表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/36

第5話 黒井姉妹とアイドル達。

 2週間の訓練を終えていよいよ配信が始まった!

 亜里(あり)は三人分の配信を同時視聴を行い、彼女達を見守る。


 「あら? どうしたのかしら?」


 久留麻(くるま)茶菓(さか)瑠璃目(るりめ)(はく)の配信は何事もなくスタートしたのだが、 背黄青(せきせい)音呼(いんこ) だけ配信がスタートしてからまだ一言も声を出さずに固まっている。


 どうやらガチガチに緊張している様子で、コメントを目で追いながら「お水飲む」と言って息を切らしながら水を飲んでいた。

 ようやく自己紹介に移ったかと思えば息が絶え絶えで、緊張から過呼吸に陥ってしまっているのがはっきりとわかる。


 コメント欄が応援と批判メッセージが流れていき、それを目で追いながら何かしゃべろうとして、言葉に詰まっては水を飲んでいた。


 元々陽気なオウムであった二人はおしゃべり上手で配信に問題はない。

 亜里(あり)は「仕方ないわね」と呟いた後、マネージャールームから出て行き、音呼(いんこ)の配信ルームのドアをノックした。


 しばらくしても返事のなかったので、部屋のドアを開き椅子に座っている音呼(いんこ)の後ろに立ったのだが、音呼(いんこ)は背後に亜里(あり)がいる事に気付いていない様子。


 亜里(あり)は驚かせない様に優しくそっと両肩に手を置くと、音呼(いんこ)の肩が強張り「ピャーピャー」と甲高い奇声を上げて椅子から飛び跳ねた。

 どうやら驚かせてしまったようで、亜里(あり)を見つめてじっと固まってしまっている。


 亜里(あり)は優しい声色で「音呼(いんこ)ちゃん、大丈夫よー」と声を掛けながら音呼(いんこ)を座らせ、頭を撫でながら「音呼(いんこ)ちゃん、配信頑張ろうね」と声を掛けた。

 亜里(あり)が囁きながら「音呼(いんこ)ちゃん、もう一回自己紹介してみようか」と言うと音呼(いんこ)は再び自己紹介を始める。


 「あた、私様(あたくしさま)背黄青(せきせい)音呼(いんこ)。 生粋のロックンローラーである私様(あたくしさま)糞野郎共(最高のファン)の為に配信してやる。 しっかりと刮目(かつもく)しやがれっす」

 「よくできたねー、偉いねー」


 亜里(あり)がそう言ってしっかりヨシヨシして褒めると、無表情だった音呼(いんこ)の表情が柔らかくなり、笑みを零し始める。


 設定に無理があると言ったコメントが多く流れるが、気にせず亜里(あり)音呼(いんこ)に配信を続けるよう(うなが)す。


 少し調子が戻って来たのか、音呼(いんこ)の重々しかった口調が軽くなり、軽快に話を始める。

 他の二人同様、音呼(いんこ)も元々おしゃべりするのが大好きだったので、まだ緊張は抜け切れていなかったが、亜里(あり)が後ろで見守る中、配信は順調に進んでいく。


 途中、コメントで下着の色を聞かれて、音呼(いんこ)がそれを確認しようとするなどのハプニングもあったが、無事に初配信を終えるにまで至る事が出来た。


 三人共メンタルさえ沈んでいなければ問題なく配信が出来ると判断して、亜里(あり)は反省会などはせず、軽いミーティングを三人としてマネージャールームへと帰還する。


 亜里(あり)は休憩をせず、三人分のアーカイブをチェックする。


 久留麻(くるま)茶菓(さか)はリスナーが大好きで、ほぼ全てのコメントに即答で返事をしていて、アカペラで歌っている際にも歌いながらメロディーを崩す事なく返事をするなどの芸当も披露していた。


 「登録者数も増え続けているし、明日には収益化出来そうね。 素晴らしい才能だわ。 まるで、インターネットアイドルになる為に生まれてきた存在のよう」


 いや、本当に凄いのは彼女を見つけだし、その役割を与えた総督閣下だろう。

 それに私は今、充実感に満たされている……。

 きっと、総督閣下の中では私もパズルのピースの一部に過ぎないのだろう。


 「久留麻(くるま)茶菓(さか)は何の問題もないとして、瑠璃目(るりめ)(はく)も問題なさそうね」


 瑠璃目(るりめ)(はく)は丁寧な言葉使いで、他二人の話しをよく話題にだしている。

 二人の自慢やエピソードを語る彼女は、自分が主役じゃなくてもよく、大好きな二人の事を支えとなる事を望んでいる様子であった。


 「献身的(けんしんてき)で謙虚な性格。 久留麻(くるま)茶菓(さか)程は配信者に向いている性格とは言えないけど、本人のポテンシャルは高い。 爆発力は劣るけど、滲み出る性格の良さが彼女の強みね。 登録者数も増え続けているし明日には瑠璃目(るりめ)(はく)も収益化できるわね」


 背黄青(せきせい)音呼(いんこ)に関しては、一緒に配信していたので特に問題は無い事は把握している。

 明日からは一人で配信をする事になるので、その点は少し心配ではあると亜里(あり)は考える。

 他二人と違い、妙な言い回しや専門用語のような言葉も使ってるので、リスナーのノリも妙な事になってきている。


 「(ののし)る様な発言をしたり愛していると言ったり…… 私ももう少し学ぶ必要がありそうね。 なぜか登録者数も瑠璃目(るりめ)(はく)よりも伸びてるし……」


 配信の完成度と人気は比例しないのだと亜里(あり)は学ぶ。

 そして、音呼(いんこ)のリスナーの間では、亜里(あり)がママやお母さんで定着しているのが少し気がかりであった。

 

 「そっちも大変そー。 亜里(あり)もママになっちゃったのねー」

 「私もって事は庵途(あんと)もそう呼ばれてるのかしら?」


 「ええ、そうよー。 今のところ、亜里(あり)音呼(いんこ)ちゃん一人のママだけど私は…… 二人のママなのよー」

 「二人の? ええっと…… 相談には乗るわよ?」


 「あの二人ルックスはいいんだけどー、そっちと違って二人共馬鹿なのよ。 駝鳥野(だちょうの)鳳五郎(ほうごろう)は筋肉が見たいって言われて下まで脱ぎそうになるしー、院堂(いんどう)孔雀(くじゃく)の方はナルシストだから自分から脱ぎ出すしー」

 「そっちはそっちで大変そうね。 配信自体は上手くいったの?」


 「一応大成功。 でも、あの二人に任せてたらいつチャンネルを停止させられるかわからないしー、ちゃんと見てあげる必要があるわー」

 「そうなのね。 あら? メールフォームから沢山メッセージが届いてるけど……」


 「ああ、殺害予告ね。 私も見たんだけどー、マネージャーをしている私に嫉妬してるリスナーが多いみたいなのよねー。 相手にするつもりもないし、放っておいていいわよー」

 「そう…… 私とあなたのアイドルでコラボとかはしない方が良さそうね」


 「間違いないわー。 ねえ、亜里(あり)。 総督閣下はそれなりに稼げる様になればいいって言ってたけどー、私達ならもう少し上を目指せそうじゃない?」

 「ええ、出来ると思うわ。 愚痴を言う割に庵途(あんと)もやりがいを感じてるみたいね」


 「そうなのよー。 次はこうしよう、ああしようって、今でも頭の中でグルグルと考えてる所よー。 このままの勢いで成長するのなら、総督閣下に頼んでもう少しアイドル達を増やして貰えるように進言するつもりー」

 「総督閣下であれば、次のアイドルも有望な人材を連れて来てくれるでしょうね。 でも、私達の目的はあくまで世界征服。 総督閣下がこの事業を拡張していくとは思えないわ」


 「そこは私達の頑張りしだいでしょー。 私達が成果をだせばきっと総督閣下はこの事業を応援してくれるって私は思ってる」

 「そうだと良いわね」


 黒井亜里(あり)は心の底から、この仕事だけに没頭したい。

 そう思っていた。

 何故ならこの仕事にやりがいを感じる以上に、美津姫(みつひめ)うららから感じ取れる闇を恐れていたからであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ