心に灯るもの(3)
秦の手が、俺の素肌をなぞる。
熱を孕んだ指先が、背中をゆっくり、慎重に辿っていく。
「……来人」
低く落ちる声に、身体の芯まで震えた。
呼吸が絡み合うほどに近づき、
ふたりの肌が、どこもかしこも、ぴたりと触れ合う。
「……あ……」
甘い吐息が漏れる。
触れられるたび、
身体が、心が、溶けていくみたいだった。
「怖いか?」
耳元で囁かれる。
俺は小さく首を振った。
怖いなんて、少しもない。
ただ――もっと、欲しい。
俺は自分から秦に身体を寄せた。
肌が擦れ合う感触に、びくりと小さく跳ねる。
秦は驚いたように目を細め、
それから、優しく俺を抱きしめた。
「可愛い」
小さく笑いながら、喉に軽く口づけを落とす。
その瞬間――
「……にゃ」
無意識に、甘えるような小さな声が漏れた。
自分でも驚いたけれど、もう止められなかった。
頭の上に、ふわふわの猫耳がぴょこんと現れてしまう。
「……出てるぞ」
秦が苦笑しながら、そっと耳を撫でた。
その指先が優しくて、俺はたまらず、秦の胸に顔を擦り寄せる。
「……もっと、なでて……」
自分でも信じられないくらい、甘えた声が出た。
秦は「仕方ないな」とでも言うように、俺の頭を撫でてくれる。
耳を優しくなぞり、額や頬に、ぽつぽつと温かいキスを落としていく。
(……秦が、好きだ)
猫耳も、弱さも、全部晒して、
それでも抱きしめてくれる秦が、たまらなく愛しかった。
「――来人、お前がどんな姿でも、全部好きだ」
まっすぐな瞳。
嘘ひとつない言葉に、胸がいっぱいになる。
「……秦、俺も……」
声が震える。
「秦じゃなきゃ、だめだ……」
秦は深く頷いて、俺を強く抱き寄せた。
重なった心臓の鼓動が、ひとつに溶け合う。
夜の静けさに包まれながら、
ふたりはただ、強く強く――寄り添い合っていた。




