耳出しデートと観覧車(3)
「うわ、これめっちゃかわええ! 見て、ミツ! ひつじの帽子やって!」
「……被るのか?」
「そらもう! ていうか、ミツも被ってみ?」
売店で目を輝かせる白沢に、深月は渋い顔をしながらもおそろいの帽子を手に取った。
「……似合ってる?」
「うん、めっちゃかわええ……あ、いや、その、似合ってるって意味やで」
深月は帽子を外して白沢のうさ耳をそっと隠すように被せ直す。
「お前の耳は、今のままが一番かわいいけどな」
「っ……あ、アホ、何言うてんねん……」
「何が?」
とぼけるように笑って、深月は人混みの合間に白沢の手を取る。
「迷うなよ」
「……子ども扱いすな……」
「違う。これは、俺が離したくないって意味」
そう言われて、白沢は俯きながらもしっぽをふりふりさせていた。
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ふたりで園内をのんびり歩き、たどり着いたのは「小動物ふれあいパーク」。
その中でもひときわ白沢が目を輝かせたのは、もちろん“うさぎコーナー”。
「……あっ、ミニレッキスや。しかもめっちゃ毛並みええ……!」
小さな柵の中、のんびりと草をはむうさぎたちに、白沢のテンションは急上昇。
すぐにしゃがみ込んで、そっと手を差し出す。
「こんにちはやで……今日はええ天気やなぁ。暑ないか?水分ちゃんととるんやで……」
なぜか完全に会話体でうさぎに話しかけている白沢。
深月はその様子を柵の外から腕を組んで見守りながら、ふっと笑みを漏らした。
「……なんか、実家の親戚んち帰った子どもみたいだな」
「なっ……ちゃうわ!真剣やねん!この子ら、ちゃんと目見て話聞いてくれるから……な?」
白沢がそっと抱いたネザーランドドワーフは、ぴくりと耳を動かしただけだった。
「……あ〜、うん。今の、ちょっと返事してくれた気ぃする」
「してねぇよな?」
「してるって信じるんや!」
その真剣な表情に、深月はまた笑いをこらえきれず吹き出す。
「……お前も耳出てるから、もしかして仲間意識でもあるのか?」
「ち、ちゃうわっ。俺のはケモ化由来で、彼らは自然の摂理で……!」
白沢が慌てて耳を隠そうとしても、今日は“見せたままOKデー”。
うっかり忘れてた、と慌てる白沢の横で、うさぎがぴょこんと跳ねた。
「……あっ、ちょ、今しっぽ踏んだ!うわっ、ごめん!ちゃうねん、敵意とかないねん!」
「……お前、うさぎとコミュニケーション取るの下手すぎね?」
「ちゃうわ!愛が先走ってるだけや!」
柵の中で転がる小動物、横で振り回される白沢、そしてそれを見守る深月。
ふと、その愛おしさが胸に込み上げてきて、深月はひとつ、静かに言葉をこぼした。
「……やっぱ、お前、動物界でもかわいい部類だな」
「なんやそのカテゴライズ!俺は人間や!」
「でも耳も尻尾も出てるしなー。違和感ないなー」
「ほ、ほんま、そろそろ帰り道でケモ化維持薬の効き目切れてほしいわ……!」
ぶつぶつ文句を言いながらも、白沢の手元ではうさぎがすやすやと目を閉じる。
それを見て、白沢もほんのり笑みを浮かべた。
「……ふわふわやな、こいつ。なんか、落ち着くわ」
「……俺のほうが、もっと落ち着ける自信あるけど?」
「なんやねん急に!」
「今夜、試してみる?」
「やめろぉぉぉ〜〜〜!」
ふれあいコーナーに響いた白沢の叫び声と、
その横で肩を震わせる深月の笑い声。
小さな命に囲まれたその時間も、
ふたりにとってはかけがえのない、愛おしい夏の思い出になった。




