ようこそ、ひといき食堂へ
「はぁー……今日もミスっちゃった……」
「高瀬、この頃ミス多いな。ちゃんと休めてるか?」
「えっと、寝れてはいるんですが、息抜きができてなくて……」
「それなら、いいとこ連れていってやる!」
『いいとこ』と言われ、高瀬という男は目を輝かせた。
「えっ、若いお姉ちゃんが、いっぱいの所ですか!」
「ふっふっふ、まぁ行ってみてのお楽しみだ」
相手の男は、口角を上げて指を振った。
そして、二人はある店に着いた。
「……先輩、『ひといき食堂』って書いてるんですが?」
「あぁ、そうだけど?」
「若いお姉ちゃんは?!」
「まぁ、若いっていやぁ若いが……とにかく入ろうぜ」
先輩が先に入ったため、高瀬も渋々入店した。
「はーい、いらっしゃい」
出迎えたのは、四十代くらいの女性だった。
なので、席に着いた高瀬は、先輩に尋ねる。
「どう見ても、おばちゃんですよね」
「こらっ」
「あら、後輩君はちょっと失礼だねぇ」
「あっ、すんません」
「ははっ、冗談だよ」
女性は笑ったが、ふいに高瀬をじっと見つめる。
「おや、あんたちょっと疲れてるね」
「あっ、はい……」
高瀬は頷き、ごまかすようにメニュー表を探した。
しかし、どこにもなかった。
「先輩、ここってメニュー表、無いんですか?」
「あぁ、好きなの頼んでいいぜ」
「でも……」
「この人、なんでも作れるからさ」
「マジっすか!」
「ただし、条件があるわ」
「条件?」
「注文は、あんたが今、一番食べたい物を頼みなね」
「俺の、一番食べたい物……」
すると、高瀬の頭の中に、あるメニューが浮かんだ。
「目玉焼きののった、やきそば」
「了解、少し待っとくれ」
女性は頷き、調理を始めた。
待っている間、先輩が話しかけてきた。
「さっき頼んだやつ、ウマそうだな」
「母さんが、俺が落ちこんでいる時によく作ってくれたんです」
「……いい母ちゃんだな」
「はい……」
先輩の言葉に、高瀬はうれしくなった。
すると、女性が料理を出した。
「はい、お待たせしました!」
「わぁっ、すごいおいしそう!」
「じゃぁ、早く食べようぜ」
そして、高瀬と先輩は食べ始めた。
「ソースが甘辛くて、目玉焼きは半熟だ!」
母さんの味と、一緒だぁ……
高瀬は懐かしい味に、安心感を覚える。
「喜んでもらえて、なによりだよ」
「ごちそうさまでした!」
「おっ、高瀬君、ちょっと元気出たんじゃないの?」
「はいっ、明日からの仕事、頑張れそうです!」
★★★
ここは、『ひといき食堂』。
疲れた客が、ほっとひといきできる場所。
皆様も、ちょっと寄ってみてはいかがですか?




