↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】ご相談、承ります  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/47

30


 川原宅に着き、雑談で時間を潰しながら、修理が始まるのを待つ事になった。


 冷たい麦茶を貰って、全員でほぅっと息を吐く。

 顔色の悪くなった弥生を気遣ってか、話題は最近のニュースや流行の話をメインにしてくれて、特に商店街に新しく出来た洋菓子店はとても心惹かれる。

 弥生も気分が落ち着き、折角だから真柴へのお土産はそれにしようと考えた。


 扉が直れば、真柴宅に泊めて貰わずとも大丈夫だと思うのだが、正直言うとまだ怖い。そんな気配を察したのだろう…今日もう一日くらい泊って行けという言葉を頂戴していた。

 情けない話だが、先日から赤ん坊の泣き声や子供の声、他には赤い爪なんかを見てしまうと、それだけで少し緊張してしまう。


 非常時だからと言う真柴の言葉に、後1日だけ甘えさせて貰おうと思う。


 そうこうしていると、弥生の携帯が鳴った。

 画面には新しく登録しておいた自治会長の名前が表示されている。


 スマホの通話ボタンを押して耳に当てると、修理業者が来たらしい。

 川原達にそれを告げてから廊下にでると、弥生は404号室の隣…自分の部屋の前に立った。

 少しすると階段の方から複数の足音が聞こえる。

 足音にも少し緊張してしまうが、見えた人が作業着姿だったのでホッと力が抜けた。


 だがそれに続いて姿を見せた人の顔に、小さく息を呑んだ。

 顔半分をガーゼで覆った岡元の姿は、本当に痛々しい。

 弥生は挨拶もそこそこに、岡元に駆け寄った。


「岡元さん……なんて酷い…大丈夫ですか?」


 大丈夫な訳がない…そんな冷静な突っ込みを入れてしまいそうになるが、他に言葉が見つからない。


「あぁ、佐々木さん。

 いやぁ、見た目が酷いだけで、ピンピンしてますわ」


 そう言いながらも、痛みに顔が歪んでいる。


「その…すみません」


 思わず謝ってしまうが、岡元も『佐々木さんのせいやあらへんし』と笑い飛ばす。

 その後は『兎に角修理を』と、扉の修理を先にして貰う。考えれば修理業者の人達だって暇な訳ではない。


 ドアのへこみを確認していた業者の話では、何とか夕方くらいには終わるだろうとの事だった。

 時間がかなりかかるし、岡元も戻って行った。

 弥生も修理の間は自分の家にいるしかなく、部屋に入って鞄を置く。


 自分の部屋なのに、妙に落ち着かない。

 散々な目に遭ったから仕方ないのかもしれないが、思わず溜息が零れた。


 弥生は思い立って冷蔵庫へ向かう。

 急に真柴の家に泊まる事になって数日……冷蔵庫の中身が気になっていたのだ。


 開けてみれば、野菜は一部痛んでいた。

 流石に全部捨てるのはもったいないので、痛んだ部分を除き、下処理をして冷凍庫へ放り込む。

 他にも冷凍庫へ入れられそうなものは、全部放り込んで、ちょっと臭いがおかしくなっているモノ等は容赦なく捨てた。

 後、ゴミ出しが出来ていないので、ビニールを二重にするなどの対策を講じる。


 その間、やはりと言うか……5階からの音は相変わらずだった。

 まぁ今日は修理で、弥生の部屋からも騒音が出ているからお互い様である。


 暫くしてお昼になり、弥生は賞味期限の迫ったパンを見つけ、消費する事にした。もそもそと齧りながらドアの方で動く人を見る。

 ドアの修理なんて初めて見るが、存外時間がかかるのだな…とズレた事を考えながらぼんやりと見つめた。

 あぁいう職人の作業と言うのは、いつまでも眺めていられるのが不思議である。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。