15話 武器屋
今日はミーシャさんが武器の状態を確認してもらる為に武器屋に向かう。場所は冒険者ギルドのお姉さんに教えてもらった。
「すみませーん。わたしの武器を見てほしいんだけど、誰に聞けばいいですか?」
ミーシャさんは今日も元気だ。店に入るなり、店員らしい女性にいきなり声を掛けた。
「武器の手入れですか? それなら親方に見てもらうので、武器をお渡してください。あと、使っている時の気になる点でもあれば教えてください」
「そうだねー……最近、モンスターが少し斬り難くなった気がするんだ」
「ハハ、手入れは専門家以外の人には難しいですからね。丁寧にやっても徐々に斬れ味が落ちて…………って!? これ、全然手入れをした形跡がないじゃないですか! 貴女は冒険者ですよね? 命を預ける武器をなんだと思っているんですか!!!」
ミーシャさんの渡した鉄の剣を見た途端、店員さんが鬼の形相で怒鳴り始めた。
「え? 武器は武器じゃないの?」
「そんなっ! 貴方も何を黙っているんですか! 彼女が手入れ出来なくても、男性である貴方がフォローしてあげないでどうするんですか!」
え? まさか僕に言ってるの? 勘弁してくださいよ。ミーシャさんが一緒に行こうと強く言うもんだから来たが、こんな抜き身の刃が並べられている場所じゃあ、気持ち悪くて立っているのが精一杯だよ。
「黙っていないで何か言ってください!」
店員さんは僕が無視しているように見えるんだろうね。でもね。本当は口を開いたら胃の中身がリバースしちゃいそうで黙っているんだよ。
ま、理解されないだろうけどね……
「どうしたんだ? 店の中で騒ぐと客に迷惑が掛かるぞ」
「お父さん、これを見てよ。自分の武器をこんなになるまでほおって置くなんて信じられないよ!」
店の奥から大男が現れた。どうやら店員さんの父親のようで、いかにもハンマーを振っていそうなゴツイ男だった。
「落ち着け。客にとって武器がどのような物でも、俺達が文句を言う権利はない」
「でも!?」
「いいから落ち着け。冒険者が武器の手入れを蔑ろにして戦闘中に折れたとしても、それは本人の自己責任になるんだ」
店員さんはまだ納得がいっていないようだ。ただ睨む先が僕に向いているのは何故だろう?
「それで……ふむ。この剣の手入れの話だが、ハッキリ言って買い替えた方がいいレベルまで傷付いている。元となる鉄も粗悪品だから打ち直しても大した物が出来んしな」
「えー、そんなに悪くなってるの。一応まだゴブリンぐらいなら一撃で斬り倒せるんだけどな……」
「ほう、こんな状態の剣でモンスターとまともに戦えるとは、お嬢ちゃんはなかなかの腕前のようだ。だが、それならなおの事買い替える事を勧める。腕にあったモンスターと戦う時、武器が着いてこないと死ぬ可能性が高くなるからな」
「うーん、まだお金に余裕がないんだよね。どうしよう、シン君?」
ここで僕に話を振りますか。うう、気持ち悪い……
「きょ、今日の宿代を残して、武器を買い変えた方が良いのでは? ゥップ!」
でも僕は限界が近いですよ。たぶん顔色もドンドン青白くなっているんじゃないかな。
「やっぱりそうだよね。なら新しいのを選ぼうか」
ミーシャさん達の使えるお金は4000ゴールドぐらいだ。そのお金で買える範囲を武器を教えてもらう。
4000ゴールドとは日本円で言えば40万ぐらいの価値があるのだが、そんな金額で買える武器に大した物はなく、前と同じ鉄の剣か中古の剣しかなかった。
並べられた新品の鉄の剣をミーシャさんは見ていたが、それらはどれも大差がないので本人の持ちやすさで選ぶのが一番だろうと思い、僕は吐きそうなのを我慢して樽に入っている中古品に目を向ける。
直接手で持つのは無理なので、木刀を使って一本づつ持ち上げて見てみる。
中古の粗末な鉄の剣 ・・・ 前の持ち主が使わなくなった粗末な鉄の剣。刃は磨いでいるが内部に細かいヒビがあるので長持ちしない。
ほんと便利な目だよ。もし僕がまともに剣を持てるなら、安くて良いのを買って転売するだけで結構お金を稼げたんだろうな。
いや、もしそうならモンスターともまともに戦えるだろうから、時空魔法を併用して冒険者として有名になっていたかもしれないな。
まともに刃物を見ていると立っていられなくなるので、そんな余計な事を考えながら中古品を調べていると、気になる一本を見付ける。
中古の粗末な鉄の大剣(隠蔽) ・・・ 見た目は粗末な鉄の大剣だが、その内部にはミスリルの剣が隠されている。昔、財産を没収されそうになった貴族が後から安値で買い戻そうと隠したが、特徴のない大剣だった為に行方が分からなくなった。
マジか!? ミスリルって希少鉱石だったよな? そんなのが、えーと……3000ゴールドで売ってるなんて、かなりの掘り出し物じゃないか!
それより何だよ、この説明分。いつの間に武器の生まれた理由まで分かるようになったんだよ。って言うか、この貴族……馬鹿だろ。上手く財産を隠せても自分も分からなくなったら、本末転倒もいい所だよ。
まあ、そんな昔の事はどうでも良いか。
「ミーシャさん……これ、お勧め」
流石にレベル1の僕の力では大剣を木刀の先で持ち歩くなんて出来ない。仕方がないのでミーシャさんを呼ぶ事にした。
「えー、わたしには大き過ぎるよ」
「大丈夫。ウップ……買ったら理由を教えるから、代金を……」
そろそろ僕の体調が限界です。ミーシャさん、出来るだけ急いでくれないと内容を教える前に倒れちゃうよ。
「うーん、良く分からないけど、シン君がそこまで勧めるなら」
僕を信じてくれてありがと。安心して良いよ。ミーシャさんに損はさせないからね。
少し疑問に思ったままだったが、ミーシャさんはお金を支払って大剣の持ち主は変わった。元々装備していた剣は200ゴールドで買い取ってもらったので、実質は2800ゴールドの支払いで済んだ。
「それでシン君。言われた通り買ったけど、これにどんな秘密があるの?」
「とりあえず店を出ましょう。これ以上は僕の体調が限界です」
「あ、そうだね。すぐに出よ。シン君の顔色がゾンビみたいに真っ青だよ」
ゾンビと比べられるのは流石に嫌なんですが……ま、急いで店を出てくれるのは助かるから、わざわざ文句を言わないけどね。
「で、体調は大丈夫? 一度宿に戻ろうか?」
「なんとか大丈夫です。で、さっきの大剣ですが、中身にミスリルの剣が隠されているんですよ。だから中身を取り出せば良い武器になりますよ」
「それはシン君の目で見えたの? それとも魔法で?」
おやおや、まだ僕の魔法に興味があるようですね。
「今回は魔法ではありませんよ。これはミーシャさん達も知っている僕の目の力です」
「そうなんだ。それで中身はどうやって取り出せばいいの?」
「へ?」
「ん? だから隠されている中身の剣はどうやって取り出すの?」
フッ、お宝は見付けたが、宝箱を開ける方法を考えていなかったぜ。なんて恰好良く言おうと思ったが、内容は全然格好良くないのでやめておこう。
「えーと、それは…………」
「つまり何も考えていなかった訳ですね。……まあ、シンさんの先程の体調を考えると仕方がない部分もありますが、ちょっと考え不足ですよ」
はい、マリアさんの言うとおり、まったく考えていませんでした。
「すみません」
「まぁ、わたしも方法は思い付きませんのでこれ以上は責めれません。餅は餅屋。先程の武器屋にお願いしましょう」
店を出てすぐに戻っていくのは少し恰好悪いような気もするが、僕達にはどうしようもないので仕方がないか。
……やっぱり僕も一緒に行かないと駄目かな。あの空間に身を置くのは避けたいけど、また戻る原因を作ったのは僕だし、一応責任があるか……。
僕は重たい気持ちを隠して、ミーシャさんと一緒に武器屋に戻っていく。




