自分の力
朝。
森の奥で、低い唸り声が響く。
「……またか」
茂みをかき分けると、ゴブリンの群れがいた。
数は——五。
「昨日より多いわね」
エリシアが杖を構える。
「だが、問題ない」
ガレスが盾を構える。
「ユウト、どうする?」
「……やることは同じだ」
視界に情報が浮かぶ。
(敵、5。脅威、低〜中)
(味方、4。連携、向上)
(いける)
「ガレス、前を抑えろ」
「レオン、横から崩せ」
「エリシア、削りを任せる」
「ルナ、回復を切らすな」
「……了解」
一斉に動く。
ガレスが受け止め、
レオンが回り込み、
エリシアの魔法が削り、
ルナが支える。
連携は、昨日とは比べ物にならない。
「……早い」
気づけば、二体が倒れている。
「そのまま押し切れ」
迷いなく、残りを処理する。
——数分後。
「……終わりだな」
「楽勝じゃねえか」
レオンが笑う。
「連携が形になってきたわね」
エリシアが頷く。
「……皆さん、すごいです」
ルナも少し自信がついたように見える。
その時——
――《レベルアップ:Lv.3 → Lv.4》
(……まだいける)
「もう一戦行く」
「は?」
「今なら、もっといける」
森の奥へ進む。
次に現れたのは——オーク。
一体だが、明らかに格が違う。
「一体なら問題ない」
「ガレス、止めろ」
「レオン、背後を取れ」
「エリシア、タイミング合わせろ」
「ルナ、支えろ」
戦闘は、さっきよりも速く終わった。
そして——
――《レベルアップ:Lv.4 → Lv.5》
(……きた)
(統率上限、大幅拡張)
その感覚を掴んだ瞬間——
「た、大変だ!!」
村の方から叫び声が響く。
「魔物が……群れで……!!」
「……来たか」
「戻るぞ」
「次は——本番だ」
◇ ◇ ◇
村の外。
そこにいたのは、十数体のオーク。
そして、その奥に立つ一際大きな個体。
(……リーダーか)
「戦えるやつ、全員来い!!」
声を張り上げる。
集まる村人たち。
だが、動きはバラバラだ。
(このままじゃダメだ)
一瞬だけ考えて——決める。
「……今から分ける」
「ガレス、お前の周りに来い!!」
盾を持つ者たちが集まる。
「レオン、動けるやつ連れて右へ!!」
「おう!!」
「エリシア、ルナは後ろだ!!」
「任せて」
「はい!」
自然と、形ができる。
(いける)
「ガレス隊、前を止めろ!!」
「崩れるな、踏ん張れ!!」
「レオン隊、側面を崩せ!!」
「流れを変えろ!!」
「後ろは支援に集中!!」
「前を絶対に切らすな!!」
その瞬間——
動きが揃う。
ただの村人の集まりが、
一つの“戦力”になる。
「行け!!」
激突。
オークの一撃は重い。
「ぐっ……!!」
ガレス隊が押される。
「踏ん張れ!!」
ガレスが叫ぶ。
「レオン隊、今だ!!」
「行くぞ!!」
側面から崩す。
「後ろ、そこに撃て!!」
エリシアの魔法が炸裂する。
ルナの回復が繋ぐ。
流れが変わる。
(いける——)
だが。
オークリーダーが動く。
一気にガレス隊へ突っ込む。
「まずい!!」
前線が崩れかける。
(……ここだ)
「全員、聞け!!」
「目標をリーダーに絞れ!!」
「全隊、集中!!」
「動け——」
「俺が勝たせる」
その一言で——
全ての隊が動いた。
ガレス隊が受け止め、
レオン隊が斬り込み、
後衛の攻撃が重なる。
すべてが、一点に集まる。
「……終わりだ」
オークリーダーが崩れ落ちた。
その瞬間——
残りのオークが逃げ出す。
静寂。
「……勝った……」
安堵が広がる。
だが——
「……っ」
次の瞬間。
頭の奥に、強烈な衝撃が走った。
――《経験値を獲得》
――《経験値を獲得》
――《経験値を獲得》
「な……っ」
視界が揺れる。
――《レベルアップ:Lv.5 → Lv.6》
――《レベルアップ:Lv.6 → Lv.7》
――《レベルアップ:Lv.7 → Lv.8》
「……は?」
止まらない。
――《レベルアップ:Lv.8 → Lv.9》
(まだ……上がるのか……!?)
そして——
――《レベルアップ:Lv.9 → Lv.10》
――《統率上限、大幅拡張》
頭の中に、“広がり”が生まれる。
今までとは、比べ物にならない感覚。
(……なんだ、これ)
視界に浮かぶ情報。
(統率可能数……30)
「……っ」
息を呑む。
全員の位置、動き、戦力——
すべてが、手の中にあるような感覚。
(これなら——)
拳を握る。
(守れる)
だが——
「……まだだ」
小さく呟く。
これで終わりじゃない。
——ここからだ。
俺の戦いは、さらに広がる。




