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ドアの修繕は水曜日の午前中となった…と、自治会長から折り返しの連絡が入った。
火曜日は上司にそれを報告。
仕事を乗り切って迎えた水曜日…朝は仕事に向かう真柴と一緒に電車に乗った。そして真柴は仕事へ、弥生はそのまま団地へと向かった。
午前中だが9時以降と聞いているので、十分間に合う。
自宅の最寄り駅に着く。
朝に出勤ではなく帰路と言うのが新鮮だ。
団地が見えてきた。
学校へ走る子供達の姿を見送りつつ2番棟前まで来ると、見慣れた光景に小さく笑みが浮かぶ。
ポスト前で屯ってる3雀の姿で、ホッとする日が来るとは思わなかった。お喋り雀達の方も気が付いたようで、そのうちの一人である川原が大きく手を振っている。
週末は留守だったようだが、週が変わって戻ってきていたようだ。仕事もあるのだし、当然と言われればその通りである。
「弥生ちゃん!!
聞いたわよ…もう大変やったね…怪我とかないん?」
「あは、お久しぶりです。
えぇまぁ……怖い思いはしましたけど、怪我は別に…」
追いついた早耳も、話に加わる。
「留守にしてて良かったわよぉ~。
あんなんトラウマもんやもの。だいたいあのドア、凹ませられるやなんて思わへんだわ。どんだけ馬鹿力やいうんよねぇ…」
早耳の言う通りで、少々の事ではビクともしなさそうな扉なのに、べっこり凹んでいた。思わずゾッとしてしまった事は言うまでもない。
その後、自治会長不肖の話も聞いたが、思ったより酷い事になっていた様だ。
電話では大丈夫そうだったので安心していたのだが、顔半分が腫れて痛々しい姿になっているという。
「どうしよう……お見舞いにいかないと…」
弥生の萎れた声に、川原が口を開いた。
「お見舞いやったら、岡元さんは羊羹好きやった思うわ。
まぁ口ン中も切れてるやろから、日持ちするんがええかもなぁ。
でも、弥生ちゃんが悪いんやないから、そこは間違えたらあかんよ? 悪いんは505号室一家で、岡元さん殴ったんはそこの旦那さんなんやから!
ほんま、許されへんわ……毎日煩いし、赤ん坊以外はほんまに厄介やし」
忌々し気に呟く川原に、弥生は目を見開いた。
「は…?
えっと、警察に捕まったんですよね?…その…旦那さんは…。
なのにまだ…?」
「そんなん、堪えた様子がないんやわ。全然懲りてへんって言うか……。
赤ん坊の泣き声は、まぁしゃぁないけど……子供は相変わらず傍若無人…あっと厚顔無恥の方があってる?」
弥生の呟きに反応した早耳が続ける。
「まぁ、どっちゃでもええわ。
奥さんも相変わらず引き籠ってたかおもたら、突然因縁付けてくるし…もう、どっか行って欲しいわ」
憮然と言う早耳に、野水が眉尻を下げた。
「まぁまぁ、ここで熱うなっても仕方ないんやし…落ち着いて」
「それはそうやね…って、また…」
野水の言葉に、大きく深呼吸して落ち着こうとした早耳だったが、何に気付いたのか、急に目を吊り上げた。
早耳の視線を辿った先……そこに居たのは、岩本家の娘…あの不気味な子供だった。
こっちをじっと見てくる胡乱な視線に、弥生は一瞬身が竦みそうになる。
それに気付いたのか、川原が弥生の背中に手を添えた。
「ちょ…弥生ちゃん大丈夫?
ちょっと家行こか…旦那はもう仕事に行ったし、今日はパートもあらへんから。
立ち話より、修理の人が来るまで家に居った方がええわ。
ま…家に来たら来たで、斜め上が煩いやろけどな」
お道化て言う川原に、血の気の引いた顔で、弥生は弱々しく笑った。
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