耳出しデートと観覧車(4)
夕方、陽が少し傾き始めたころ。
「東京どうぶつらんど」も人の流れがゆるやかになり、園内にはやわらかな光が差し込んでいた。
ふれあいコーナーを後にした深月と白沢が、指定された合流地点のカフェテラスに向かうと、すでに来人と秦の姿があった。
「おーい、こっちだ!」
来人が手を振ると、深月はちらりとこちらを見て、目を細めた。
ようやく戻ってきた2人に、秦が呆れたように声をかける。
「やっと来た。ずいぶん長くふれあってたな?」
「……まぁな、ウサたちと語り合ってたんや」
「語り合ってたって……動物と本気で会話してるやつ、初めて見たわ」
「楽しかったで」
ふわりと笑う白沢の横で、深月が少し誇らしげに胸を張る。
「うちの大知、動物にはモテるタイプだからな。うさぎにすら抱っこ許されてたし」
「そ、それはおまえが薬で変な匂い吹きかけたからやろ!」
「見間違いじゃね……たぶん」
「たぶんてなんや!」
「はいはい、落ち着いてー」
呆れたように来人が手をひらひらさせて、テーブルの上に紙袋をひとつ差し出した。
「これ、おみやげコーナーで買った。おそろいのぬいぐるみキーホルダー。せっかくだから4人分」
袋の中には、動物モチーフのミニぬいぐるみたち――キリン、キツネ、パンダ、ライオン。
「……キツネ?」
白沢が眉をひそめる。
「大知さん、それっぽいだろ。警戒心強そうで、でも気に入った相手にはすり寄る感じ」
「どんなイメージやねん!ここは普通うさぎやろ!」
「でも、かわいいよ。ほら、つけてやる」
深月が不意に白沢のバッグにキツネのキーホルダーをくくりつける。
照れたように口を尖らせつつも、白沢は素直に受け取った。
そんなやりとりを見て、秦がふと空を見上げる。
観覧車のシルエットが夕焼けを背景に、ゆっくりと回っているのが見えた。
「……観覧車、行くか」
「え?」
来人が目を丸くして秦を見る。
「……怖いのは怖いけど。今日なら、なんか、乗れそうな気がする。来人と一緒なら」
「……マジで?」
「マジ」
秦の言葉に、来人は少し目を伏せて、そして笑う。
「……わかった。じゃあ、最後に一番高いところ、行こうぜ」
「こら大知、大丈夫か?叫ぶなよ?」
「叫ばへんわ!叫ばへん言うてるやろ!」
「でもちょっと泣いてたじゃん、さっきのホラーアトラクション」
「ちょ、ミツっ、おまえっ……!」
笑い声が、夕暮れの園内にふわりと響いた。
ゆっくりと歩き出す4人の後ろ姿に、長い影が重なっていく。
観覧車の窓の向こう、4人の想いが、また少し近づく夕暮れだった。




