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暫く呼び出し音が鳴っているのを聞きながら待っていると、相手が出た。
『もしもし』
「もしもし、すみません…着信があったのでお電話させて頂いたのですが……その、すみません。何方かわからず…」
『あぁ!!
えっと、佐々木さん?
自治会長しとる岡元ですわ。急にすんません。
そんで、今、大丈夫でっしゃろか?』
どうやら発信元は自治会長だったようだ。
話を聞くと、やはりドアの修繕についてだった。立ち合いが必要らしく、都合の良い日を聞かれる。
平日の方が良いだろうが、そうなると会社を休まねばならない。
少し返事は待って貰うしかなさそうだが、そう言うと、岡元は快諾してくれた。
『そりゃそやわ。
佐々木さんもお仕事があんねやから。そしたら、ちょっと手間取らせますけど、都合のいい日が決まったら、またこの番号に電話してもろてええですか?
こっちはいつでも構わへんから。出られへん時は留守録にでも入れとってもろて』
用件が一通り終わった所で、弥生は体調の方を気遣った。確か岩田に殴られたと聞いた記憶がある。
声からは元気そうだが、被害届けも出したようだし、怪我が酷くなければ良いのだが…。
『あぁ、まぁなんとか。
ちょいと腫れとりますがな、喋ったりするくらいは大丈夫ですわ。
気にしてもろて、ありがとさんや』
返事に安堵して電話を切ると、弥生も会社へ戻った。
こうなると上司に色々と話さなければならないだろう。あまり気は進まないが、有給を纏まって使わせて貰わなければならないかもしれない。それには事情を話しておくのが一番だ。
真柴に声をかけてから上司のデスクに近付く。
事情を知っているのは、現在真柴だけなので、終業後に相談したい事があるとだけ言うと、上司は首を捻りながらも了承してくれた。
仕事が終わり、皆が帰って行く。
真柴は一度弥生を振り返り、意味ありげに頷いてから出て行った。
と言うのも、弥生が自宅――扉がボコられた団地の部屋の方に帰るのは危ないと言い、今日も泊まるよう言ってくれたのだ。
その為、駅近くのカフェで待ち合わせる事になっている。
その真柴も見送ってから、帰り支度を殊更ゆっくりとしている上司に近付いた。
「すみません、お時間いただいて…」
「いやいや、そんでどないしたんや?」
これまでの事をざっくりと話す。
すると見る見るうちに上司の顔色が悪くなっていった。
「えらい目におうたな……」
「はい…」
「事情は分かった。
そないな事情やったら休みの方はどないかするから、ちゃんとドアは修繕して貰うんやで。
せやなぁ…一刻も早い方がええんやろけど、ちょっと明日は…」
手帳と壁に掛けられたホワイトボードを見ながら、上司が少し眉尻を下げた。
「だ、大丈夫です。
えっと…じゃあ水曜日以降なら、大丈夫そうですか?」
「あぁ、すまんなぁ。
水曜以降やったら、なんとか……悪いんやけど、明日は出勤して貰えるか?」
「はい」
最後に申し訳ないと頭を下げる弥生に、上司は手を横に振る。
「災難なんは佐々木さんの方やろ。
ほんま、いくら真夏日続きでぼうっとする言うても、さすがにそれは許せんなぁ。常識ないんはあかんわ。
あぁ、そんで暫くは真柴さん家におるんやね?」
「はい。
ほんと…申し訳ないんですけど、ドアが元に戻るまでは危ないからと誘って貰えて……感謝してます」
「うんうん、その方がええ。
そんじゃ、気ぃ付けて帰るんやで」
上司に頭を下げてから会社を出て、自治会長へと電話を入れる。
水曜日以降なら…と告げると、自治会長の方はそれで工務店なりと調整すると言ってくれた。
問題は何一つとして解決していないが、少なくとも扉の修繕が終われば真柴にこれ以上の迷惑を掛けずに済む。
そう考えて、弥生は真柴の待つカフェへ急いだ。
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