第12話 敵? 味方?
大河尤鼠の牙が喰い込むとミニロップ女は「キィイイー」っと笛の音のような甲高い声で叫んだ。
一瞬、我に返ったかのように大河尤鼠は噛むのをやめたが、再び肩に喰らい付き、バリバリと骨を砕く音を鳴らした。
スカンク男は「止めるスカー!」と言って大河尤鼠の体に突撃したのだが、圧倒的に身体能力に差があり、腕に噛みつかれて引きちぎられてしまった。
「邪魔すんじゃねぇ…… お前はぁ…… まずいな」
大河尤鼠は肉の断片を吐き捨て、髪千切った腕も放り投げた。
そして、再びミニロップ女の方へと向く。
ミニロップ女は傷の痛みで動けず「キキキッキキキ!」と甲高い声で鳴くばかりだった。
「スカンク男ちゃん、必殺技を使いなさい!」
「ちくしょうぅ! ちくしょうぅ! よくもやりやがったスカー!」
スカンク男はおしりを大河尤鼠の方へ向け、全力で必殺のオナラ攻撃をする!
すると、ビクンと直立して大河尤鼠はスカンク男の方を見た後、気絶して地面に衝突する。
衝突の衝撃で意識を取り戻した大河尤鼠は吐しゃ物を撒き散らしながら這い回り、海の中へと逃げて行ってしまった。
それと同時に、遠くの方で女性の悲鳴が聞こえて来る。
ヒーロー達はその声を無視する事は出来ず、レッドとピンクが悲鳴の聞こえた方へと走り去っていった。
「あのまま気絶してたら止めをさせたスカー」
「あの感じだと再びここへ戻って来る事はないけどぉ…… 私達満身創痍よねぇ」
「ミニロップ女さんはスカンクが抱きかかえるスカー。 それで飛んで逃げるスカー」
「それしかないわねぇ…… 撃墜されたらごめんなさいねぇ」
スカンク男がミニロップ女を抱きかかえると、グリーンが走ってやってくる!
それ程距離が離れているわけでは無かったので、飛び立つ隙がない。
「待って君達!」
スカンク男達は攻撃を警戒し、身構える。
「傷の手当を急いだ方がいいっす。 着いて来て貰えるっすか?」
「あらぁん? 私達敵同士じゃなくってぇ?」
「三匹…… いや、三人っすか? みんな優しい目をしてるっす。 俺っちは顔見たら優しい子かどうなのかわかるんすよ。 怖がらなくていいっす、傷の手当が終わったらちゃんと帰してあげるっす」
「信じられないスカー! カラス女さん! スカンクが足止めを――」
「待ちなさい! グリーンちゃんを信じるわ」
「そんな簡単に信じていいスカー?」
「ううん。 ただの消去法。 向こうがその気なら私達の生存率は限りなくゼロなの。 それなら善意を信じてみた方がいいじゃない?」
「わかったスカー」
「じゃあ俺っちについてきて」
スカンク男達はグリーンに着いていき、車の後部座席に乗り込んだ。
レッド達を待つと言うので、しばらく待っていると後部座席のドアが開き、ピンクが「キャア!」と驚いた声を上げた。
「怪人!? あなた達なんでここに! グリーン、説明して頂戴!」
「その必要はないはずっすよー」
「……。 本気でいってるの? でも、仕方ないわね…… レッド、私達はあっちの車で帰りましょう。 その子が目を覚ました時、怪人が目の前にいたら怯えてしまうわ」
「わかった。 怪人マスカラスとレッドキング! 信じてるからな!」
「あらぁん。 レッドちゃんありがと!」
「本当はスカンク男って名前スカー。 マスカラスはカラス女スカー」
「カラス女とスカンク男か! 覚えやすくていいな! それじゃあ、また後で会おう!」
そう言ってレッドとピンクは一人の少女? を抱きかかえて別の場所に停めてある車へと向かった。
レッドの抱きかかえていたのは泯府鉤爪。
いよいよ偵察から潜入捜査へと切り替えたのだとカラス女は悟った。
「カラス女さん、泯府鉤爪は大丈夫スカー?」
「えっ? だ、大丈夫よぉ? そんな事よりもぉ、今はミニロップ女ちゃんの心配してあげなきゃ!」
「泯府鉤爪がどうしたっすか?」
「顔色が悪かったスカー。 きっと苦しいんだと思うスカー」
「大丈夫よぉ! ちょっと腐ったもの食べてお腹壊してるだけだから大丈夫! 帰ったら元気に挨拶してくれるわよぉ!」
カラス女が泯府鉤爪の潜入捜査に全く気付いていないスカンク男のフォローをしながら、しばらくしてヒーロー達の拠点へと辿り着く。
事前にグリーンが連絡を入れていたお陰で、ミニロップ女とスカンク男の治療は迅速に行われ、ものの数十分で施術は完了する。
治療を受けた二人は同じ部屋のベッド上で寝かされ、隣にはカラス女が着いている。
「ちゃんと治療してくれてよかったわね」
「ミニロップ女さんの具合はどんな感じスカー?」
「ちゃんと腕は動かせるみたいだから心配ないって言ってたわよぉ」
「それは良かったスカー。 スカンクは腕一本なくなったスカー」
「それは残念だけどぉ…… 私がスカンク男ちゃんの腕の分まで働くから大丈夫よぉ」
「働くスカー? スカンク達、秘密基地に戻って平気スカー?」
「わからないわぁ。 今はとにかく、ミニロップ女ちゃんが目覚めるのを待ちましょう。 それと、一応泯府鉤爪ちゃんのお話は帰るまで禁止よ」
「わかったスカー」
二人が話をしていると、ドアがノックされて誰かが入って来る。
いかにもロックスターと言った風貌で、緑色の髪は長く、腰のあたりまで伸びていた。
そして、顔はピアスだらけでタトゥーまで入っている。
「ハッハー! 真心グリーン参上! 驚いたっすかー? 俺っちはマスクとって、あまりの臭さに驚いたっすけどー」
「あらぁん? グリーンちゃんなのぉ? 流石に生身の体で私達の前に来るのは危ないんじゃないかしらぁん?」
「大丈夫っすよ! 怖がらせるくらいなら俺っちが怯えてた方がよっぽどいいっす!」
「変な人間スカー。 カラス女さん、スカンクまだ匂うスカー?」
「んー…… 全然臭わないわ」
「いや、めちゃくちゃ臭せーっす! まあ、カラスは鳥の中でも嗅覚が特に鈍感っすからねー」
「臭いならこれ使うスカー。 獣臭とスカンクの匂いに特化した消臭スプレースカー」
「マジすか? 使わせて貰うっす! 匂いついたままだと俺っちが働いてるペットショップ出禁になっちゃうっすから…… これ! すげーっすね! 全然臭わなくなったっす!」
「それは良かったスカー。 でも、なんでスカンクの事撫でてるスカー?」
「動物好きなんすよー。 鳴き声も出せるんすか?」
「出せるスカー。 ンニ”イ”イ”イ”、ンニ”イ”イ”イ” これでいいスカー?」
「おおー! 結構エッジの聞いた感じっすねー! 顔の方も撫でていいっすか?」
「カアアアア! カアアアア!」
「うわぁっ! カラス女さんいきなりどうしたスカー?」
「カラス女ちゃんうるせーっすよー! 怪我人が二人もいるんすよ? まあ、ミニーちゃんはしばらく起きないっすけど」
「そんなに悪いスカー?」
「結構熱出てたみたいっすからねー。 鎮痛剤と解熱剤、よく眠れる様に睡眠剤も使ったみたいっす! きっと朝には起きるっすよ」
「じゃあ、もう少しここでお世話になるスカー」
「ゆっくりしていくといいっす。 それにしても…… みんなめちゃくちゃ可愛いっすね! 動物がしゃべると微妙だと思ってたっすけど、みんな可愛いっす! 特にミニーちゃん! 目覚めたら速攻で抱っこの交渉がしたいっす」
「あらぁん? 私の事も抱っこしてもいいのよん?」
「カラス女ちゃんはいいっす。 なんで体が人間よりなんすか? それに顔だってペストマスク被った人間っぽくてマイナス100点っす。 あっそろそろ俺っち行くっすね! 何かあればそこのボタン押したら誰かしら対応してくれるんで!」
「わかったスカー。 スカンクも少し疲れたから寝るスカー」
「そうねぇ、私も傷ついちゃったからふて寝するわぁ」




