3ターン目まで生き延びれるか?
三流家が担当していた戦線は大勝利だ。
狂戦士のサノ姫もしばらくは満足してくれるほどの敵を討ち取ったし、鹵獲品もいっぱいある。
青銅製の旧式小銃を大量に。この戦場では2級品扱いなので、トナミマチ行きだ。
アソノ国では、銃がほとんど普及していないので、おそらく猛威をふるうことができる。
食料輸送で積荷を降ろした船一杯に鹵獲品を積んで、トナミマチへ運んだ。
土居さんがおそらく有効活用してくれるはずだ。
青銅製の軽砲も10門ほど手に入れた。
海上輸送に頼らないといけない関係で、大型火器は不足している。これは特にうれしい。
旧式で、性能は悪いが、そんな贅沢は言えない。
青銅製で、機動性が悪く、命中率も低いが、あるだけマシだ。
さっそく三流軍へ、編入した。
俺は悠々と軍議へ向かう。
すると軍議の場は重たい雰囲気に包まれていた。
「このまま数に圧倒され、蹂躙されるより、一撃のもと、攻勢に出るべきです!」
時代錯誤のカラフルな軍服を身にまとった男が、力説する。
確か、フレッゾ伯爵大佐だ。
革命前は大貴族だった。側近を連れて亡命していたが、今回の徴募に指揮官として採用された。
「フレッゾ伯爵のおっしゃることも分かりますが、相手は20万人もいます」
「攻撃は人の心をまとめます。このまま守勢を続ければ、敵への同調者は増えるばかりです!」
エリカに、フレッゾ伯は堂々と、反論する。
「そうだ、伯爵の言う通りだ!」
「ラカーク貴族の矜持を今こそ、平民に見せつけるべきだ!」
「然り然り、さすれば、平民たちも邪教から目を覚ます」
取り巻きの亡命貴族たちが、フレッゾ伯爵におべっかを使う。
タチの悪いことに、今回の戦いで一番の功績を立てたのは彼らのグループだ。
エリカも、強くは主張できない。
俺が入室したのに気がついたエリカは、助けてくれと、俺に視線をよこす。
それとなくフレッゾ伯とその取り巻きを見つめて、ステータスを確認してみる。
<カートル・フレッゾ
政治 68(C) 軍事 75(B) 知力 67(C)>
<マルム・ベレトス
政治 38(D) 軍事 88(B) 知力 34(E)>
<ガパー・ジェマ
政治 71(C) 軍事 33(E) 知力 81(B)>
まあ、それなりに優秀な連中だ。人材不足の我が軍にとっては、非常に貴重な人材である。
グループのリーダーは、名門貴族出身で、文武に優れ、カリスマ性もあるフレッゾ伯。
政治は苦手だが、武勇に優れるベレトス男爵。
知略に長けた、白髪の老人、ジェマ子爵。
決して無能ではない。
それにしても、失敗した。
士官がいないからって、亡命貴族を雇用するのではなかった。
こいつら、明らかに目が曇ってやがる。
優秀であるが、時代が読めていない。
たとえ花鳥院家が、勝利しても、もはや貴族が特権を得られる時代は終わっているのだ。
終わった時代を夢見て、領地を取り戻そうと、無理な攻勢計画を提案している。
「あなたたちは、ヨーク穀倉地帯で負けたのをお忘れですか?ゲリラに悩まされ、補給を遮断され、弱ったところを一気に殲滅されたのを。今、攻勢に出ても先日の敗戦を再現するだけではありませんか?」
「うっ……確かにそうだな……」
あまり話すのが得意でないベレトス男爵が、言葉につまる。が、すぐさま後ろからジェマ子爵が、補足する。
「失礼ですが、我々はただ生き延びるために、戦っているのではありませんぞ?
先祖代々の領地を回復するために、従軍しているのです。
それが果たせないとなれば……」
ジェマ子爵は、老人特有のしわがれた笑みを浮かべるが、その目は笑っていない。
暗に、こちらの要求が飲めないなら、花鳥院家に反旗を翻すかもしれないと脅している。
軍の組織編成を急ぎすぎた。
時間がないからと、丸投げして、亡命貴族たちに編成をお願いしてしまった。
他に指揮官を務められる人物もいないので、しかたなかったのだが。
フレッゾ伯、ベレトス男爵、ジェマ子爵の3人には、約15,000人の兵を預けている。
ここまで強気に脅しをかけてくると言うことは、持ち出した財産でもばらまいて、指揮下の軍を掌握しているに違いない。
「……明日、決めさせてください。
カムラの物資補給は、三流家が担当されています。
攻勢に出るという、補給に関連する重大事項は、安具様も配下と相談する必要があります。
急には、安具様も決められないでしょう。
花鳥院家は、三流家の傘下である以上、みなさんご承知を……」
エリカが急に振ってきたが、俺もこの攻勢計画には反対なので、
「ああ、そうしてくれ。
明日、ゆっくりと話そう」
フレッゾ伯は、フンと鼻で息をして、エリカを見る。
「かしこまりました。お嬢様の命令とあらば。
きっと、明日には攻勢計画に賛同していただけると信じています」
こうして、会議はお開きになった。
フレッゾ伯たちが、帰った後の誰もいなくなった会議室には、エリカと俺が残った。
「彼らは、勝てると思っているのよ。
きっと自分たちが、領地に戻れば、領民たちが素直に支持してくれると信じ切っている。
自分たちは、他の腐敗貴族と違って、良い統治をしていたのだから、領民たちに呼びかければ、必ず革命の熱病から覚めて、自分たちに味方してくれるって」
「この遠征計画を止めることはできないのか?」
「無理でしょう。このまま時間が経てば、彼らは貴族ではなく、私に雇われている一介の指揮官になってしまう。
まだ貴族という看板が生きているうちに、領地を取り戻したいのよ」
「彼らの野望に巻き込まれて、15,000人の兵を失えばどうなる?」
「カムラの防衛は、難しいでしょうね。
人手が足りなくなる」
「それじゃ、やることは決まりだ」




