18
弥生は、小さく身動いだ。
微かに瞼が震え、薄く開く。
何度か瞬きを繰り返しているうちに、ぼんやりとしていた視界がクリアになった。
静かだ。
静けさの中に、夜の気配が広がっている。
久しぶりの感覚に、妙な感動が湧き上がる。
(……あぁ、なんて気持ちのいい夜なんだろう…)
ゆっくりと身を起こし、周囲を見回した。
テレビは消えている。いつの間に消したのか…弥生の記憶には消した記憶なんてない。真柴が消してくれたのだろうと思うが、記憶にある彼女の座り位置そのままに、ごろ寝をしている真柴を見つけた。
テーブルの上も、全く片付いていない。
食べ残し・飲み残しはないようだが、汚れた皿やトレイ、箸やグラスが収まり悪くテーブルの上に残されていた。
弥生の口元にふっと笑みが浮かぶ。
ありふれた風景に笑みが零れたのだ。
そんな…何の変哲もない日常さえ、最近は御無沙汰だった。
(二人して寝落ちしちゃったみたい。
あぁ…こんな日常が、本当に嬉しい。
あ、でも、流石に少し片づけておいた方がいいよね)
酔いがまだ残っているようで、少しふらつきながらゆっくりと立ち上がる。
ぐるんと肩を回してから伸びあがった。
時計を見れば深夜の3時30分。
長い時間寝落ちした訳ではないようだが、深く眠れたらしく、頭はすっきりしていた。
食器類をシンクに運ぶ。
眠っている真柴を起こさないように、足音に気を付けながら運び終えると、洗い始めた。
こんなに落ち着いて洗い物が出来る自分に、やはり感動する。
最近は慢性的な寝不足に、余裕がなくなっていたのを痛感した。
洗い終えた食器やグラスを、乾いた布巾で磨き上げる事さえ楽しいと感じてしまう。
最後に自分の手を洗い、ついでとばかりにトイレに向かった。
すっきりとしてから、二度寝と洒落込むか…と、テーブルを退かしていると、突然スマホが鳴った。
コール音は弥生が設定した音で、多分だが、真柴のスマホが鳴っている訳ではないと思う。
こんな夜中に電話してくるなんて、身内に何かあったのかもしれない。
弥生は慌てて鞄を漁り、スマホを取り出した。
やはり自分のスマホに着信があったようだ。
慌てていたせいで、確認せずに通話ボタンを押してしまう。
「はい!」
あまりの勢いに、相手が気圧されてしまったのか、一瞬の沈黙が落ちる。
「……あの…もしもし…?」
『失礼しました。
夜分遅くに申し訳ないのですが、そちら佐々木 弥生様のお電話で間違いございませんか?』
これまで緊急の電話なんて受けた事はないが、続く言葉に病院名とか警察とかを予想して、弥生はゴクリと喉を鳴らした。
「……はい。
佐々木です。佐々木 弥生……あの、何があったんでしょう?
病院とかですか?」
前のめり気味に聞いてしまう。
声のボリュームも上がりかけ、それにハッと気づいて、弥生は眠る真柴の様子を窺った。良かった…起こしてはいないようだ。
弥生は真柴に背を向けるように位置取り、通話口を手で囲う様にして声を潜める。
「すみません…矢継ぎ早に…」
『いえいえ、大丈夫ですよ』
ここで、弥生は少し疑問を感じる。
病院や警察からの緊急電話なら、もっと急ぐというか…焦るように話すのではないだろうか?…と。
いや、先にも言ったように、これまでの人生で緊急電話なんて受けた経験がないので断言は出来ないのだが、微かな違和感に眉根が寄った。
「……あの…どちら様ですか?」
『大変失礼しました。
そうですよね、時間が時間ですし、緊急の電話かと思いますよね』
他人事な言い方に、弥生はカチンとくる。
「悪戯ですか!?
気分が悪い…切りますね」
そう言って通話を終えようとしたが、相手の言葉に手が止まった。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。
ブックマークやリアクション等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。
AI不使用な事もあり、誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




