第9話 VS 兎とオオカワウソの怪人
うららはカラス女の代理としての怪人、諜報活動をする為の怪人、そして戦力として使う怪人を新たに生み出す。
まずは兎の【怪人】ミニロップ女。
大きな耳を垂らした怪人で想定した以上に幼い見た目をしている。
灰色の体毛をしていて、愛玩動物らしい可愛らしさを持っている。
「女幹部の代理うさ? ミニーにそんな大役が務まるうさ?」
「大丈夫! ミニ―は可愛いから!」
「わかったうさ! 頑張るうさ!」
次に、諜報活動を目的として生み出した【人型怪人】泯府鉤爪。
うららはオスだと思っていたのだが、生み出されたのはエレガントなドレスコートを着た銀髪の少女。
肌が真っ白で幼く無ければ相当な美人であろう見た目をしている。
一応成獣を選んだはずなのだが、連続して幼い見た目の怪人が生まれて来たので、今日はそう言う日なのかとうららは疑問に思った。
「諜報活動? うん、いいよ。 僕、自信ある」
「へぇー、僕っ子なんだ! 実は男の子だったりしない?」
「男だよ。 男の子って言わないで! 僕の仕事はヒーロー達について調べればいいんだよね? 任せといて、丸裸にしてやるから」
どうやら鉤爪は男らしいとかカッコイイと言われたい年頃の男の子なのだろうとうららは思ったのだが、それならなぜ女装しているのだろうと言う疑問が残ってしまった。
最後に純粋に戦力をあげる為の【人型怪人】大河尤鼠。
人型怪人なのに、なぜか同じ人間とは思えない様な狂暴な顔つきをした男が生み出された。
髪形はオールバックの黒髪で光にあたると少し茶色ががった感じになる。
瞬きをする気配がなく、常に獲物を狩る様な血走った眼をしており、半開きの口元は笑ってる様にも見え、薄っすら見えるギザギザの歯が彼の狂暴性を表している様だった。
「戦闘要員、いいねぇ! 総督ぅ、早く……早く血が見てぇよぉ。 いつ行くんだぁ? いついけばいいぃ?」
「落ち着いて。 一時的にだけどあなたに指示を出すのはそこにいる怪人ミニロップ女よ。 出動するのは明日の予定! あなた達の先輩であるスカンク男と一緒に破壊活動をやって欲しいの」
「あぁ…… 明日までだな、明日まで待てば、明日まで我慢すれば…… キシシ、クククク……」
この男といてミニロップ女は大丈夫なのだろうか? と早くも心配するうららだが、怪人同士の仲が悪くなる所を見る事もなかったので大丈夫だろうと考える。
今日は頼む事もないので、三人を洋館に案内してスカンク男に預けた。
「先輩しゃん、どうも初めましてうさ! 女幹部代理のミニロップ女うさ」
「これはご丁寧にどうもスカー。 スカンク男スカー」
「僕は泯府鉤爪。 戦闘には参加しないけど、戦闘後のヒーローの後を追って情報収集を行うから、僕の事はいないものと考えてて。 出動までの間だけだけど、よろしくね、先輩」
「ハァ、ハァ、な、なぁ…… 先輩さんよぉ。 一般人、一般人もやっちまってもいいのかよぉ? 早く聞きてぇんだ。 早く聞きてぇんだよぉ! 静脈から気管に流れる血の音をよぉ…… ククク、クックックック!」
「予め襲撃予告をするから、襲撃ミッション中に一般人と接触する機会はないスカー」
「そうか! そうだった……そうだよなぁ! ハッハッハ…… わかった。 我慢する。 我慢するぅ。 我慢するからぁー! アーッハッハッハー!」
「ミニロップ女さん、この人、大丈夫スカー?」
「むぅん。 大丈夫だと思ううさ。 ミニ―は大河しゃんを信じるうさ」
顔合わせが終わり、それぞれが自由な時間を過ごす。
夜中になると時折、大河尤鼠が奇声をあげるので、スカンク男はビックリして目を覚まし、安眠する事が出来なかった。
翌日。
朝一番で車に乗り込み、量産型戦闘員の運転で目的地へ向けて出発する。
車が走りだすと、ミニロップ女のテンションが上り、ずっと「うさうさー♪」とメロディーを口ずさんでいた。
助手席に乗った泯府鉤爪はすぐ眠りについた。
そして、真ん中の座席に座るスカンク男は気が気でない状態である。
その理由は、左側の席に座るミニロップ女は良いとして、右側に座っている大河尤鼠がじっとスカンク男の事をずっと瞬きもせず見つめているからである。
更に大河尤鼠は小声で何かぶつぶつと呟いている。
何を言っているのか聞きたくはなかったのだが、スカンク男は彼のつぶやきに耳を向けてしまう。
「ああ、目が合っちまったなぁ…… 瞳が大きくて血管が見えねぇ…… 血は赤いのか? 赤いはずだぁ…… 確かめたいなぁ、確かめたいなぁ」
スカンク男は背筋に冷たいものが走った気がした。
その後もずっと何かぶつぶつと呟いていたので、聞かない様に耳を両手で塞ぎ、なんとか目的地まで辿り着く事が出来た。
「サイレンス?」
「丁度いい時間スカー。 ミニロップ女さんみんなに指示だせるスカー?」
「任せてくだしゃいうさ! 今回の襲撃目標は美術館うさ! 量産型戦闘員しゃん達の爆発だけで事足りると思ううさけど、きっとヒーローが来るうさ! ミニ―達はそのヒーローの相手をする事がメインのお仕事うさ! 量産型戦闘員しゃん達はしかたないうさけど、無事に帰る事が一番のお仕事うさからね!」
「サイレンス!」
ミニロップ女は一瞬、量産型戦闘員が怒っているのかと思ったのだが、量産型戦闘員は笑みを浮かべている様子だった。
目が合うと、大丈夫と言わんばかりのサムズアップをして見せる。
「悪くない感じスカー。 作戦はあるスカー?」
「ミニーの戦闘力は低いうさ。 スカンク男しゃんも今日はオナラ攻撃禁止なので実質的に戦いは大河尤鼠しゃんとスカンク男しゃんの肉弾戦になるうさ。 向こうが5人で来るなら広い場所での戦いは不利になるうさ! だから館内の狭い通路で戦う作戦を取るうさ!」
「なるほどスカー。 いい作戦だと思うスカー」
「それでは時間も丁度いいし、出撃するうさ!」
全員が車から降り、美術館前でミニロップ女が量産型戦闘員達を転送装置を使って召喚する。
量産型戦闘員達は数が多いので、狭い場所では逆に不利になってしまう。
なので彼女は、量産型戦闘員達をここで召喚する事を選択した。
量産型戦闘員達はいつもの雄叫びを上げる!
「「「サーイレーンス」」」「「「サーイレーーーンス」」」「「「サーイレーーーーンス」」」
どこからともなく「現れたな悪党共め!」と声が聞こえ、ヒーロー達が現れた。
「情熱レッド!」
「真心グリーン!」
「希望イエロー!」
「高級ブラック!」
「愛情ピンク!」
「俺達はお前達を許さない! 俺達!」
「「「「「国防戦隊ファイブガーディアン!!」」」」」
カッコイイ極めポーズをしているヒーロー達に向かって、ミニロップ女も声をあげる!
「ミニロップ女でしゅ! 行きましゅよーみなしゃん! あの扉から中へ入るうさ!」
「ミニロップ女さんはそう言うタイプスカー。 それならあいつ等がこっちの名乗りを待っている間に、さっさと中へ入ってしまうスカー」
ミニロップ女とスカンク男は美術館の非常口の前へ行く。
しかし、大河尤鼠がいない。
どこへ行ったのかと思えば、ヒーロー達の目の前に居た。
その姿を見たミニロップ女は「えーーー、なんでぇーーーー」と、気の抜けた様な悲鳴をあげている。
「もぅ…… ああ、もぅ…… 我慢の限界だ。 限界なんだ」
「なんだお前は! 怪人の仲間なら名乗りを上げろ!」
「俺は大河尤鼠って言うんだぁ…… お前…… 赤いなぁ、赤い、赤い赤い。 へへへへ…… 俺の事、誘ってんだよなぁ?」
「誘ってる? ヨシ! 勝負だ!」
いつ攻撃するのかと、ハラハラして見守っていたミニロップ女とスカンク男をよそに、大河尤鼠とヒーロー達の戦闘が始まってしまう!
戦闘が始まった事で、量産型戦闘員達が美術館を襲撃し始めた。
「スカンク男しゃん! このままだとあまりにも不利でしゅ! オナラ対策は必ずしているはずなので、切り札としてもつかえましぇん! なので、ミニー達は逃走ルートの確保を最優先に行動するうさ!」
「オナラの足止めが出来ないとなるとかなり厳しいスカー」
「大丈夫うさ! この辺りは人が多いので、逃走ルートはすぐ近くにある地下鉄でしゅ! 人を傷つける訳にはいかないヒーロー達は追って来れなくなるうさ!」
「結構考えてるスカー。 素晴らしいスカー」
「問題は大河尤鼠しゃんでしゅ。 最悪、見捨てて行かなければなりましぇん」
「仕方ないスカー。 勝手な行動を取ったあいつの自業自得スカー」
そんなやり取りをしている間にも、大河尤鼠とヒーロー達の激戦が繰り広げられる!
大河尤鼠の身体能力は圧倒的に高く、5人がかりで戦うヒーロー達を押している!
しかし、思いのほかヒーロー達のスーツが硬く傷つけられないので、今は打撃をメインの攻撃にして戦っていた。
「ああ、なんでそんな固いスーツ着ているんだぁ? 俺は血が見てぇんだよぉ。 捻り潰して、絞ったら…… マスクの中から出て来るかなぁぁ?」
「クソッ! こいついかれてやがる! なんで俺ばかり狙ってくるんだ!」
「改造人間なの? スカーレッドキングなんかよりずっと固い!」
「レッド! そのまま引き付けててくださいっす! 止まってればその分、俺っちの音波攻撃で内蔵にダメージいくっすから!」
「あいつ、一人で5人相手に優勢に戦ってるスカー! 加勢すれば勝てそうスカー」
「むぅん…… わかったでしゅ! ミニ―達はあの緑の人間しゃんを集中的に狙ううさ!」




