第28話 野獣と少女
「大河しゃん!」
「な、なんでそいつがいるスカー!?」
「げぇ、なんでお前等がここにいやがる?」
ミニロップ女とスカンク男が大河尤鼠の顔を見るなり声をあげ、尤鼠もスカンク男の臭いにおいを思い出し、思わず鼻を手で塞いだ。
硬直する三人の間に、愚理央が割って入る。
「尤鼠は、冠熊鷹にやられそうになっていた自分と、鳳五郎を助けてくれたでごわす」
「ええっ!? 大河しゃんが助けてくれたうさー?」
「信じられないスカー」
「本当でごわす。 たぶん、ステラがいれば、尤鼠は危険ではないと思うでごわす」
「ステラしゃん……?」
「お久しぶりです! ステラわぁー、オオカワと一緒に、神父さんの元で暮らしてるの!」
「量産型戦闘員しゃんうさー!」
「どうしてしゃべれるスカー? 『泣かないで』以外も喋るスカー?」
「神父が言葉を教えてるんだよ。 ステラは天才なんだぜー? クックック。
将来はきっと、瑠璃目白みたいなアイドルになるんだぜ」
大河尤鼠の言葉にミニロップ女とスカンク男も目を丸くした。
そこへ、亜里と庵途、そして一緒にいた瑠璃目白もやってきた。
「ああ! ハクちゃんだー!」
ステラはソファーから飛び降り、喜びのあまり瑠璃目白がメインの曲の振り付けを真似て踊り出す。
高身長の白の真似なので、ステラは両腕一杯に広げ、大きさを表現しながら踊っている。
「私の…… ファンなのね」
浮かばれない表情をしているが、白もステラの隣に立って、軽く踊ってみせた。
「うーん…… まあいいか。 みんな揃ってるし、ここで話すけどいいよね?」
泯府鉤爪がそう告げると、彼に注目が集まる。
空気を呼んだのか、踊っていたステラもソファーに座ってる大河尤鼠の膝の上に座り、騒がしかったリビングに静寂が訪れる。
「ヒーロー側と接触して、アジトの情報を提供した。
近いうちにヒーロー側の拠点から強力なミサイル攻撃が始まる。
一応、アジトがある山以外は安全だと言う事だけど、逃げ出す怪人達がいるかもしれない。
僕たちは、ヒーロー側に着く事になったから、ヒーロー達と一緒に街の防衛に加わるんだけど、何か質問はある?」
「スカンクから質問があるスカー! そいつも防衛に加わるスカー?」
「ああ、大河尤鼠は加わらないんじゃない?」
「あぁん? 何の話しだ? 防衛って言ってやがったな、人助けならやるぜ?」
「ど…… どういう心境の変化スカー?」
「大丈夫だよ、お前は食ってまずかったから食わねえよ」
「食って旨かったミニロップ女さんの事は食べるつもりスカー?」
「あぁ…… どうすっかなー。 ステラ、あいつは食っていいやつか?」
「だめー!」
「駄目らしいから食わねえよ」
「でもやっぱり危険スカー! 興奮したら絶対食おうとしてくるスカー!」
「大丈夫だよ。 今は上手いもん食って腹膨れてるから、あんまその気になんねーよ」
「スカンク男先輩。 たぶん本当に大丈夫だよ。
オオカワウソは野生でも群れで行動してるしね。
僕から聞きたい事なんだけど、二人が言ってた神父って何者?」
「神父かー? 俺が魚取ってきたら飯作ってくれるんだよ。
ステラにもなんか教えてくれるから、たぶんいい奴だぜー?」
「うん! 神父さんとってもいい人!」
「ふーん。 じゃあ、今度僕にも会わせてもらえる?」
「ああ、わかった」
「私からも質問いいかしら?」
亜里が手を上げてそう言うと、泯府鉤爪は「いいよ」と返した。
「ミサイル攻撃をすると言うのは本当の事?」
「うん、本当だよ」
「それじゃあ、基地にいる音呼ちゃんとグリーンが心配ね。
猶予はどれくらいあるのかしら?」
「うーん…… あんまりないよ? 予定通りにいけば三日後には攻撃を仕掛けるって言ってたから」
「わかった…… それじゃあ、明日準備を整えてから音呼ちゃんの救出に向かう。
もし、私が帰ってこなければその時は、攻撃を止めなくていいわ」
「私も行きます! 私にとって、茶菓ちゃんと音呼ちゃんは、とっても大切な人ですから!」
白の瞳には、かつての「守られるだけのアイドル」ではない、仲間を取り戻そうとする一人の戦士としての強い光が宿っていた。
「……決まりね。三日後、あの山が火の海に沈む前に——必ず、あの子を連れ戻すわよ」
窓の外には、静まり返った街の夜景が広がっている。
だが、その静寂の裏側で、誠を乗せた改造台は今も、不気味な脈動を繰り返していた。




