第一章 エピローグ
ここは、太陽光発電により生活を営む街。晴れ渡る夏の日、人だかりの歩行者デッキ。アイボリー地区は強い日差しに晒されており、真っ白な通路に街頭を行き交う人々の影が複雑なコントラストを生んでいる。
その街道の端で佇む二人の男。
一人はフードを被って座り込み、もう一人は太陽の光を銀髪のショートヘアで乱反射させながら柵にもたれかかっていた。
「なあ……そろそろ教えろよ、あんたらの母さんのこと……」
「知るか、あんな化け物」
フードを深く被った男、総司は悪態をつく。
「……確かに、不死身らしいし、行動原理? もさっぱりだし」
腕を組んで柵にもたれかかる少年、亜沙日は不思議そうな顔をしている。
「どうせ暇つぶしだよ」
亜沙日の言葉を遮るように愚痴る総司。
彼の手は、ミトンに包まれていた。
待ち合わせをしている人物が、直接的な死因の恐怖で取り乱さないように。
「あとさ、あんたの蘇生中にエラー出てたんだけど、あれは大丈夫なの?」
「フン……おや?あの子じゃないか?」
人ごみの中から、黒髪を後ろで結った濃い紅色のパーカーを着た女が現れる。彼女の吸い込まれるような赤眼は、自身を殺した男、朝来総司に向けられる。
「お待たせ。お兄ちゃん。なんだよね」
「うん、その……三回も殺して、ごめんなさい」
鋼鉄のように冷たい未来の声をものともせず、総司は軽いトーンで謝罪した。
「ミトンで手を隠して、まるで恐怖の世代みたい」
「ずいぶん冷静だな」
「三回も死んだからね」
「すごい会話」
「そうかな?」
二人の会話を聞いて、引き気味の反応を示した亜沙日を未来は見つめる。
「未来さん……俺も……ごめんなさい」
亜沙日はたまらず謝罪した。
「こんな……大事になるとは思ってなくて」
総司を巡る処遇は事件発覚直後から各国の注目を集めていた。そんなことも露知らず、蘇生を完了した亜沙日と総司は市長の支援の下、アイボリー地区を点々としていた。
「いいよ、早く帰ってこないと服がかびちゃうよ?」
「冗談はいいよ!本当に、なんていったらいいか……」
「いろいろあったけど……俺は俺で、納得しました」
「タメ語でいいのに」
彼の拙さを孕んだ厳かな口調に、彼女は優しく微笑む。
「だから……」
「俺たちを許すかどうかは、あなたの手で決めてください」
小川を思い起こさせるような美しい銀色の髪を持つ少年。
朝来亜沙日は、真剣なまなざしで未来に決断をゆだねた。
神戸未来は考え込む。
アイボリー地区特有の真っ白な歩行者デッキの照り返しがまぶしい。
彼女は思わず空を見上げ、太陽に手をかざした。
指の隙間から差し込む光が彼女の視界を真っ白に。
真っ白に、染め上げた。
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私達は、もう一つ、もう一つと何かを求め続けている。
この空に、太陽は一つしかないというのに。




