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 いつの間にか、弥生は自分の周囲が真っ暗ではなく、見慣れた自宅だという事に気が付いた。

 さっきまで見ていた光景は夢だったのだろうか…?


 だが、弥生は薄笑いを浮かべた。

 アレが夢ではないと知ってる。

 間もなく上の階は騒がしくなるだろう。何故かそれを確信していた。


 弥生はキッチンに向かい、グラスを手に取る。冷蔵庫から冷えたミネラルウォーターを取り出してグラスに注いだ。

 ゆっくりと飲み干し、ホゥ…と、息を吐きだすが、その表情は変わらず笑みを刻んでいる。




 赤ん坊は警察に保護されている。いずれ児相行きかもしれないが、どちらにせよ、もう戻って来る事はない。


 不気味な放置子も、処理済だと報告があった。

 きっと夜翁が美味しく頂いてくれたのだろう……ぃゃ、もしかすると美味しくなかったかもしれないが、間違いなく戻ってこない。そう確信できる。


 母親…赤い女の末路はさっき見たばかりだ。

 アレで戻ってこれたら、その方が恐ろしい。

 だから戻っては来ない、大丈夫だ。


「あぁ、静かな夜が戻ってくる。

 もう不快で甲高い泣き声も、ねっとりと纏わりつくような子供の声も、キレ散らかした女の声も、きっともう聞く事はない、聞かずに済むんだわ。

 なんて素晴らしい」


 呟きが、自分の耳に甘美な響きを残す。


「後は旦那さん?

 でも……もう叫ばないよね?

 あ…でも、またドアが壊されるかも……」


 スンと表情が抜け落ちる。

 あの男は一人で喚く事はない。これまでなかった。

 子や女が煩いから怒鳴っていただけ。でも、思い込みで殴り込んでは来るかもしれない。


 そう思うと……いや、震えは来ない。

 だってアレの処理も契約に入っていた。保留になっていたのは赤ん坊だけで、残り3人は契約の内だ。

 だから安心する。

 夜翁はきっと逃がしたりしない。ちゃんと契約を遵守してくれると信じられた。


 ニィッと口角が吊り上がる。

 弥生は上の方から、忙しなく響く足音をBGM代わりに、穏やかな気持ちで眠りにつく……明日の為に睡眠は必要だ。


 翌朝になって、遠慮がちにドアをノックする音に玄関へ向かう。

 既に起床していた弥生は、スッキリした表情でドアを開けて出迎えた。


 聞けばやはり、岩田家の奥方が忽然と消えたらしい。

 警察の者も数名居たらしいのに、いつの間にか消えていたのだそうだ。玄関に普段使っているサンダルを残して…。

 それだけでなく財布も鍵も、何一つ持ち出した物はなかったそうだ


 色々と聞かれたが、警察官と言う、これ以上ない証人がいる。

 弥生を始めとした住人に聞いて回ってはいるものの、疑われている訳ではない。愚痴まじりに聞かれた事を答えるだけで、あっさりと解放された。


 見える訳ではないが、ふと真上を見上げる。

 走り回っているのは警官だけで、ドアを破壊した旦那さんの方は戻ってきていないのだろう。聞こえるのは緊張を孕んだ囁くような声ばかり。


 ドアを閉めた弥生は、やっと日常が戻った…と、仕事に出かける準備をし始めた。






ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。


ブックマークやリアクション等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。

ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。


AI不使用な事もあり、誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>

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