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与えられた能力

 学校の職員室で考古学の先生はため息をついた。職員室には他の先生もいたが、その先生達も暗い顔をしている。一人の新人の先生が近づいてきて「大丈夫ですか?」と言う。

「心配をありがとう。私は外見は年寄りだが、まだまだ現役だぞ」

「そうですね」

 微笑んだ後、問う。

「そういう先生は疲れていないか?」

「……実はかなり疲れています」

 そう言いながら笑う。考古学の先生は「無理は禁物だ」と笑って言った。そして思い出したように職員室を見渡す。

「……キルカル先生は今日もお休みかね?」

「そうみたいです。最近調子悪そうですよね」

「うむ。キルカル先生も体調に気を使ってほしいな」

「……あの、先生」

 考古学の先生は「なんだね?」とお茶を飲みながら問う。

「キルカル先生っておもしろい授業しますよね。トーナメントとか」

「ああ、たしかにあれは面白い授業だな。……だが」

 先生は少し唸る。言いにくそうに言った後「生徒を危険な目に合わせているのではないかと心配になるのだよ」と言った。

「危険?」

「生徒の闘争心を無駄に燃やしていないか、とかだな」

「ああ……」

 たしかに攻撃的な生徒は増えましたね、とそんな会話をしている途中で別の校舎から大きな、雷でも落ちたような音が聞こえた。それはカルサイトのものだったが、現場にいなかった先生達は何が起きたのかわからずにいた。


 学校内で二人目の失踪者を出したこの失踪事件、そして失踪した生徒が帰ってきたという話は瞬く間に街中に広まった。ベルメン士官候補育成学校では当面の間臨時休校になり、学校内では先生達による長時間の職員会議が開かれ、学校の門の外には取材をしようと大勢の記者が押し寄せた。

 そんな学校が見える位置に家があるヴィオラは、窓の外をみながらぽつりとこぼす。

「嘘、なんだよな。全部」

 窓枠に肘をつけて寂しそうに言う。その言葉は誰にかけられるものでもなく、消えた。ヴィオラの頭の中には色々な情報が交差して、現れては消えてゆく。混乱する中でルアが帰って来た出来事を考え、校舎の一角で消えたソラのことを考えた。

 ……ソラ先輩を消したのは、カルサイトさんだ。何故。

 そう考えているが、考えれば考えるほど答えが遠のいて行くのを感じる。ソラが消えた時の警告された言葉が忘れられず、校舎に唯一残されていたソラの帽子のことを考えた。

 ソラの帽子と電撃の跡が残されたあの時、コーベライトは悔しそうに部屋の壁を殴っていた。殴って、殴って、殴って……気のすむまで殴ったと思ったら、彼は泣いていた。その時に言った彼の言葉が頭の中に響いている。

「士官候補生なんて名ばかりだよ。誰も助けてやれてない……!」

 その言葉がヴィオラの頭の中で何度も流れる。コーベライトの言葉は間違っていない。自分の無力さを感じて、ヴィオラは窓枠に突っ伏して、いつの間にか静かに涙を流していた。

 ヴィオラの部屋にノックの音が響く。誰かと思い涙を拭いてドアを開けると、そこには父が立っていた。

「男が泣くんじゃない」

 ヴィオラの父は、ヴィオラの顔を見るなりそう言った。ヴィオラは「なんでわかるのさ……」と言うと「目が赤くなっている。誰でもわかる」と言った。ぶっきらぼうに言うその言葉だったが、その中には息子を心配してくれる父の気持ちが入っていた。

 ヴィオラは部屋のドアの傍に立ったまま、静かにまた涙をこぼし、涙を拭う。父親の前で泣くのはなんだか照れ臭いのもあった。

だが、ヴィオラは流れる涙が止まらないでいる。帽子で少し顔を隠してみる。父は帽子を取って息子の頭をぽんぽんと叩いた。

「仕方のない奴だな……」

 ヴィオラの父はそうこぼした。ヴィオラは黙っていると、父は息をついた。

「失踪事件、発生当初からかなり経つぞ、長いな……」

 ヴィオラは「そうだね」と言い、涙を拭う。

「手掛かりがないんだ」

 ヴィオラの言葉に父は黙る。双方黙り、何を話せばいいのかわからずにいるヴィオラは口を開こうとしない。一方ヴィオラの父は唸り「事件の手掛かり……か」と独り言を言う。

「ヴィオラ、自分の先輩が被害に遭ったんだな?」

「なんでわかるの?」

 ヴィオラの言葉に父は口に手を置いた。どうやら隠していたことらしく「父さん?」と問うと父は黙ったままだ。

「……まぁ、お前になら話しても大丈夫だろう」

 ヴィオラが不思議そうな顔をしていると、父は「最近能力に目覚めたんだ」と言った。

「目覚めた?何の能力?」

「簡単に言うと人の心を読むこと、だな」

 ヴィオラは父の能力を聞いて「それってすごい能力だね……」と言った。父は「よくわからんが、そんな能力もあるんだな」と言う。

「あいつには言うなよ」

「わかってる」

 父の言うあいつ、とは母のことで、ヴィオラの父は母に内緒の話を持っているんだなと感じた。ヴィオラは「約束するよ」と言った。

「ところでヴィオラ。外に行かないか?」

 父はそう言い、ヴィオラは頷いた。気分転換にもなるだろうという気持ちもあったからだ。

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