4
何とかいつもの電車に乗る事ができて、遅刻はせずに済んだ。
会社付近は建物が密集していて、近くにコンビニはない。なくはないのだが、かなり遠回りになってしまうので、駅からの通り道にある古い自販機で購入するしかなさそうだ。
ラインナップが微妙…と言うか、少し不思議なので避けたかったが、今日ばかりは仕方ない。
冷たいウーロン茶を選んで購入していると、背中から声が掛った。
「おはよ」
振り返れば、同僚の真柴 千夏がひらひらと手を振りながら近づいてきていた。
同僚と言っても1年先輩にあたる。
仕事はデキる系女子だが、意識高い系と言う訳ではなく、弥生にも気さくに接してくれる良い先輩だ。
「あ、真柴さん、おはようございます」
真柴は弥生の手に握られたペットボトルを見て眉尻を下げてから、直ぐ傍の自販機を胡乱に眺める。
「ま、そのくらいしか選べないわよね」
弥生は苦笑いするしかない。
コーヒーも紅茶もなく、緑茶もないのだ。
あるのはミネラルウォーターと、ウーロン茶、そして何故か牛乳。
その為、社員は大抵マイボトルを持参するか、コンビニやラインナップの豊富な自販機まで遠征し、購入してから出社する。
「ちょっと寝坊しちゃって」
時間通りに起きはしたが、無難な言い訳で誤魔化した。
だが、真柴はずいっと顔を、弥生に近付ける。
「ん~顔色良くないわね。
寝不足?
無理せず…と言いたい所だけど、今日も忙しいだろうしなぁ…って、今はちょっと急ぎましょ」
遅刻するような時間ではなかったが、始業前の雑務を考えればそろそろ急がなければならない。
弥生はウーロン茶を片手に急いだ。
資料作成にコピーに…等々と普段と変わらない、だけど忙しい午前の仕事を乗り切り、弥生はいつものように真柴とお昼に出た。
顔色が沈んだままの弥生に、真柴は社員食堂を提案する。この暑い中、行列に並ぶのはやめておいた方が良いだろうと言う、彼女の気遣いだ。
それにありがたく同意して、空席の目立つ社員食堂へ入った。
食券を購入。
真柴はカツカレー定食、弥生は冷やしうどんにした。
窓から離れたテーブルに、トレーを持って向かう。
「うん、相変わらずレトルトの味だわ。
でもまぁ、社員食堂じゃマシな方よね」
スプーンでカレーを口に運びながら、真柴が苦笑交じりに尋ねてきた。
「それで?
なんだって寝坊? ゲームのし過ぎとか?」
ゲームとアニメが趣味である事がバレているのも困りものだ。ついでにリアル彼氏がいない事も、しっかり知られているので容赦ない。
尤も、現在進行形で趣味の時間なんて取れないでいる。とにかく寝たい…。
「ハハ…ハズレですね」
「あれま…じゃあなんだってそんな寝不足顔?」
「…ん~…その…」
階上の騒音に悩まされています…なんて、聞かされても真柴だって困るだろう…が、弥生は暫し悩んでから、躊躇いがちに悩みを口にした。
「今住んでる団地なんですけど、空いてた上の部屋が、先日埋まったみたいで…」
弥生の言葉に、真柴は『あ~』と微妙な声をあげつつも、察してくれたようだ。
「なるほどね。
どんな人なの?」
「どんなって…。
挨拶もなかったし、まだ引っ越してきてそんなに日が経ってないからわかんないんですけど…。
女性と男性の怒鳴り声と、赤ちゃんの泣き声、後は運動会みたいな音?」
真柴が眉間に皺を寄せた。
「あれま、そっち?
人柄とかじゃなく騒音って事?
そんでもって、顔も知らないけど声や音から推察すると、子供連れの4人だが5人家族って事?」
後程知る事になるが、現時点で家族構成は知らないので、弥生は曖昧に頷く。
「そんなに日が経ってないって、いつごろ越してきたの?
まだ明日も仕事なのに、大丈夫なの?
なんなら今日はうちに泊まる?」
「引っ越してきたのは月曜の昼間じゃないかな…その日の夜から…なので」
弥生は眉尻をさげて薄く笑った。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
本日も20時と23時にも投稿を予定しておりますので、宜しくお願いいたします。
リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。
ブックマークや評価等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
AI不使用な事もあり、誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




