ふたりだけの秘密(3)
「……なあ」
夜。
俺は、秦ん家のソファでだらしなく座り込んでいた。
コンビニ弁当と缶ビール。
テレビでは、どうでもいいバラエティ番組が流れてる。
俺は、猫耳を必死で押さえながら、缶チューハイをちびちび飲んでいた。
「なに」
秦の隣で缶を傾けながら俺は聞いた。
「……お前ん家、しばらく泊めてくんね?」
「は?」
秦は、ちょっと目を丸くする。
「だってよ、最近耳とか尻尾とか、やばいじゃん。……家だと、兄貴のせいでまたなんか起きそうで、落ち着かねぇし」
そう――俺は、兄貴と二人暮らし。
深月は懲りずに日々"新しい発明"に明け暮れている。
正直、事故が二度目にならない保証なんてどこにもない。
「……まあ、別にいいけど」
秦は缶を置くと、にやっと笑った。
「お前が甘えてくるとか、珍しいな」
「べ、別に甘えてねぇし!」
顔が熱くなる。
必死で言い訳しようとするけど、秦はもう、当然の顔で言った。
「じゃ、今日から俺んとこな」
「……」
こいつ、決めるの早ぇな。
頭をぐしゃぐしゃ撫でられて、耳がピコッと動いた。
「っ、……やめろって!」
「お前、ホントわかりやすい」
にやにや笑いながら、秦は俺を引き寄せた。
ソファに、ぎゅっと抱き込まれる。
「ちょ、……離せって!」
「やだ」
耳元でささやかれて、体がビクッと跳ねる。
秦の手が、背中から腰にかけて、優しく撫でる。
自然と、尻尾がふわっと立ち上がった。
「……尻尾、立ってんぞ」
「し、知らねぇよ……!」
顔から火が出そうだった。
必死で突き放そうとするけど、逆にぎゅっと強く抱きしめられる。
「お前さ、もっとちゃんと甘えろよ」
「……」
「俺ん中じゃ、お前、特別なんだからさ」
耳の奥が、じんわり熱くなった。
秦は、そっと俺の顎を持ち上げる。
目が合った。
熱っぽくて、優しい目。
次の瞬間――
唇が、重なった。
柔らかくて、あったかくて、ちょっとビールの匂いがした。
「……っ」
体を引こうとしたけど、秦は背中を撫でながら、深く、優しくキスを重ねる。
だんだん、体の力が抜けていく。
気づけば、俺は秦にぐったりと身を預けていた。
「……可愛い」
低い声で囁かれて、心臓がバクバクとうるさい。
俺の耳も、尻尾も――
きっと、今、思いっきり甘ったるい顔してる。
でも、もうどうでもよかった。
こいつになら、全部見られてもいいって、思ったから。




