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5


「じゃあもう3日悩まされて、その顔な訳ね…。

 やっぱり泊まりにおいでよ」


 そう言ってくれるのはありがたいが、真柴にだって都合はあるだろうし、根本解決にならない。

 冷やしうどんを口に運ぼうとした手が止まった。


「やっぱり、言うしかないのかなぁ……」


 弥生は自問自答するように、小さく零す。


「言うって、苦情?」

「苦情と言うか、お願い?」


 『ダメかなぁ』と苦く微笑む弥生に、真柴は難しい顔になった。


「このご時世、それもヤバくない?

 そんな子供がいるなら、若い夫婦って事だろうし…最近の若い…って、自分もまだ若いつもりだけど、ホラ…キレ易いと言うか……。

 子持ち様理論で(まく)()てられても、それはそれで疲れそう…」

「そうなんですよね…だから余計に躊躇うと言うか…」

「難しいわね。

 警察は騒音くらいじゃ動いてくれないし。

 何だっけ…民事不介入? 何かそんな言葉なかったっけ? なんでもいいけど、警察は事件が起こらないと動かないからな~。おかげで被害者が絶えないって言うのにね…」


 弥生は肩を落として溜息を吐いた。


「ネットで調べてみたんですけど、一応警察にも窓口はあるみたいなんですよね。でもそれは対症療法と言うか…結局通報した側が恨まれるとか書いてあって」

「こっわ。

 通報されるような事しといて恨むなんて…もう逆恨みもいい所だよね。

 常識が通じないモンスターとか、勘弁して欲しいわ」

「でもまだ3日だし、もう少し様子見るべきですよね。

 引っ越してきたばかりで、子供もテンション上がってるだろうし」


 真柴はテーブルに肘をついて、視線を斜め上へ流す。


「手っ取り早く穏便に…なら弥生が引っ越すのが早いんだろうけど、なんか釈然としないわよね。

 だって弥生が悪い訳じゃないのにさ」

「悪い悪くない以前に、引っ越しするにもお金が…アハハ……はぁ…。

 もう少し、耳栓で頑張りマス…」

「耳栓って……。

 でもまぁ、どうしても耐えられない時は、泊まりに来ていいから。

 ずっと寝不足じゃ身体が持たないわよ」


 そろそろお昼休憩も終わりの時間だ。

 食器とトレーを片付け、午後の仕事に戻る。


 たかが3日されど3日…で身体は重く、ぐったりしていたが、こうして話を聞いて貰えただけでも、少し軽くなった気がする。

 錯覚かもしれないが、そう自分に言い聞かせ、弥生は午後の仕事に戻って行った。




 午後はちょっとした問題があったが、それの対処も終わり、一応今日も無事終わった。

 弥生は散らばっていた書類を片付け、真柴と連れ立って駅へ向かう。


 同じように駅へと向かう帰宅の人波に流されながら、『そういえば』と、真柴が話題を変えた。


「この付近じゃないんだけど、変な事件があったの、知ってる?」

「変な事件??」

「そう。

 事件と言うか、週刊誌のネタだったかなぁ…都市伝説的な?」

「あぁ、週刊誌ってそういうの好きですよね」

「まぁ『売れてナンボ!』って奴だし。

 で、その事件と言うか噂? なんだけど」


 そこで意味深に言葉を切り、真柴は弥生の耳元に顔を寄せる。


「行方不明になるらしいのよ」

「え?」


 一足飛びな言葉に訳が分からず、弥生は首を捻った。


「思い出したんだけど、その噂って、確か…弥生も悩んでる騒音に纏わる話だった気がするのよね」

「………」


 何故かわからないが、弥生はゾクリと背を這うような感覚を覚える。


「ずっと騒音で悩んでた人が、ある時騒音がない事に気付くと、原因の部屋の住人がいなくなってるんですって」


 表情が抜け落ちてしまった弥生に、真柴は気付いていないらしく、話を続けていた。


「それも荷物とか置きっ放しで、夜逃げとかそんなんじゃないって話なのよ。

 なんだか変な話しよね。

 夜逃げは兎も角、逃げるなら騒音被害を受けてる方だろうに、加害者が居なくなるって不思議」


 弥生はふるっと、気付けるように首を振った。


「……その週刊誌って…なんて雑誌です?」






ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。


ブックマークや評価等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。


AI不使用な事もあり、誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>

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