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『御気分を害してしまったようで申し訳ありません。
こちらは『セイジョウ社』でございます。
佐々木様の担当となりました夜翁 と申します』
弥生の脳裏に『?マーク』が飛び交う。
(せい…じょ、う…?
何それ……取引先にそんな名前の会社、なかった…よね?
それに担当って? 私は営業じゃないし、何より『よおう』なんて名前にも心当たりはない……。
一体どう言う事??)
訳が分からず、弥生は恐る恐る口を開いた。
「あの……間違い電話じゃないですか…?
そちらの社名も存じませんし、担当って……思い当たる事がないんですけど…」
こっちの名前を確認してきた以上、間違い電話の可能性はかなり低い。
でも、悪戯目的じゃないのなら、間違いだとしか思えなかった。
『きっと見落とされているんでしょう。
先程チラシをご検討くださいましたよね?』
『チラシ』と言う単語で、弥生はハッとする。
しかし……
(待て待て、落ち着いて。
おかしいって……まずこっちから電話したならわかる。
でも、どうやって私の電話番号を知ったの? 相手の方から電話してきてるのよ?
何よりチラシを検討って……真柴さんにもまだ話してないのに?
第一、最初の問い合わせの電話は、個人情報は明かさずに、公衆電話とかからするつもりだった。まさか無意識に電話してた?
そんな筈……)
ここ最近の寝不足が響いてか、ありえない話なのに納得してしまいそうになる。
追い詰められた挙句の夢遊病的行動…等と考えそうになって、やはりナイナイと首を横に振った。
「すみません。
やはり人違いだと思います。
それにこんな時間にって、失礼極まりないでしょう?」
『申し訳ございません。
ご検討いただけたと、こちらが把握したのがついさっきでしたので、急いでお電話させて頂いたのですが…。
それで、どうでしょう?
詳しいお話を続けさせて頂いてもよろしいでしょうか?』
電話先の相手――よおう…とか言ったか…声からすると女性のようだが、彼女は弥生の言葉も聞いてないし、困惑も気にしてくれない。
「詳しい話って……」
『はい。
お困りの件は最初に騒音…で、ございますよね?』
ドクンと心臓が嫌な音を立てた。
いや、実際にそんなことはないのだろうが、やけに自分の耳に大きく聞こえた気がしたのだ。
「何でそれを……」
つくづく押しに弱いのかもしれない。
怪しさ満点の電話なのに、切る事が出来なくなっている。
『お客様の御希望を把握するのは、当社といたしましては当たり前の事ですので。
あぁ、守秘義務もきちんと定められておりますので、その点も御安心下さい。
それで、問題の相手は……佐々木様の御宅、その真上の部屋でございましたね?』
「ヒッ!?」
何も言っていない。
それなのに、そこまで掴まれている事に戦慄を覚えた。
「な…なんで、それ……」
相手もやっと弥生の戸惑いというか…慄きを感じたようで、声に焦りの色が乗った。
『あぁ、驚かせてしまったようで申し訳ございません。
当社の特色と言いますか……その…企業秘密なので詳しくは話せないのですが…ご依頼主様の状況は、ある程度把握してからお電話させて頂いております。それはそれとして、こちらが把握した情報は、決して悪用する事はございません。
契約いただけましたら、その際にそれらについても言及した契約書をお渡しいたしますので、どうぞ御安心下さい』
何を以て安心できるというのか……弥生にはさっぱりわからない。
「いや、あの……でも、ですね…」
『先ずは続けさせていただきますね』
結局、何も聞いてないというか…そのつもりもないのだろう。
とても営業に向いていると言える、かもしれない…。
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