第15話 新たな生活へ
朝日が昇り始めた頃、ようやくミニロップ女が目を覚ます。
傷口がそうとう痛むようなので、ナースコールを押して痛み止めの注射を打ってもらう。
人気のない時間帯に移動したいと言う事で、怪人達は礼を言ってからヒーロー達の拠点を発つ。
カラス女がミニロップ女を足で掴み、泯府鉤爪がスカンク男を同じようにつかんで飛び立つ。
移動中、泯府鉤爪はうららに連絡をいれる。
「総督、ヒーローの拠点を調べ終って今でるとこ。 総督の欲しい情報は得られたと思うよ」
「流石ね! それじゃあ報告してみてー?」
泯府鉤爪は施設の中で得た情報を伝える。
研究は一人の男が行い、それを開発チームが形にしていく。
研究している男は四六時中研究に没頭していて、部屋は資料などが散乱していて散らかっていた。
そして、捕らえた怪人達は研究した後、速やかに葬られると報告する。
「ご苦労様! 欲しい情報が聞けてうらら嬉しい! 飛んで秘密基地まで来ちゃうと目立っちゃうし、迎えを出すから今から言う場所で待機しておいてね!」
「了解」
待機場所は海岸線沿いにある入り江。
それ程遠くない場所なのですぐに到着する。
「さて、僕はここで待たなきゃならないけど、みんなはどうする?」
「そうねぇ。 私達総督閣下に見捨てられちゃったみたいだから帰ってもいい事ないわよねぇ?」
「本当に見捨てられたスカー?」
「見捨てたと言うより使い捨てにされたうさ。 それでもミニーは総督閣下にお話したいうさ」
「ミニロップ女ちゃんがそう言うならぁ、仕方ないわねぇ。 私達も一緒に総督閣下に会いにいきましょう」
「僕、みんなが葬られたって報告しちゃったけど大丈夫かなぁ?」
「まずいかもしれないけどぉ。 みんなで謝ったらきっと総督閣下も許して下さるわぁ」
「そうだといいね」
怪人は仲良くおしゃべりをして待っていると、真っ黒なワンボックスカーがやって来て、クラクションを鳴らしたので近くへよると、運転席にいた花牟愚理央が声をかけてくる。
「迎えに来たでごわす。 みんな後ろの席に乗るでごわす」
「愚理央先輩、報告と違うんだけど、みんな乗っちゃっていいの?」
「いいでごわす。 みんなが無事でよかったでごわす」
愚理央がそう言うので、怪人達は後部座席に乗り込み、車が発進する。
楽しくおしゃべりをしながら帰っていると、泯府鉤爪がある事に気付く。
「愚理央先輩。 道が違うけど? さっきの所は右に曲がらなければ秘密基地には辿り着けないよね?」
「実は泯府鉤爪を殺せと指示が出てるでごわす」
「ええ? どうして僕が?」
「自分には総督殿の考えは分からないでごわす」
「それで…… 愚理央先輩はどうするつもり? どうして先にそれを話したの?」
「自分は泯府鉤爪を殺すつもりはないでごわす。 もちろんカラス女もスカンク男もミニロップ女もでごわす」
「じゃあ、どうするつもり? 命令違反になるけどいいの?」
「きっと駄目でごわすね。 でも、自分はその方がいいと思ったからそうするでごわす。 一応匿える場所はあるでごわす。 今はそこに向かってるでごわす」
「そんなのあったんだ。 まあ、今は愚理央先輩の言う通りにしておくよ」
「賢明な判断でごわす」
こうして愚理央に連れられて、一件の家のガレージに車を停めた。
ガレージは地下にあり、シャッターを閉めた後、そのまま家の中へ続く入り口があった。
「自分は秘密基地へ帰るので、家の中にいる亜里殿の元へ行くといいでごわす」
「了解。 気を付けてね愚理央先輩」
愚理央に見守られながら、怪人達は家の中へ入る。
泯府鉤爪は耳がいいので、すぐに亜里が何処に居るのか分かったので、亜里のいる部屋の前まで行き、ドアのノックする。
すると、中から「どうぞ」の声が聞こえたので、怪人達はドアの中へ入った。
中には亜里と見知らぬ少女の姿があった。
「亜里先輩。 事情とか説明した方がいい?」
「大丈夫よ。 それじゃあ、この場所の説明からするわね」
亜里は泯府鉤爪達に説明する。
この家は、名目上アイドル達の撮影などに使う為に購入した家で、亜里が管理している。
近くには同じ理由で庵途が管理している家もあるのだが、現状そう言った用途では使われていない。
では何に使われているのかと言うと、亜里の管理するこっちの家ではこの少女を匿う目的で使われている。
「この子の名前は美津姫絶無」
「総督と同じ苗字だね。 もしかして総督の妹?」
「その通りよ。 総督閣下が一家全員を抹殺する様に指示をだしたんだけど、他の家族は皆殺しにした後、愚理央がこの子だけ助けちゃったの」
「ええ? 総督はなぜ自分の家族を皆殺しにしようって思ったのかな?」
「自分が死んでいる事にした方が都合がいいと言う理由で、総督の死の偽装も兼ねて一家全員を殺す事に決めたそうよ。 総督の死だけを偽装すればいいと提案もしたんだけど、それだと残された家族が可哀想だからって理由で全員を殺す事になったの」
「そうなんだ……」
「その時のショックのせいか、絶無ちゃんは言葉をしゃべれないの。 一応首を振ったりしてコミュニケーションは取れるし、私にも少し懐いてくれている普通の女の子よ。 あなた達にはこの絶無ちゃんの面倒を見ててもらいたいの」
「それはいいけど、大丈夫? 僕以外の三人共怪人の姿をしてるけど」
「怯えてる様子はないし大丈夫そうね」
「ならいいけど。 でも、ここって資金とか使っちゃってるし総督にバレたら大変な事になるんじゃない?」
「その心配はいらないわ。 秘密基地は殆ど自給自足でやってるし、資金を使うのは微々たるもの。 お金を稼いでるのは殆どアイドル達だし総督閣下もお金の使い方なんて気にしてないから」
「しばらくの間は安心していいって事ね」
「ええ、一応ね。 でも、警戒はしておいた方がいいわ」
「秘密基地は近いし、怪人の姿を見られるわけにもいかないしね」
「それもそうなんだけど…… 総督閣下は新しい怪人を生み出したの」
「へぇ。 なんて名前?」
「扇子鷲と冠熊鷹よ」
「へぇ…… 名前からして【人型怪人】の方だね。 その点だけは良かったって感じだけど、総督はその二人にどんな役割を与えたの?」
「ボディーガードよ。 でも、人型とは言え戦闘能力は相当高いはずよ。 私も見ただけで身体が震えたわ。 もしかしたら怪人の処刑なんかも担うんじゃないかしら?」
「恐ろしいね。 流石の僕でもその二人を前にしたら…… 考えたくもない」
「今の所は二人共総督の側から離れる事は無いし、必要以上に恐れる事はないわ。 必要な物なんかは私が揃えてあるし、定期的に食料も運んで来るから、あなた達は絶無ちゃんの面倒をみつつ、筋トレでもしてるのね」
「了解。 勉強とか教えなくていいの?」
「それは良い事だけど、絶無ちゃん頭いいから、どっちかと言えばあなた達が勉強する事になると思うけど」
「なるほどね。 それじゃあ、僕達はここで大人しくしてるから、また何かあったら連絡して」
こうして泯府鉤爪達の新たな生活が始まる。
秘密結社ルイナスから見捨てられた事で、この辺りで生活するのもリスクがある。
泯府鉤爪は亜里がいずれ怪しまれる事も踏まえ、ヒーロー側との接触も視野に入れて考えを巡らせた。




