心に灯るもの(2)
「……秦」
シャワーから上がって、俺はタオルを首にかけたまま、リビングにいた秦に声をかけた。
「ん?」
ソファに座って、スマホをいじってた秦が顔を上げる。
その視線をまともに受けたら、また心臓がバクバクした。
――伝えなきゃ、って思った。
「今日、すげー楽しかった」
「そっか」
「……オレさ、」
言葉が詰まる。でも、逃げたくない。
「猫化してないときでも……ずっと、秦が好きだって、今日、気づいた」
秦は、一瞬だけ目を見開いて、それからふっと優しく笑った。
「……知ってたよ」
「え……」
「来人の気持ち、ちゃんとわかってた。……でも、来人自身が気づくまで、待ってたんだ」
俺の目の前に、秦の大きな手が差し出される。
そっと、俺の手を包み込んでくれる。
「今、こうして言葉にしてくれて、嬉しい」
低く、あたたかい声が胸にしみる。
俺はもう我慢できなくて、秦の胸に飛び込んだ。
「……ありがと。オレ、秦が、だいすき」
「俺もだ」
秦はしっかりと腕を回して、俺を抱きしめた。
まるで、世界に俺しかいないみたいに、優しく、でも絶対に離さないみたいに。
俺たちはしばらく、何も言わずに抱き合ってた。
夜の静けさの中で、心臓の音だけが、お互いの存在を確かめ合ってた。
ああ、ここが俺の帰る場所だ――
そんな確信が、胸いっぱいに満ちた。




