耳出しデートと観覧車(5)
観覧車を降りるころには、園内はすっかり夜の色に染まっていた。ライトアップされた道を歩きながら、4人は出口へ向かっていた。
「……いや、やっぱ高いとこ無理かと思った」
観覧車を降りた直後から、秦はずっと頬を赤らめていた。
「でも途中から、ちゃんと外見てたじゃん。偉かったよ」
来人が隣を歩きながら、小さな声で言った。
「……来人が隣にいたから」
それだけぼそっと言って、秦はまた視線をそらす。来人は思わず吹き出した。
「なんだよそれ。俺も涼一と一緒ならどこにでも付き合うよ?」
その少し後ろ、白沢がふと隣を歩く深月を覗き込んで、ぽつりと声をかけた。
「なあ、今日……楽しかったか?」
深月は一歩前を歩いていた足をゆるめ、白沢の顔を見下ろすようにしてから、ふっと笑った。
「楽しかったよ。おまえが笑ってるとこ、いっぱい見れたしな」
「……そ、そんなん……俺は別に、そんな……」
目を逸らしてごまかそうとする白沢の横顔を、深月はどこか優しげな眼差しで見つめた。
「おまえ、テーマパーク好きなんだろ? もっと早く連れてきてやりゃよかったな」
「……べ、別に、誰とでも楽しいわけちゃうし……今日は、特別やったからやで」
「俺にとっても特別だったよ。大知と一緒に来られて、よかった」
小さく囁くように言って、深月はそっと白沢の肩に自分の肩を重ねた。
白沢は照れくさそうに、でも少しだけ誇らしげに、唇の端を上げて歩調を合わせた。
駐車場に戻る途中、4人はしばらく無言になった。静かに流れる夜風と、近くで虫の音が響いていた。
「なんかさ」
来人がぽつりとつぶやいた。
「こうして4人でどこか行くの、初めてだったけど……悪くないなって思った」
「うん。たぶん……今日のこと、ずっと忘れへんと思う」
白沢が珍しく小さく笑って、そう呟いた。
それぞれの胸に、今日という一日がゆっくりと沈んでいく。
車に乗り込む直前、深月が空を見上げてぽつり。
「また、どこか行こうな。4人で」
「今度は大知さんに計画してもらおうか?」
「えっ、ちょ、ま、またくじで当てたらなっ!」
笑い声と、夜風と、遠くで響くカエルの声。
帰り道。
夏の終わりに少しだけ近づいた秋の匂いが、ほんのりと車内に漂っていた。




