第27話 ケダモノの食卓。
「クククク……」
含み笑いを零し、大河尤鼠が熊鷹の間合いへと詰め寄ると、当然ながらクチバシによる連続攻撃が彼を襲う。
だが、尤鼠は顔にあたる攻撃だけを躱し、体への攻撃は無視して、そのまま掴みかかった。
尤鼠の鋭い爪が熊鷹の体に食い込むと、悲痛な表情を浮かべる。
「っく……。 馬鹿な! 何故我の攻撃を受けて笑っていられ―― ぐあああっ!」
尤鼠の牙が、熊鷹の邪魔な翼に食い込み、そのまま噛み砕き、容赦なくくちゃくちゃと音を立て、咀嚼を始める。
「やっぱ不味いなー。 臭くて食えたもんじゃねー」
「貴様何を……。 我を捕食しようとしているのか!?」
尤鼠はチラリとステラと呼んだ少女の方を見る。
すると、自らの両手をパチンと合わせて「いただきます」と告げた。
「や…… やめるのだ。 そうだ、貴様はヒーローとの戦いから敗走したと聞いている。 排除対象だが、我の方から総督に取り入ってやっても―― ぐあああっ!」
「へへっ暴れんなよ……。 不味くてもちゃんと食ってやるからよ」
尤鼠が熊鷹の喉元に噛みつくと、強靭な顎で骨ごと噛み砕いた。
しばらくすると、力が抜け、ぐったりとする熊鷹。
足のロックが外れ、鳳五郎に突き刺さっている足を尤鼠は引き抜き、その足にも喰らい付きくちゃくちゃと音を立てて咀嚼している。
「ほんと食えたもんじゃねえなぁ……。 調理すればマシになるか?」
「オオカワー! それはねー、食べちゃいけないやつだとねー、思います!」
ステラが尤鼠に近づいて両手を広げると、手慣れた様子で尤鼠はステラを抱き上げた。
愚理央は立ち上がり、尤鼠に対して「助けてくれてありがとうでごわす」と礼を言う。
「お前もまずそうだなぁ……」
「人型、食べちゃだめー」
「ああ、そうだったなー。 でもよぉ、あいつは多分旨いんだぜー?」
「あの人もだめ―、人型は全部だめー! 神父さんに怒られちゃうよー?」
二人のやり取りを横目に、愚理央は鳳五郎の様子を見る。
鳳五郎は動かないが、ちゃんと息はしているので、ただ気を失っているだけの様子だった。
抱き上げて、連れて行こうとするのだが、愚理央もダメージを受けていて大柄な鳳五郎を持ち上げる事に手こずる。
「ねえ! 手伝ってあげようかー?」
ステラは無垢な笑みを浮かべ、愚理央の顔を覗き込むと、一緒に鳳五郎を持ち上げようとする。
しかし、ステラの力は弱く、足一つ持ち上がらない。
「ははっ人助けだな。 俺が持ち上げてやる」
尤鼠は自分より大きな鳳五郎を担ぎ上げた。
「結構重いな。 旨そうな血の匂いがしやがる」
「食べちゃだめだよー?」
「ああ、分かってる。 おい、こいつをどこに運べばいいんだ?」
「手伝ってくれるでごわすか?」
「ああ、人助けはやった方がいいらしいからな」
「じゃあ、お言葉に甘えるでごわす」
愚理央よろけながら、ゆっくりと歩きだす。
尤鼠とステラもその後をついていき、彼らは亜里が怪人達を匿っている家の前へと辿り着き、泯府鉤爪が彼らを出迎える。
「愚理央先輩? どういう事?」
「助けて貰ったでごわす。 詳しい話は中で話すでごわす」
こうして、愚理央は尤鼠とステラも連れて中へと入って行った。
大河尤鼠とステラはリビングへと通され、ソファーに座るが、ステラはソファーが気に入ったのか、ソファーの上に立って無邪気にバタバタと手足を動かし踊り始めた。
「オオカワー! ふわふわー!」
「ははっ凄いぞステラ―。 大きくなったらアイドルになれるぞー」
「うん! ハクちゃんみたいにカッコイイダンス踊る―!」
容器に踊るステラの声に釣られ、リビングの様子を見に来た亜里たちだが、そこにあった大河尤鼠の姿を見て、全員が思わず抱いた警戒心に体を震わせた。




