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猫耳はバレちゃいけない  作者: あしゅ太郎


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君といる“今”を選ぶ(2)

深月の腕の中、白沢は静かに目を閉じていた。

けれど、鼓動の速さは隠せない。深月に密着したその身体から、熱がじんわり伝わってくる。


「……大知」


名前を呼ぶ声は、いつもより少し低く、掠れていた。

白沢が顔を上げると、そこにいたのは、どこか寂しげで、それでも決意を宿したまなざしの深月だった。


「さっきの話……話したの、初めてなんだ。誰にも言ってなかった」


「……そっか」


「だから……聞いてくれて、ありがとう」


そう言って深月は、そっと白沢の髪を撫でた。乾いたばかりの髪が、さらりと指の間をすり抜けていく。


「……なあ、大知」


「ん?」


「今夜、お前がそばにいてくれるだけで……もう充分報われてるんだって思った」


言葉の意味を理解したとき、白沢の目が大きく揺れる。

視線を逸らそうとしたところを、深月が優しくその頬を包んだ。


「逃げんなよ。俺、ちゃんと、お前を選んでるから」


唇が、そっと触れる。

触れた瞬間、胸の奥で何かがゆっくりと溶けていく。

それは、長く心の奥にあった孤独の氷が、愛情のぬくもりで溶け出していくような、そんな感覚だった。


深月の指が、白沢の背をなぞるように抱きしめる。

抵抗するでもなく、白沢はその腕の中に身を預けた。


服の布越しに感じる鼓動、互いの体温、吐息――

すべてが愛しさに染まりながら、ふたりは静かに、けれど確かに、心を重ねていった。


「……ミツ、俺、もう逃げへんから」


「……うん」


そう答えながら、深月はその細い体をそっと押し倒した。

やわらかな布団の感触に沈みながら、ふたりの身体が重なり合う。


言葉はもう必要なかった。

唇が重なり、指が肌に触れるたびに、愛が深く刻まれていく。


夜が更けても、夏の空はどこまでも静かで、優しかった。


そして、互いの想いを確かめ合ったふたりは――

やがてぬくもりの中で、安らかな眠りに落ちていった。


---


朝――

蝉の声が遠くからかすかに響くなか、白沢はまどろみの中でゆっくりと意識を浮かせた。

いつもと同じ場所、いつものベッド、けれど――隣にいる深月の存在が、今朝はなんだか少しだけ違って感じられる。


半身を起こすと、隣に眠る深月の背中がぬくもりを帯びて視界に映った。

肌に触れる空気のやわらかささえ、妙にくすぐったくて、胸の奥がじんとあたたかい。


(あんな風に抱きしめられたの、初めてやったな……)


軽く顔を赤らめながら、そっとベッドから抜け出そうとした瞬間、気配に反応したように深月が身じろぎをした。

白沢が振り返ると、深月はまだ眠そうな顔で、ゆっくりと目を開ける。


あたふたする白沢に、深月はくすっと笑って、のそのそと身を起こす。

シャツの襟を少し伸ばしながら、眠そうにあくびを一つ。


「おはよう。なんか、すげーいい朝だわ」


「……朝から、軽いなぁ、もう……」


呆れたような声を出しながらも、白沢の口元には笑みが浮かんでいた。


(この人の隣で、目ぇ覚ませるって、めっちゃ贅沢やな……)


ふと、深月がまじめな目をして、白沢に顔を向ける。


「なあ、大知。昨夜のこと……その、ちゃんと、俺は本気だから。……後悔とか、してない?」


白沢は一瞬言葉に詰まり、そしてそっと、深月の手に自分の手を重ねた。


「俺も……本気やで。もう、逃げへんって言うたやろ?」


その言葉に、深月の表情がやわらかくほころぶ。


蝉の声が再び響き始めた。

夏の終わりの朝。確かに何かが変わったことを、お互いにそっと確かめ合うように――ふたりは目を合わせた。

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