第30話 沈黙の基地。
音呼の救出に向かったのは、まだ離反がバレていないであろう花牟愚理央。
そして、実行部隊として亜里と瑠璃目白。
足止め要因でスカンク男と、なぜか人助けなら協力してくれる大河尤鼠が参加していた。
作戦は、はっきりと処刑命令が出されているスカンク男と、《うそ》が車内で待機、緊急用のアラートが鳴れば足止めの為に戦闘を開始。
ただし、街に徹する事。
もしも10分以内に誰も戻って来なければ、その場から引き返す事。
救出に向かう三人は、愚理央が先行し、安全である事を確認出来れば、亜里と白も先へ進む。
一応、二人共まだ処刑命令は下されていないので、アイドル活動の為、基地を離れていたと言えば、言い訳もたつので、うららに見つからなければ然程危険ではない。
一番の問題は、救出対象である音呼が、救出を望んでいないであろう事である。
「さて…… いくでごわす……」
作戦通り、愚理央が安全を確認して、ゆっくりと基地の方へと向かって歩いて行く。
真夜中なので活動している怪人は少ないのだが、妙な気配を感じていた。
「少し様子がおかしいでごわす……」
「ええ、鳥の鳴き声かしら? 沢山いるわね」
「少し前まではこんな声は聞こえませんでした。
美津姫うららが怪人を増やした?
愚理央は何も聞いていないんですか?」
「聞いてないでごわす」
「もうすぐ基地へ辿り着くわ、それまで出会わない様に祈りましょう」
さほど時間をかけずに基地まで辿り着くと、三人で中へと入っていく。
基地そのものの見た目は変わらないのだが、いつもよりも静かであった。
「おかしいわね…… 静かすぎるわ」
「いつも休まずに稼働している設備の音も聞こえませんね」
「一体、何が起こってるでごわす……」
三人が基地のエントランスで様子を探っていると、そこへ近づいて来る足音が聞こえて来る。
「二つ分の足音…… 音呼ちゃんの足音です! もう一つは分かりませんが……」
「足音だけでわかるなんて流石ね。 でも、もう一つの足音はグリーンかしら?」
「そうだと、ありがたいでごわすね」
三人の前に足音の主が姿を現す。
一人は白の宣言通り、《せきせい》音呼。
そして、もう一人は彼女のパートナーとなったグリーンだった。
「音呼ちゃん!」
白が呼びかけると、音呼は変身し、隣に立つグリーンと同じ様なヒーロースーツ姿となった。
「総則を裏切ったお前等を、私様は許さねえ!」
「音呼ちゃん……」
「待つでごわす。 裏切ったってどういう事でごわすか?」
「筒抜けだ。 筒抜けなんだよ! お前等のノイズは!」
「音呼ちゃんどういう事? どうしてそう思うのか教えて貰える?」
亜里の質問に答えず、音呼は隣に立つグリーンを見上げた。
「お前達に対して排除命令が下された。 それ以外に語る事はない」
「グリーンの様子がおかしいでごわす……」
「離反している事がバレているなら、作戦は失敗ね」
「戦いましょう! 音呼ちゃんだけでも連れ戻します!」
白が叫び、戦闘態勢を整える。
だが、目の前のグリーンは微動だにせず、ただ機械的な精密さでその手を武器へと伸ばした。
「無駄な抵抗だ。 お前達は改造された我々の脅威にはなりえない」
その声には、かつての誠が持っていた「熱」は一欠片も残っていない。
一触即発の睨み合い。基地の外に集まった無数の何かが、まるで葬列のように鳥のような鳴き声を上げ続けていた。




