第4話 アイドル怪人と悪者怪人!
秘密基地へと戻ってきたうららは、早速2匹のオウムとセキセイインコのピーちゃんを【人型怪人】として生み出し、それぞれに役割と名前を付けた。
跪いていた彼女達は立ち上がり、それぞれうららに向けて感謝の気持ちを述べる。
まずはクルマサカオウムの久留麻茶菓。
真っ黒でつぶらな瞳は大きく、淡い桃色の長髪で、身長は170㎝。
表情が明るく豊かで、見た目も中身も元気いっぱいの女の子である。
「マスター! 素敵な役割を与えてくれてありがと! 茶菓、一生懸命頑張るから! ずぅーっと、ずぅーっと! よろしくだからね!」
次にルリメタイハクオウムの瑠璃目白。
とても鮮やかな蒼瞳と外側に跳ねた真っ白なショートカットの髪が特徴的で、身長は176㎝。
見た目の印象はクールビューティーなのだが、性格は非常に温厚でゆるふわ系である。
「私は今、とても幸せで胸の中がいっぱいです! マスター、私達を産んでくれて、そしてアイドルと言う素敵なお仕事を与えてくれてありがとうございます!」
最後にセキセイインコの背黄青音呼。
海の様に深い青色をした髪は、束ねなければ地面に着いてしまう程長く、真っ黒な瞳は深海にある黒真珠の様な秘めた輝きを秘めていた。
二人に比べると背は低いが160㎝ある。
見た目は可愛らしい少女だが、前の飼い主の影響が強く残っている。
「私様を産んでくれて感謝するっす! マスター! ずしんとヘビーなサウンドを轟かせてー、バリバリのロックンロールに糞野郎共を引きずり込んでやるっす!」
うららはとりあえず、三人の言葉にうんうんと頷いて聞き流した。
音呼は小柄で可愛らしい女の子の枠として選んだのだが、これはこれで特徴的なので構わないと思い、矯正するかどうか迷ったのだが、そのままでいいと決断する。
うららは彼女達をマネージャールームへと連れて行き、亜里と庵途に彼女達を託し、愚理央を連れて秘密基地を後にする。
次に向かった先は隣町にある動物園。
うららはここで、いよいよ悪者怪人を手に入れる為の行動に移る。
といっても、今回採用する悪者怪人は一人。
案内の看板がある為、すぐに目当ての動物を発見し、端末に取り入れる。
ついでに、あらかじめ決めていた二匹の動物も取り入れてから、園内を愚理央と共に巡っていく。
そして、うららが「うーん……」と考え事をしていると「考え事でごわすか? 珍しいでごわすね」と愚理央が言うので、うららは考えている事を打ち明ける。
「うん、秘密基地の掃除とか調理を担当する生物が欲しいんだけど、いまいちピンとこないのよね」
「掃除と調理でごわすか。 【人型怪人】なら誰でも大丈夫だと思うでごわす」
うららは両手を広げ、いかにもわかってないと言わんばかりの仕草をすると、愚理央は何を勘違いしたのか、うららを持ち上げて肩に乗せてしまう。
いきなり肩車をする愚理央に戸惑いながらもうららは話を続けた。
「確かに人型怪人なら誰でもいいとは思うけど、どうせなら得意な生物にしたいじゃない?」
「それなら掃除はアライグマとか巣を作るタイプの動物でごわすかね? 調理に関しては舌が肥えてる牛、豚、山羊、兎、鯰あたりでごわすか?」
うららは背の高い愚理央に肩車をされて、その高い景色を満面の笑みを浮かべて楽しんでいた。
そして、真面目に答えてくれる愚理央に「だいたいそんな感じになるわね。 まあ、今日の所はもういいわ」と返事をする。
愚理央は少し残念そうに「ああ、もう帰るんでごわす?」と答えた。
うららは「うん、そのつもりだけど、見ておきたい動物とかいるなら一緒に見に行ってあげるよ?」と言うと愚理央は「特に見たい動物はいないでごわすね。 ただ、一つ聞いておきたい事があったでごわす」と答えたので、「いいよ! なんでも聞いて」と返したうららに愚理央は「自分達は悪の組織でごわすよね?」と切り返した。
うららはその質問をした愚理央の意図を確かめる。
「うん! 悪の組織! ああ、組織の名前とか決めておきたいとか?」
「それは必要でごわすが、聞きたい事は目的でごわす」
「目的? そんなの世界征服に決まってるじゃない」
「そうでごわすよね……」
愚理央とのやり取りでうららは、愚理央が何を聞きたいのかを把握したので、その答えが正しいのかを確かめる。
「腑に落ちないって顔ね。 わかってるわ! どうして象やサイとかワニやライオンを怪人にしないのかなって思ってるでしょ?」
「失礼ながらその通りでごわす」
愚理央の意図が分かったので、うららは得意げに説明をする。
「じゃあ特別! 愚理央にだけ教えてあげる! うららがやってるのはねー、世界征服ゲームなんだよ。 世界征服を目的にゲームをしているんじゃなくって、楽しいから世界征服を目標にゲームを進めてる。 要するに、結末なんて過程ありきの目的に過ぎないって事! みんなには秘密だよー?」
うららは楽しそうに足をバタバタさせて愚理央にそう伝えると、愚理央も少し駆け足になってうららを楽しませようとする。
そして、「早いはやーい」と喜んでいるうららに「なるほど、合点いったでごわす」と告げた後、「でも、それなら……」と切り出し、「目的は世界征服じゃなくてもいいんじゃないでごわす?」と質問を投げかけた。
うららは明るい声でその問いに返事をする。
「うん! その通り! でも、世界征服面白そうだし、止められない止まらない! じわりじわり追い詰めていくとねー、この先にどんな光景が待っているんだろうってドキドキワクワクするでしょ?」
「しないでごわす」
同意をしない愚理央にうららは「即答なんだ!?」と驚きの声を上げたあと、「じゃあ、愚理央はどんな事にドキドキワクワクするの?」と聞いてみると、「お花畑に興味があるでごわす!」と愚理央は答えた。
うららはハナムグリの怪人なのでそんな事もあるかと納得し、「いいよ! それじゃあ今度作ってあげるね! その変わり、ちゃんとお仕事は頑張ってね!」と伝えると思った以上に愚理央は喜び、「本当でごわすか!? 楽しみにしてるでごわす!」と大きな声を上げた。
うらら達はその後、グルっと動物園を一周してから秘密基地へと戻る。
秘密基地へ辿り着くと、うららはまた新たな怪人たちを生み出した。
まずは【人型怪人】の二人。
ダチョウの駝鳥野鳳五郎。
身長が220㎝もあるが、手足も長くスラっとしていて筋肉質な体格をしている。
視線を下にやると目を瞑ってる様に見える程まつ毛が長く、半目で眠たそうな表情をしているが、その瞳は男性にしては非常に大きい。
くすんだアッシュブラウンの髪を逆立てており、襟足の部分は黒髪である。
「あんたが産みの親って事でいいんだよな? 俺、難しい事得意じゃないんだけど、アイドル? とりあえず頑張ってみるからさ、頑張ってみるよ」
続いてもう一人。
インドクジャクの院堂孔雀。
傾国の美女と言わんばかりの美しい顔立ちをしているが男である。
極彩色の瞳に、派手な明るい黄緑色をした長い髪を、孔雀の飾り羽模様の髪留めで纏めている。
インナーカラーは金属光沢のあるキラキラした青色。
身長は189㎝で性格はナルシストで俺様系。
「俺様がアイドル? マスター、世界が滅ぶかもしれないがいいのか?」
女性アイドルの時と同様にうららはうんうんと頷いて聞き流し、さっさとマネージャー二人に彼等を預けた。
今後は女性アイドル達を亜里が担当し、男性アイドル二人を庵途が担当する様にと命じたのだが、しばらくして庵途が小声で話しかけて来たので、少しみんなから距離を取ってから話を聞く。
「突然お声を掛けて申し訳ありません。 どうしても聞いておきたい事があったもので……」
神妙な面持ちで尋ねる庵途にうららは「いいよ! なんでも聞いて!」と返事をする。
庵途はうららの耳元で囁くように語り掛ける。
「あの二人は一緒に組ませるより、一人一人売り出した方がいいと思ったので、許可を頂きたいのです」
「ええー? うららは二人組にした方が面白いと思うなー」
うららは否定したのだが、庵途は「失礼ながら具申申し上げます」と話を続ける。
「院堂孔雀は非常にナルシストで自分本位な性格をしていると見受けられます。 ですが、駝鳥野鳳五郎が隣に立つとあまりに目立ちすぎる為、引き立て役にすらなりません。 二人共ポテンシャルは大いにあるので、組ませるのは勿体ないかと思われます」
庵途はこの件に関して引き下がらないと言う意思がありそうだったので、特に考えていなかったうららは「なるほどね! 確かに庵途の言う通り! その辺りの事は庵途に任せるね。 それじゃあ、二人はソロでやるとして、亜里が担当している方はユニット名くらいは決まった?」と庵途の言い分を認め、別の話題に切り替えた。
庵途は認めて貰った事を嬉しく思ったのか、嬉しそうな笑みを浮かべる。
そして、うららの問いに「ユニット名は【鳥っ子倶楽部】です」と答えた。
うららはその答えに眉間にしわをよせて「誰? そんなセンスないユニット名にしたの?」と語気を強めた。
庵途はうららの質問に「亜里ですね」と答え、続けて「他には【トリリオンズセンチメンタル】や【ピープルヘイズ】【愛鳥具】などの候補もありました」と答えた。
うららは腕を組み、少し考えた後、「なんかどれも微妙ね。 無難な感じでいいし、三人の髪の色とかでサッと決めた方がいいかもね。 【トリコロール】とか、ピンクの “桜” 白の “かすみ草” 青の “ワスレナグサ” から取って【桜霞む勿忘草】とかそんな感じの。 これ適当に言ってるだけだから採用はなしね!」とまた強い口調で庵途に伝える。
「畏まりました。 亜里に伝えておきます」
「うん! それじゃあ頑張ってね!」
庵途がマネージャールームへと帰って行ったので、いよいよ本日のメインである【怪人】に取り掛かる!
そして、生み出した怪人を秘密基地から即刻追い出し、拠点として使っていた洋館へと連れてきた。
怪人の名はスカンク男。
【怪人】として生み出した怪人には身分証などは無い。
毛むくじゃらで身長は直立すると175㎝だが、かなり猫背なのでもっと低く見える。
うららがスカンク男を叩いてみると分厚く固い筋肉質な身体をしていた。
体毛も固めで毛深く、打たれ強い。
可愛らしい顔つきをしているのだが、直立歩行をする為か、首が異様な角度に曲がっているので少し不気味である。
そして、何より特徴的なのは臭いである。
とにかく獣臭が酷く、とてもじゃないが秘密基地の中で一緒に生活をするのは難しい。
獣臭の他にも、近くにいるだけで強烈なにんにくの様な刺激臭まで漂わせていた。
うららは鼻をつまみ、口にハンカチを当てながら “息できないから思念を送るけど、スカンク男ってもっと臭くなるのよね?” と質問すると「いきなり…… ハラスメントっスカー?」とショックを受けた様な言葉を呟いたのだが、うららは容赦なく “スカンク男のスメハラの方が凄いわよ。 とにかく臭すぎるから、この洋館がスカンク男の住処ね。 ライフラインはちゃんと繋いでおくし、エサも持ってくるから毎日お風呂に入って体の隅々まで洗っておいてね” と思念を送る。
スカンク男はいじけてしまったのか、洋館の隅の地面を掘りながら「スカンク、ちょっと傷ついたけど分かったスカー」と呟く。
うららはスカンク男に優しい声色の思念を送る。
“ごめんね、でも本当に人間にとっては凄い不快で強烈な匂いなの。 とりあえずこの洋館で3日くらいは待機してて。 うららが襲撃予告を出してから予告通りの日時に活動してもらうから”
うららの言葉にスカンク男は「わざわざ予告を出すと言う事は、やめてほしければ金を出せって事スカー?」と質問をしたので、うららは「そうそう!」と口を開いた瞬間「ぐへぇっ!」っとえずき、再びハンカチで口を覆ってから思念で “上手くいくかどうかは分からないけど、物は試しって事でね!”と送った。
スカンク男は「任せて下さいスカー。 必ず成功させてみるスカー!」と息巻いて答えると、うららは “うん! 期待してるしきっとうまくいく!” と伝えた。
「期待に応えてみせるスカー」
スカンク男は、首領が今お金払ってでも何処か遠くへ行って欲しいなどと思っていないだろうかと、一抹の不安が頭に過ったが、悲しい気分になるので考えない様にした。




