第24話 暴走鳳五郎。
亜里達は車へと乗り込み、処刑命令が下された怪人達や、うららの妹である美津姫絶無を匿っている家へと向かう。
基地を抜け、車は市街地へと差し掛かったその時、突然車の前に隕石の様な何かが落下し、亜里は急ブレーキを踏んで、車を停止させた。
大きな衝撃と、ブレーキ音が鳴り響く。
何かが落下した場所は小さなクレーターの様になっており、その中心には恐ろしい人型怪人冠熊鷹が立っていた。
当然ながら、無視する事は出来そうにない。
彼の眼光が運転手である亜里を捉えると、亜里は体の奥底から震えあがる思いだった。
亜里は平静を装い、車から降りたつ。
その後に続き、車に乗っていた全員が亜里の横へと並んだ。
「私達に何か用でしょうか?」
「とぼけるつもりだな? フハハハ、愉快愉快。
安心するがいい、総督閣下のご命令で我は、総督閣下のご意思で無ければ殺害を認められてはいない。
なので、そうだな。 我が総督に確認するまでの間、つかの間の生を味わっておく事だな」
「私達を狩りの的にでもするつもりかしら?」
「これは失敬。 その様に聞こえたのならば… フハハハ、その通りだと応えてやろう」
彼の言葉と共に、亜里庵途が臨戦態勢へと入り、変身する。
それに続いて、瑠璃目白も変身して、身構えた。
院堂孔雀は車の上へと飛びあがり、バサァっと優雅に自らの衣装を広げ、ダンスを踊り出す。
駝鳥野鳳五郎だけは、冠熊鷹ではなく、空の浮かぶ雲を眺めている。
冠熊鷹が余裕を見せる笑みを浮かべ、内ポケットの中から携帯電話を取り出した。
その瞬間、変身している三人は彼に飛び掛かり、攻撃を開始する。
しかし、その攻撃は当たらない。
的確に躱し、当たる攻撃も軽くブロックされてしまう。
三人の中で最も強力な、瑠璃目白の大鎌も、彼が一歩前にでるだけで、脅威は無に帰された。
「あっ、もしもし」
無情にも冠熊鷹の携帯が何処かへと繋がってしまった。
美津姫うららが彼に命を下せば、反撃が始まってしまう。
隙をつく様に、黒井姉妹が両腕を前に突き出し、強力な蟻酸を放った。
しかし、それは冠熊鷹の背中から、突然生えた大きな翼に阻まれる。
万事休すかと思われた中、彼の口からは意外な言葉が飛び出してくる。
電話口で、彼は「総督閣下へと繋いでもらいたい」と願い出ていた。
直接美津姫うららに繋がってはいない。
亜里はまだチャンスがあるのだと確信した。
攻撃を続けている間に、冠熊鷹は「ならば到着するまで足止めをしておこう」と言って、通話を切った。
何者かがここへと来てしまう。
もしもそれが、扇子鷲であれば……。
ここにいる全員が囚われ、美津姫うららの元へと生きたまま差し出されてしまうだろう。
庵途が亜里の横へ並ぶ。
「姉さんたちは車に乗って逃げて…… この男は私たちが全力で押さえる」
「何を言ってるの庵途?」
「全滅するよりマシでしょ……。 それに、その気になれば私たち結構強いんだから! 姉さん行って!」
その言葉と共に、亜里は瑠璃目白と共に車へと乗り込んだ。
その様子にも冠熊鷹は余裕の笑みを浮かべた。
「逃げ切れるとは思っているのか? 片腹痛い」
「鳳五郎! この男があなたの悪口を言っていたわ! ぶっ飛ばせ!」
「なんだと! それは許せない!」
唐突に庵途が叫んだ。
しかし、鳳五郎は彼女の言葉を疑わない。
鳳五郎が冠熊鷹へと迫ると、大きく羽ばたいて冠熊鷹は距離を取った。
だが、鳳五郎はそれに追いつき、彼を掴んでしまった。
更に、一度走り出した鳳五郎は止まらない。
そのまま鳳五郎は冠熊鷹を掴んだまま、どこかへと走り去って行ってしまった……。
「庵途……」
「ね……姉さん! 今のうちに!」
冠熊鷹を捕まえているのであれば、鳳五郎が負ける事はない。
庵途がそう告げると、残された亜里たち四人は車へと乗り込み、急いで車を走らせた。




