父の印象
「もうすぐ、父の日かぁ……」
私はカレンダーを見て、ため息をついた。
五月も終わりに近づき、六月がやってくる。
六月には、あるイベントがある。
『父の日』だ。
小さい頃は、なにを贈ろうかと、ウキウキしていた。
父の喜ぶ顔が、うれしかったから。
でも、大人になって、気づいたことがある。
父親のダメな部分が、見えてきたことだ。
よく母に怒られるし、余計な一言が多い。
言いたいことだけ言って、人の話を聞かないこともある。
それに、休みの日は、テレビの前でゴロゴロしてるだけ。
しかも、テレビを見て、大笑いする。
それだけなら、まだいい。
でも、声が大きいし、部屋が近いから、私の部屋まで響くのだ。
本当、勘弁してほしいよ。
そんなことを思って、私はカレンダーを見ていた。
すると、ふいに声をかけられた。
「ねぇ、明日予定ある?」
声をかけてきたのは、母だった。
「えっ、ないけど……」
「じゃぁ、明日の昼、ちょっと付き合って」
珍しい母からの誘いに、私は正直驚いた。
次の日、私たちは予定通り出かけた。
「お母さん、昼食はいつもの所だよね」
「あっ、今日は行くとこ決まってるのよ」
「ふーん、どこ?」
「ダメ、教えなーい」
私がいくら聞いても、母は教えてくれなかった。
しばらくして、目的の店が見えてきた。
「えっ、ここってレストラン?」
「さぁ、入りましょう!」
戸惑う私を無視して、母は先に入っていく。
「いらっしゃいませ」
「二人です」
「では、あちらの席へどうぞ」
席に座ったけど、私はなんだか落ち着かなかった。
前を見ると、母は普通にメニューを見ていた。
そして、注文は母がしてくれた。
すると、母が私の後ろを指さす。
「ほら見て、お父さんよ」
「えっ?」
私は驚いて、思わず振り向いた。
私たちの席からは、厨房がよく見えたわ。
そこには、料理を作る父の姿があった。
その真剣な眼差しは、家にいる時とは違っていた。
「お父さん、いつもと違う……」
「ここ、お父さんの職場なのよ」
「知らなかった……」
「あなた、お父さんに興味ないもんね」
「そんなことは……」
ないとは言えなかった。
だって、いい印象を持っていなかったのは、確かなのだから。
でも、今の父は……
「お父さん、カッコイイね」
「ふふっ、当たり前でしょ」
母の笑顔に、私もうれしくなった。
私は、父をよく見ようとはしていなかった。
だから母が、仕事の父を見せてくれたのかもしれない。
もうすぐ、『父の日』がやってくる。
今年は、どんなプレゼントを贈ろうかな。




