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戦後と新たな火種

「最高ですわよ、ご主人様!妖狐よりもあくどいかもしれませんわ!」


 論功行賞を終え、俺が家に戻ると、部屋には大爆笑しているタマ子がいた。


「裏切り者と嫌われている小山田景光を守護代に任命ですって?おまけに南部地域の統治権を認めるとは……」

「当然だろ?敵の総大将を討ったのだから。戦功にはきちんと報いないと」

「フリジア山脈の資源基地はこちらで確保して、南方街道の権利もこちらがガッチリ確保。南部のおいしい場所は、すべて三流家の管轄になっていますわね……おいしい部分を全て抜いた南部を任せるわけですか」

「よく見抜いたな……タマ子なら、当然か。まあ、大丈夫だ。それでも多くの農業地帯が残っている。小山田が南部を掌握して、生産力が回復すれば、向こうにも利益はでるはずだ。穀倉地帯を確保している綾野家残党にどう退去していただくかは知らんがな」

「これだけ乱暴に南部の統治を任せて、謀反をおこされませんの?」

「今回、多くの領地を得たとはいえ小山田家の経済力、軍事力は脆い。綾野家の残党に囲まれるなか、俺が守護代に任命したことだけが頼みだ。自分にとっての虎の威である三流家を消すような真似はできない。小山田家には、衛星国になってもらおう」

「統治の難しい土地を押し付けられた上に、他国が攻めて来た際には、時間稼ぎの盾になってもらうわけですか。その上、三流家の後ろ盾のみが頼りなので、裏切ろうと思っても、裏切れない。自らが望んだ結果とはいえ、小山田さんもかわいそうです」

「地に這いつくばっても生き延びてやるって感じだったし、小山田も意外とやるかもしれないぞ?」


 そんな会話をしていると、勢いよく障子が開いた。


「ヤッホー!元気、ヤストモ様、タマちゃん、おひさー」


 ピンク髪を後ろにまとめ、白騎士の格好をした男の娘。太田サノ姫がやってきた。

 普通の大名家なら、突然、部屋に家臣がやってくるなんてありえないんだろうが、俺は現代人感覚が残っているので、わずらわしい作法等は抜きにしている。

 それも、サノ姫にはウケたようだ。最近、ますます懐かれている。


「騎馬隊の訓練、かなり形になってきたよ。多分、長杉家とかの強豪相手には勝てないけど、国人の反乱軍クラスなら一瞬で潰せるくらいにはなった」


 サノ姫には、軍の責任者である軍事奉行に任命した。

 給料も、他の人よりずっと優遇している。

 サノ姫は、軍の最高責任者であるとともに、騎馬隊の育成を任せた。

 騎馬に乗るおっさんたちが、サノ姫に妙に熱い視線を向けている。

 やはり、男の娘は良い。

 

 土居さんは、とある用事で出張している。

 ということで、トナミマチにいる幹部全員、といっても総勢3人が揃った。


「三流家は、夏には滅びる!」


 俺は突如として、宣言する。

 すべってしまった。

 しばらく沈黙が続いたが、サノ姫が尋ねてくれる。


「どーして、ヤストモ様?国内には、三流家に逆らえるような敵はいないじゃん。他国もゴタゴタ続きだし」


 サノ姫が、かわいく首をかしげる。うーん、グッド。

 サノ姫の意見も分からないでもない。乱世は続いているが、一見、小康状態にあるように見える。

 だが、安心はまったくできないのだ。

 実は、<ランセ・トウイツ>において、今回激闘を繰り広げた綾野家も、即滅亡する勢力の1つだ。

 大抵、三流家を滅ぼした後、間髪入れずに滅ぼされる。

 現状、1ターン目に滅びる三流家と2ターン目に滅びる綾野家の立場が入れ替わっているだけだ。


 綾野家が滅びる理由はいつも同じ。他国からの侵略。

 この世界とゲームが、似ていると仮定しするなら、2ターン目である8月には、すでに他国は侵略の準備ができていることになる。

 戦後処理に時間がかかって、今は5月。

 1ターン目と2ターン目の間になる。


「他国の動乱は、夏には落ち着くと予想している。動乱を長引かせて、荒稼ぎしよう!」


 サノ姫は、うーんと唸って、賛同してくれない。

 意外だ。戦闘狂のサノ姫なら、荒事には同意してくれると思ったんだけど。


「ウチも先月まで、バリバリ内戦してたんだよ。国力回復が先じゃないかな?まだまだ、兵力の再編成も終わっていないんだよお?ボクもどうせ戦うなら、万全な状態で戦いたいし……」

「アソノ国は、他国に比べて貧しい。夏に他国の動乱が終わったら、他国の国力も回復する。お互いに万全な状態で戦えば、貧乏な三流家には勝ち目がない」

「それはわかるけど、今のウチが攻勢に出られる相手なんているのかなあ?」


 俺とサノ姫の会話を黙って聞いていたタマ子が、会話に割り込む。


「味方を増やすために、土居さんを派遣したのでしょう?」

「うん。土居さんには、カムラに行ってもらっている」

「聖王国を敵にするおつもりですか?」

「そうだ。あの狂信者たちから、鉄砲をもらおうかと思ってな」


 聖王国。それは、<ランセ・トウイツ>製作陣のアバウトさ、おもしろけりゃなんでもいいだろう精神を表わしている。

 <ランセ・トウイツ>は、戦国時代テイストの戦略シミュレーションゲームだ。

 俺たちのいるアソノ国は、だいたいのキャラクターは、和風にデザインされている。名前でもわかる、綾野常識、三流安具。

 一方、隣国のラカーク半島地方では、キャラクターはファンタジー世界の住人だ。住んでいる金髪碧眼だったり、なんかお城も塔がいっぱい立っているタイプだったりする。

 

 そのラカーク半島の最大勢力は、聖王国。守護大名のとなりには、ファンタジー世界の国家がいるのだ。

 聖王国を率いるのは、聖王女セレスティア。

 一介の女工から、数々の奇跡を起こし、革命を成功させた奇跡の乙女。

 革命の舞台となり、聖王国の本拠がある聖都メキアは、大陸有数の工業都市である。ここでは、大量の銃器が生産されている。


 聖王女を崇拝する信者たちは銃で武装し、抵抗勢力を次々と駆逐している。

 そのラカーク半島の革命騒ぎも、終盤へと向かっているところだ。


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