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「子供が攫われた。
鍵が閉まってたから、子供は出歩いてない。
きっと4階……まぁ、佐々木さんの事ですなぁ…が、攫ったからやって、朝早うから、お宅のドアをまた叩きまくって通報されよったんですわ」
えーっと謎な文言を聞いた気がする。
「…あの、鍵が閉まってるから攫われた…?
どう言う意味ですか??」
一瞬理解が追い付かなかったのか、増山も、隣の若手刑事もポカンとした顔をしたが、増山の方は直ぐに合点がいったのか、何度も頷いた。
「あぁ、意味不明ですわな。
こっちとしても通報があったら動かん訳にはいかへんで、直ぐ団地に行ってお話を~って言うて、署の方に同行してもろたんですけど……。
その時に説明して貰うまで、こっちもちんぷんかんぷんでしたわ。
えっと…要約すると…いっつも夜中に出歩くときは、ドアの鍵は開けっ放しになってんのに、今朝は鍵掛かってた、おかしい…っちゅう話みたいですわ」
なるほど……?
まぁ、出かける時に、子供一人なら鍵は掛けずに出ていく…と言う事なのだろう。鍵の置き場所を知らないのか、はたまたそんな考えが毛頭ないのかまでは知らないが……。
不用心が過ぎる。
でもまぁ、例え鍵が開いていたとしても、あの一家宅に乗り込む酔狂も、然々居ないだろう。
「せやから、子供が自分の意志で出てったんやない。誰かに攫われた。
で、攫って嫌がらせしてくるんやったら、絶対に佐々木さんや…と…。
まぁ、支離滅裂ですわ」
増山も困ったように言う。
弥生も、トンデモ理論に呆れ返るしかない。
「何…その言い掛かり…。
これが冤罪とか言う奴ですか?
なんで私が、あんな一家の為に犯罪者にならないといけないんですか?」
まずい…感情が爆発しそうだ。
理不尽を重ねられると、感情の方が理性を上回ってしまうのかもしれない。
「佐々木さん、落ち着いて。
こっちもそんなん言い掛かりやって、わかっとります。
せやけどまぁ…だからってなぁんもせん訳にはいかへんで……ほんま申し訳ない」
増山はテーブルについたまま、隣の若手刑事の頭も引っ掴んで、揃って頭を下げた。
大きく深呼吸してから、弥生は吹っ切るように頭を一振りする。
増山はその様子に、落ち着いてくれたようだと、あからさまにホッとした表情を浮かべた。
「因縁付けも、あそこまでいくと正気を疑いますけど。
けど、奇妙っちゃぁ奇妙な事もあるんですわ」
ぽつりと零された言葉に、弥生は首を傾げる。
「奇妙…ですか?」
「えぇ。
誘拐や騒ぐんで、当然岩田さん宅も調べたんですが、なんでか大きな鳥の羽が落ちてたんですわ。
何の羽かは今調べてるとこなんですけど、岩田さん宅にペットは居らんかったし……まぁ、ペット飼うにもあんな部屋ではちょっと…」
増山は言葉を濁したが、よくよく聞くと、かなりな汚部屋らしい。
洗濯物は山積み。
ラーメンのカップやお弁当の残骸がシンクやゴミ箱からも溢れていて、赤ちゃんはアレルギーか虫刺されかわからないが、肌は赤い発疹が数多く見られたという。
流石にこれは…と思ったようで、現在赤ちゃんは警察が保護しているらしい。
このまま家に戻せないようなら児相に…と言うパターンも検討中との事だ。
そこまで喋って、増山は顔を歪めた。
「すんません…ちょっと喋りすぎてしまいましたわ。
色々と口外はせんとってくれると助かります」
そう言って、テーブルに額を擦りつけた。
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