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選んだ未来に、君がいるなら(1)
「……ん? 来人、なんか顔赤くないか?」
出勤準備の手を止めて、秦はソファでぼんやりしていた来人に近づいた。耳も尻尾も出ていない。でも、妙に体温が高そうで、瞳がうるんでいる。
そのとき、スマホが鳴った。表示は「深月」。
『あ、秦? 悪い、今ちょっとだけいいか』
「ちょうどよかった。来人の様子が――」
秦が言いかけたところで、電話口の深月が軽くため息をついた。
『やっぱり気づいたか。来人、多分……発情期、入ったな』
「……は?」
『前に言っただろ、猫化状態の名残でたまに周期的なやつが来るって。耳や尻尾は抑制薬で隠せても、体のほてりまでは無理なんだよ』
「……つまり?」
『しばらく、仕事は休ませて。俺のほうで抑制用の追加処方つくる。悪いけど、それまでは頼んだ』
電話が切れたあと、秦が振り返ると、来人がソファの上で毛布にくるまりながら、じっとこっちを見ていた。
「涼一……行っちゃうの?」
「……会社、ちょっとだけな。何かあったらすぐ連絡しろよ」
来人は首をふる。
「……行かないでよ。ずっと一緒がいい」
小さな声で、でも真っ直ぐなまなざしで。
秦の胸に、なにかがふわりと降りた。




