まあ、助かったけど」
小鳥が飛び交う空の上空で旋回する竜を見上げ、苦笑い。
まあ鳥に追いかけまわさるれのと、マロンに燃やされるのとどちらがマシなのか悩めるところだけれど、氷像になるよりはマシだろうと結論付ける。
「スライム、お前、氷も扱うんだ?」
夏場の涼みに活躍しそうだとビィは思った。
☆ ☆ ☆
あれが目の前にいた。自分をいらないと投げ付けた人間。
どろどろとした不快感が全身を駆け回る。
怒り。
それは、あっという間に全てを飲み込む。
ぁぁぁ、周りの感覚も飲み込んでいく。
ひとつの哀しみ。ひとつの怒り。ひとつの嘆き。
色々混ざりあい、どろどろに飲み込まれて行く。
これが連鎖。
僕の魔力はそう多くない。
使いきれば命を削り、そして消滅するだけ。
ほんわかと暖かく包み込む光。
魔力。ますたーの魔力だ。
流れ込んでくる力。
おや?
ワタシハナニヲ?
撫でるますたーの手。
優しい、いとおしいーー。
繋がっていた鳥たちがバラける。
そして上空から巨大な力が落ちて来る。
ぁぁぁ
鳥たちが逃げて行く。
捕食者への恐怖。
人にかまってはいられない。
バラバラに散る。
うん。
お腹がスイタ。
あむあむ
ますたーごはん!
ますたーとの繋がり。魔力の道。
スーリスーリ。
ますたーは、逃げた鳥たちを心配している。
ますたーの優しさに触れたから、大丈夫だよ。
ますたーの光。
あむあむ
あ、
ますたーの髪を食べていたら飛竜にツツカレマシタ。
フフフ
ますたーは僕の!
ドキドキ
飛竜とにらめっこはスリリング




