リンゴの木の下で
ある村に、活発な女の子・アンと、子犬のハチが暮らしていました。
ハチの首には、赤い首輪をつけていました。
どこにいても、すぐ見つけられるようにです。
二人は、とても仲良しでした。
ある日、丘の上にある、リンゴの木の話を聞きました。
そこは、いろんな人たちが集まる場所でした。
パン屋さんや、お花屋さん。
おじいさんや、小さな子どももいました。
そこへ、アンとハチがやってきました。
「わぁっ、本当にリンゴがいっぱいだわ!」
「ワンッ!」
アンは喜び、木を登り始めました。
ハチも元気に、木の周りを走ります。
そして、アンは実を取り、ハチに手を振りました。
「ほら、ハチ取れたよ!」
「ワンッワンッ!」
すると、強い風が吹きました。
「えっ?」
アンは手を離していたため、そのまま落ちてしまいました。
慌てて駆け寄ったハチは、必死に鳴きます。
やがて、鳴き声に気づいた人たちが、集まってきました。
「大変だ、早く病院へ!」
そして、アンを連れていってしまいました。
残ったのは、ハチだけ。
ハチはリンゴの木の下で、ずっと待ちました。
寒い時も、暑い時も。
雨の日も、風の日も。
ずっと、ずっと待ちました。
しかし、アンは来ませんでした。
それでも、ハチは待ち続けます。
また、一緒にいられる日を信じて……
★★★
そして、長い年月がたちました。
丘の上には、リンゴの木がまだありました。
「おばあちゃん、もうすぐだよ!」
そこへ、孫と一緒に、おばあさんがやってきました。
そのおばあさんは、アンでした。
「ここに来るのも、久しぶりねぇ」
「おばあちゃん、ここに来たことあるの?」
「えぇ、小さい頃にね」
アンは、木を見上げながら、ゆっくり話します。
「でも、怪我をして、治療のために村から離れていたのよ」
「へぇー、そうなんだ」
すると、孫が木の後ろにある物を見つけます。
「なんだろう、これ……」
手に取ったのは、赤い首輪でした。
「おばあちゃん、こんなの見つけたよ!」
アンに見せると、彼女は驚きました。
「これは、ハチがつけていた首輪だわ!」
アンは、涙があふれてきました。
「ずっと待っていてくれたのね……ありがとう……」
首輪を受け取り、アンは優しく、だけど力強く抱きしめます。
「待たせちゃって、ごめんね……」
『ワンッ!』
ふと、ハチの鳴き声が聞こえました。
うれしそうなハチの声に、アンは小さく微笑みました。




