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「いやぁ、参ったわ…。

 こんな越してきはった早々に苦情てなぁ…」


 そう言って頭頂部が薄くなった頭を掻く自治会長に、弥生が受けている被害を尋ねられた。


 件の一家と同じ階には、現在早耳家のみで、そこは確認済み。

 4階も他の部屋は聞き取りが終わり、残すは弥生だけになっていたようだ。

 聞かれるまま、上の階から降り注ぐ騒音の話をする。

 弥生は昼間は仕事で不在になっているので、夜、帰宅してからの被害になるが、話すうちに自治会長の表情が曇っていく。


「ん~…勝手に人様の家に上がり込んだりするんは、流石に注意できる思うんやけど、赤ん坊の夜泣きとかはなぁ……あとは聞く限り、子供のいたずらを(いさ)めとるとか、喧嘩の声って感じやね。

 これはあんまし強うは言えんかもやわ…お互い様言われたら、まぁ…そこはなぁ…」


 確かに、大音量で音楽を流す等なら苦情も入れやすいが…と言う感じだろう。

 それはそうだな…と、弥生も思う。

 そうでなければ、弥生だって耳栓を買ったり、自衛に努めて我慢したりしていない。


 警察や自治体に訴えるにしても、まだ4日程度の事では、なぁなぁで済まされる可能性も高い。とは言え、こういった集合住宅で、騒音と言うのは根深い問題だ。過去には殺人事件にまで発展した事例もあるのだから。


「他の人も、音に関してはおんなじような感じやわ。

 せやけど、多分佐々木さん家が一番大変そうやけどなぁ…この土日がどうなるか…ちょっと怖いわ。

 兎に角今夜は、子供が他人の家に勝手に入り込む事について、注意しとこ思うてて、ついでに騒音についてもちらっと言うてみるわ。

 それでマシになったらええんやけどなぁ……」


 自治会長さんも困ったように力なく笑う。

 思いがけない邂逅ではあったが、報告も出来たし、何より騒音については難しくとも、注意しに行ってくれるのであれば、それは一歩前進と思って良いだろう。

 凸ってくれた雀淑女達に感謝だ。


 ドアポストに入れたメモは、訪問した事、都合の良い日時を教えてくれ…等と書いたものらしく、話が出来た事で不要になったから、捨てておいてくれと言われる。

 去って行く自治会長を見送ってから、弥生は部屋に入って施錠した。

 昨夜の『あ~け~て~事件』もあったので、ドアチェーンも掛けておく。


 スーパーで買って来た総菜をテーブルに並べ、冷えた缶ビールを1本。それ以外のお酒は、常温保存のモノ以外は冷蔵庫に入れておく。他の食材、総菜も一旦は冷蔵庫にINだ。

 (もっぱ)ら休日専用となりつつあったテレビも付けて、一人酒宴と洒落込むとしよう。


 バラエティ番組が始まり、缶ビール片手に眺めていると、上の方から怒声が響いてきた。

 思わず弥生は天井を見上げる。

 見上げた所で何が見える訳でもないのだが、恐らく自治会長が話しに行ったのではないだろうか。


 少し耳をすませば『ウチだけじゃない』『子供は皆と仲良くしようとしてるだけ』『細かい事に煩い』等々…常識とは…と、つい聞いてみたくなるような言葉が飛び出しているようだ。

 尤も聞こえるのは女性の声だけで、感情的になっているのは上の部屋の奥様だけ…なのだろう。


 暫くして静かになり…あ~泣き声は時折響くので、女性の怒声は聞こえなくなった…と限定すべきかもしれない。

 なんにせよ、あの様子ではマシになるかも…なんて期待は出来そうにない。

 今の所、弥生は主に騒音…昨夜の恐怖体験は、実害があった訳ではないのでノーカンとするが、この分だと突入被害に遭遇する日も近いかもしれない。

 はぁ…と、無意識に溜息が零れ落ちていた。


 缶ビールが空になり、もう一本開けちゃうか…と、冷蔵庫に向かおうと立ったその時だ。


 

 ピンポーン


 気の抜けるようなドアチャイムの音が響いた。







ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。


ブックマークやリアクション等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。

ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。


AI不使用な事もあり、誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>

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