選んだ未来に、君がいるなら(3)
夜が深まり、雨が降る前のような静けさが部屋を包んでいた。
カーテンの隙間から漏れる街灯の光が、ベッドに寄り添うふたりの輪郭をやわらかく照らしている。
来人は秦の胸元に顔を埋め、しなやかに身体を預けていた。
猫耳は小さく震え、しっぽは安心するように秦の足に絡まっている。
「……こんなふうになるなんて、思ってなかったんだ」
来人がぽつりとこぼす。
指先が、秦の胸の上をなぞるようにゆっくりと動いた。
「どんなふうに?」
「俺が……自分からこんなに甘えて、涼一のことを手放したくないって思うなんて」
秦は少し驚いたように目を細め、そして穏やかに笑った。
「それは、俺の方も同じだ」
「……嫌だった?」
来人が小さく視線を上げる。
秦は静かに首を振った。
「違う。嬉しかった。……ただ、来人が遠くに行っちゃうような気がして、ちょっと怖くなっただけだ」
その言葉に、来人は驚いたように目を見開き、それから照れたように笑う。
「バカだな。俺が行く場所なんて、涼一の隣しかないよ」
その声に、秦は胸の奥があたたかく満たされるのを感じ、来人を抱きしめる腕に力をこめた。
しばらくの間、ふたりは言葉を交わさずに寄り添い合った。
聞こえるのは、互いの鼓動と窓の外で揺れるカーテンの音だけ。
「……なあ、来人」
「ん?」
「薬、出来るまであと何日くらいかかるんだっけ?」
「うーん、兄貴の話だと……あと二、三日は様子見って」
いたずらっぽく微笑みながら、来人はぴたりと秦に身体を寄せる。
「……だから、その間は、ずっと甘えてもいい?」
その低い囁きに、秦の胸があたたかく満ちていく。
窓の外では、静かに風がカーテンを揺らしていた。
ふたりはその音を聞きながら、互いの鼓動を感じ合い、穏やかな夜を重ねていった。




