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今日も今日とて、雀淑女達がポスト近くに集っている。
その前を会釈しながら走り抜けようとすると、川原が慌てて声を掛けてきた。
「昨夜はゴメン!!
煩かったやろ!!」
ゆっくり返事をしたかったが、電車の時間がある為、駆ける速度を落として振り返りながら…
「いえ、ぜんぜん!
反対にありがとうございました!!」
そう叫び、ぺこりと頭だけ下げて、弥生は再び速度を上げた。
小さくなる弥生の背中を見送っていると、珍しく野水が口火を切った。
「どないしたの?
煩かったって…」
川原が眉尻を下げて、情けなく話し出す。
「あ~昨晩、ちょっと…ハハ…」
誤魔化したい訳ではなさそうだが、どう言えばいいかと悩む空気が伝わってくる。
その空気を読んでか読まずか、早耳がパッと話し出した。
「昨夜って、あれでしょ?
新しく引っ越してきた家の子」
早耳の言葉に、少々悪意が入り込んでも大丈夫そうだと思ったのか、あからさまにホッとしたように川原が口を開いた。
「…そうなのよ。
夜中の足音はまぁ…なんやけど、昨晩はとうとうドア叩いてきたりで、もうキレそうなんよ…って言うか、昨晩はキレちゃった」
川原はてへっと肩を竦めて笑う。
だが、すぐにズンを表情を消し、声を潜めた。
「早耳さんは隣って訳じゃないけど、同じ階やもんね…被害多そうやけど、実際はどうなん?」
「よくぞ聞いてくれました!
此間、上の兄ちゃんが学校から帰ってきた時に、するっとドアの隙間から入って来よってな…もう、最悪!
土足のまんま上がってきよるわ、冷蔵庫漁りよるわで、どえらい怒鳴ってしもた。
でもそのおかげか、昨日は来へんだわ」
野水が目を丸くしている横で、川原がうんうんを頷いている。
「やっぱしなぁ。
あの子、最近流行の放置子言う奴ちゃう?」
「放置子て……でも的を射てる言い方や思うわ。
あの子の傍に、お母ちゃんらしき人の姿って見た事ないし」
視線が早耳に集中する。
「実際、どんな人なん?
アタシん所は4階やから、挨拶もなくって…だからどんな人なんか知らんのやけど」
川原の問いを受けて、早耳が話す。
「引っ越しの挨拶?
あらへんわよ、そんなん。
せやから、ちょっと絡みにくい言うか……注意もねぇ」
「えぇ!?
同じ階の家にも挨拶なして……。
でも…やっぱし、一回ガツンとやらなあかんかったんやね。
昨晩はあんまりにも煩くって、アタシも怒鳴ったんやけど……。
でも一番の被害は弥生ちゃんやったんよ」
「えぇ!?
そうなん?」
早耳が直ぐに食いつく。
「弥生ちゃん家のドア叩いて、『あ~け~て~』て……」
声真似になっていない真似をまじえ、川原が忌々しそうに舌打ちする。
「はっきし言うて、あれ、すっごい怖かった思うわ。
隣の部屋で聞いてただけでも、ゾッとしたもん」
「う~わぁぁ~~……それは…」
早耳が、大袈裟に自分で自分の腕を擦った。
「いい加減夜も更けた頃合いに、子供特有の舌ったらずな喋り方で、あんなん言われたら流石に大人でもビビッてまうって…。
弥生ちゃん、目の下のクマ…更に酷なってたなぁ……」
「まだ越してきはって4日目くらいやなかった?
ちょっと困るわねぇ…自治会長さんに相談してみる?」
早耳の仕草に肩を竦めながら続ける川原だったが、野水の提案に考え込む。
「どうやろ。
野水さんの言うように、まだ4日目やしなぁ。
あ~…でも、耳に入れといたほうがいいかもしれんね。
ウチ、明日ダンナが帰ってきたら義実家に出掛けなあかんから、報告しっぱなしになってまうけど」
川原が頷くと、早耳も同意した。
「予定があるんはしゃぁないわ。
せやけど、川原さんの義実家って言うと…あぁ、お酒の美味しい米どころやなかった? 遠いわねぇ」
「そうそう、夜から車走らせてなんて、勘弁して欲しいんやけどね」
「お疲れさんやわ。
せやったら、尚更はよ耳に入れときましょ。
報告実績つくっとかんと!
ほな善は急げ。自治会長さん家にGОよ、GО!」
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