第17話 最後のライブへ
「そう言う訳で、次のライブが最後になる。 でも、あなた達が頑張ればまた活動を再開する事を認めると総督は言ってたわ。 私も可能な限り協力するつもりだし、頑張りましょう!」
「んー? 総督の意向に背いてまでアイドル活動なんてやる意味あるっすか? 私様はこいつと一緒ならなんだっていい」
背黄青音呼がアンプの繋がっていないエレキギターをジャカジャカと演奏していると、久留麻茶菓がその手を優しく受け止めた。
「音呼ちゃんは私達とアイドルやってて楽しく無かったの?」
「楽しかったっすよ。 ただ、私様の一番はアイドルじゃないっす」
「そうなんだ…… 白はどうだったのかな?」
「私の一番は二人です! 茶菓ちゃんと音呼ちゃんが幸せならそれが一番です!」
「そうなんだ……」
「その人にとっての一番は、人それぞれ。 時と共に変化する事もあるし、変わらない人もいるわ。 ショックを受けてるみたいだけど、あなたはあなたの一番を追えばいい。 私の一番はあなた達のマネージャーをしている事ね」
「マネージャー…… うん、茶菓、頑張るよ!」
「ええ、頑張りなさい! それと、音呼ちゃんもアイドル活動に反対ってわけじゃないんでしょ?」
「そうっすね。 オーディエンスの期待に応えるのもロックンロールっすからね。 大勢でジャムるのも悪くないっす」
「それじゃあ協力してくれるわよね?」
「いいっすよ。 ただ、私様は総督の意向に従うっす。 それでいいっすよね?」
「ええ、いいわよ。 一つ聞きたいんだけど、音呼ちゃんにとって総督閣下はどう言う存在なのかしら?」
「愚問っすね。 そんなの決まってるじゃないっすか。 スーパースター! 唯一無二の一番星っす」
「ス、スター? ボスとか組織のトップとかじゃなくて?」
「組織とか関係ないっす。 総督のサウンドはとても暖かくて優しくて、心地がいい…… まさにフォールインラブって感じっす」
「えっと、音呼ちゃんは総督閣下に恋をしてるの?」
「そうっすよ。 あのバイオリンの音色が今でも忘れられないっす」
「バイオリン?」
「私様があまりにギターが下手くそだった時に一度だけ弾いてみせてくれたっす。 あれは間違いなくロックンロールいや、ヘビメタだったっすね」
「バイオリンでヘビーメタルを弾いてくれたの?」
「そうっす。 サリュダムールって曲っす。 あのサウンドは一度聞いたら決して忘れられないっすよ。 総督の愛は無限大っす」
「そう…… 音呼ちゃんがそこまで言うならちょっと興味あるわね。 でも、今は次のライブよ! 最後のライブだけど最後にするつもりは無いわ! 全力でやりましょう!」
こうして三人のアイドル達は最後のライブに向けて練習に励んだ。
一方その頃、男性アイドルの二人は庵途から同じように、最後の活動になるという説明を受けていた。
「あなた達…… ちゃんと私の話しを聞いてるの?」
「聞いてるよ?」
「駝鳥野鳳五郎。 なら私がさっき言った事説明してもらえるかしら?」
「総督から命令があった…… だろ?」
「はぁ、全然聞いてないじゃない。 院堂孔雀! 鏡ばかり見てないで話を聞きなさい!」
「待ってくれ。 俺様は今の俺様を目に焼き付けておきたい。 もう少し待ってくれ」
庵途カメラを持ち、院堂孔雀に向ける。
そして、駝鳥野鳳五郎には懐中電灯で光を当てて興味を引いた。
「ちゃんと聞いて。 あなた達の活動が最後になるの。 わかるかな?」
「俺、分かるよ。 最後になるんだろ」
「最後の活動か。 俺様には関係ない。 なぜなら、俺様が俺様である限りそこに俺様がいるからだ」
「はぁ…… いつも通りね。 まあいいわ。 やれるだけの事をやるだけよ……」
庵途は話をあまり聞かない二人に呆れて、自分自身にそう言い聞かせた。
二人の世話をするのは非常に困難であったのだが、一生懸命サポートをして、庵途は二人の人気を押し上げてきた。
それは庵途にとって非常にやりがいのある仕事であり、それぞれの最後のコンサートは大成功で終わらせたい。
それが庵途にとって、二人に臨む最後の願いであった。
【ユーアートリコ】よりも先にスケジュールが入っていた二人は無事に最後のコンサートを終える。
駝鳥野鳳五郎は最後のコンサートと言う名前のコンサートをするのだと思っていたらしく、その意味については考えていなかった様子。
そのお陰で終始笑顔で楽しく終えたコンサートは大成功に終わった。
今後はヒーロー達と戦うのだと伝えると、駝鳥野鳳五郎はやる気に満ち溢れていたのだが、彼は何をするのかをあまり理解していない様でもあった。
院堂孔雀は極度のナルシストなだけで、駝鳥野鳳五郎程馬鹿ではない。
その為、最後のコンサートでは「俺様の事を忘れるなよ!」と仕切りに訴えかけていた。
最後には忘れられたくないと涙ぐむ場面もあり、その影響からか、庵途宛てに、今までの三倍ほどの殺害予告がメールボックスに入っていた。
院堂孔雀にヒーロー達と戦うのだと教えると、彼は自信ありげに「俺様がそこに居る。 それで決着がつくだろう」と言っていつも通り鏡を眺めていた。
そして時は過ぎ、【ユーアートリコ】最後のライブが始まる。




