耳出しデートと観覧車(2)
「そろそろ、ちょっと別行動にしてみる?」
テーマパークのちょっとした広場で、深月が言った。
「せっかくだし、カップルで回った方がそれっぽくねー?」
「そ、それっぽいって……!」
白沢が頬を赤くして抗議するも、深月は笑って手をひらひら振った。
「じゃ、俺らはあっちのサファリエリア見てくるわ。昼のショー、大知見たがってたろ?」
「えっ……う、うん、まぁ……」
それを聞いて、秦はちらと来人を横目で見た。
「……じゃあ、俺たちは逆方向、観覧車の方でも行ってみるか」
「……観覧車? 苦手だったんじゃなかったのか?」
「……あれは……まぁ、気が向いたらでいい」
来人が笑いながらそう言うと、秦も少し頬を緩めた。
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ふたりで観覧車を避けて、ふらりと立ち寄ったのは、少し静かな園内のカフェコーナー。木陰のテラス席に腰を下ろし、ソーダフロートをひとつずつ頼む。
「……にしても、今日は暑いな」
「だな。でも、不思議と悪くない」
「そうか?」
「涼一と一緒なら、どこだって居心地いい」
「また唐突に可愛いこと言うな」
秦は苦笑しながら、ストローで氷をカラカラと鳴らす。いつものようで、でもどこか嬉しそうな顔だった。
来人は、さりげなくテーブルの下で秦の手に自分の指先を重ねた。
「……なんか、今の時間だけ、全部止めたくなるな」
「……止めてもいいぞ。俺の中では、おまえとの時間しか動いてないから」
その低く優しい声に、来人は視線をそらしながら微笑む。
(ほんとに……ズルいよ、涼一は)
でも、その手はしっかりと、あたたかく握り返されていた。
木漏れ日の下、氷の音と蝉の声がかすかに混じる午後。
ふたりの時間だけが、たしかにゆっくりと進んでいた。




