君といる“今”を選ぶ(4)
翌朝。
薄いカーテン越しに差し込む日差しが、来人のまぶたをそっと叩いた。
「……ん……」
ゆっくりと目を開けると、すぐ隣にはまだ眠っている秦の姿。
整った寝顔に、不意に胸がじんわりとあたたかくなる。
来人はそっと体を起こし、寝ぼけ眼のままキッチンへ向かった。
コーヒーメーカーのスイッチを入れ、トースターにパンをセットしながら、昨夜の会話を思い返す。
(未来を選ぶって、こういうことか……)
しばらくすると、秦がふらりと現れ、まだ寝癖のついた髪をかきあげながらあくびをした。
「おはよ……」
「おはよ。パン焼いてる、コーヒーももうすぐできるよ」
「……夢みたいだな。お前が先に起きて朝飯作ってるとか」
「うっさいな。たまには、そういう日があってもいいだろ」
くすっと笑う秦に、来人はふっと笑って肩をすくめた。
食卓に並ぶのは簡単な朝食だけど、なんだかそれがとても贅沢に思える。
ふたりで向かい合って食べるこの時間さえ、何にも代えがたい。
「涼一」
「ん?」
「……これからも、こうやって朝を迎えたい。毎日じゃなくても、何度でも。……お前と一緒に」
秦はフォークを置いて、まっすぐに来人を見た。
「俺も。何度でも、お前と朝を迎えたい。――未来に、ちゃんと隣にいたいって思える相手なんて、そうそういないから」
「……口説き文句か?」
「違う。これは、誓いだよ」
小さく笑い合うふたりの間には、心地よい沈黙と朝の光がそっと包み込む。
未来はまだ続いていく。
不器用で、時々つまずいても――大切な誰かとともに歩く未来なら、きっと大丈夫。




